30話 フレイパーラ新人大会、開幕!
【書籍化のお知らせ!】
第1巻
出版社:アース・スターノベル 様
イラストレーター:紅林のえ 様
発売日:6月15日
既に予約注文も始まってますので、是非よろしくお願いします!
フレイパーラ新人大会の参加はギリギリ間に合った。
俺、クルト、フィーアの三人が参加する。
ギルド『テンペスト』全員参加だ!
……人数が少なすぎて悲しくなる。
それはさておき、フレイパーラ新人大会が開催されるまで一週間。
俺達はこの一週間、特訓に励んだ。
クルト曰く、フィーアは銃を握ると泣き叫んでいたのが嘘みたいに冷静になると言っていた。
そして強いとのこと。
これはもしかすると、三人全員が良い結果を出せるのではないだろうか。
そう思いたいのだが……。
俺は《剛ノ剣》を取得出来ないでいた。
これまずいのでは? と思いつつもここで諦めることが出来る性格でもない。
日課である魔力枯渇状態(10回)や身体を鍛えつつ《剛ノ剣》の取得にかなりの時間を割いていた。
何か掴めそうな気もするが、掴めない。
《鬼人化》の取得はあれだけスムーズに出来たのに。
何が違うのか? と思ったら、集中力な気がする。
あのときはかなり追い込まれていた。
呼吸も出来ない、魔力もない。
その状況が俺の集中力を極限まで高めてくれたのだと推測する。
しかし、それを再現しようとしても中々うまくいかないし、自分でその状況に追い込んでいくのも何処か納得がいかない。
そんなわけで俺だけ特に進展がないまま、フレイパーラ新人大会の前夜になっていた。
俺たちは、ついに始まるフレイパーラ新人大会に向けて、レストランで食事をしながら英気を養っていた。
ラルの奢りらしい。
『『ラル、いいやつ』』
俺とキュウはラルに感謝した。
「さぁいよいよ明日ね!」
ラルが声を上げた。
「ふ、不安と緊張で眠れそうにないです……」
「大丈夫よ! フィーアは強いから安心しなさい」
ラルがフィーアの肩に手をやり、励ます。
「……そうですかね? えへへ」
「ええ。クルトに一度も勝てなかったとはいえ、善戦していたもの」
「……うう、だってクルトさんはおかしいんです。いくら攻撃しても平然と魔法を撃ち返してくるんですから」
フィーアの才能は【魔銃士】で武器は二丁拳銃。
魔力で弾丸を作成し、中距離からの攻撃を得意としている。
一般の魔法使いと比べると遥かに早い攻撃速度だが【賢者】の才能を持つクルトはそれを平然と打ち返す。
「リヴェルみたいに魔法を無詠唱で撃てないにしても詠唱を省略することは出来るからね」
「へー、そんなことが出来るのか」
俺は素直に感心した。
「才能の差を実感しましたね……明日もきっとそうなるに違いありません……」
フィーアはネガティブ思考なようだ。
「大丈夫じゃないかな? フィーアは十分強いよ」
「そ、そうですかね……ふふ」
いや、ネガティブ思考というよりも流されやすい性格なようだ。
思えば、今までこういった展開は何度もあったな。
「フィーアが自信を持ってくれたようで何よりね。とにかく、みんなが勝ち進んで好成績を残す! これが目標よ」
「そういえば、どうしてそこまで成績にこだわっているんですか?」
フィーアは不思議そうに首を傾げた。
「『テンペスト』を再興するために決まってるじゃない。今の状態だとギルドの信用が無さすぎて依頼が一つもないわ。情報も仕入れることが出来ないし、このフレイパーラ新人大会で結果を残せなきゃハッキリ言って『テンペスト』は終わりよ」
「え、えええええぇぇぇ!? そ、そうなんですか!?」
「依頼をこなさなきゃ冒険者としてのランクも上げられないから、フレイパーラの地下迷宮にも挑戦できないからね。私たちも他のギルドを探すことになるわ」
「はわわわわ……絶対に負けられませんね……」
「まぁフィーアがダメでもクルトかリヴェルが何かしらの結果を残してくれるだろうから安心しなさい」
「そ、そうですよね! お二人はすごく強いですし」
フィーアから期待の眼差しを向けられている。
「まぁ僕はリヴェル以外に負ける気はしないよ」
「それは俺を過大評価しすぎだ」
「ふふ、どうだろうね」
◇
そしてフレイパーラ新人大会が幕を開けた。
総勢300人に及ぶこの大会はトーナメント形式で4つの闘技場を使い、二日かけて行われる。
優勝するには8回か、9回の試合をこなさなければいけない。
俺は才能が低く評価されたのか、シード権が無く9回の試合をこなす必要がある。
トーナメント表を確認したところ、もしフィーアと戦うのならベスト4を争うときなので、7回目の試合になる。
クルトと戦う場合は決勝だった。
これから1回戦が始まる。
闘技場は『テンペスト』のものよりも広く、観客席は多くの客に埋め尽くされている。
あ、ちなみに俺がトーナメント表に割り当てられた場所は、一番最初に試合をするポジションだった。
「さて、とうとう始まります! フレイパーラ新人大会! 実況は私、フレイパーラのアイドルことカナが務めさせて頂きます!」
魔道音響機から発せられる可愛げのある女性の声が闘技場に響き渡る。
「「「うおおおおおお!!!」」」
そして、歓声が湧き上がった。
「解説はなんと! ギルド『レッドウルフ』のSランク冒険者! シドさんになります!」
「はい、よろしくお願いします」
『レッドウルフ』か。
【最上位剣士】のアギトがいるギルドだったな。
「「「うおおお!」」」
先ほどよりも歓声は小さくなっていた。
観客の半分は冒険者であることから、やはり可愛い女の子の方が盛り上がるのだろうか。
「ではでは早速、新人冒険者の方々に登場して頂きましょう! ──え? ……ごほん。失礼しました!」
実況の人の反応。
なぜそうなったか察しがついた。
「ギルド『テンペスト』より、リヴェル選手! 才能は【努力】です!」
し〜ん。
「「「──ハッハッハッハッハ!」」」
まぁ、笑われるよな。
慣れているさ。
俺は笑い声のなか、闘技場に入場した。
「【努力】が才能ってなんだよ〜ハッハッハ! 腹いてぇ〜」
「1回戦突破も厳しいかもしれねえけどよ、頑張れよ!」
「努力であがいてくれることを祈ってるぜ〜!」
やれやれ、めちゃくちゃバカにされているな。
やはり俺の才能はどうも印象が良くないらしい。
俺はこれからこの街で活動していくんだ。
冒険者として舐められすぎているのも活動に支障が生じる。
「……優勝して評価をくつがえすか」
俺はそう呟き、より一層気合を入れるのだった。
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