29話 《剛ノ剣》
続きが少しでも気になった方はブックマーク追加よろしくお願いします!
感想欄再び開いたので、良ければご利用ください。
それと申し訳ございませんが、他の読者が不快となるような感想だと判断した場合削除させて頂くことがあります。
ご理解くださいますようお願いいたします。
感想返しは余力があって気分が乗れば行っています。
(……面白いって褒めてもらえるとめちゃくちゃ励みになります)
「とりあえずだ。まずは魔力枯渇状態になることだな。これを1日のノルマにするぞ」
「ひぃぃっ! 嫌ですぅ!!」
「こらフィーア! 強くなりたくないのか!」
「な、なりたくないけど、なりたいです!」
めちゃくちゃである。
とにかく《剛ノ剣》を教えてくれる前に魔力枯渇状態にならなきゃいけない。
まぁ日課ではあるが、今は早く《剛ノ剣》を教えてもらいたい。
よし、とっとと魔力を放出するとしますか。
一気に魔力を放出することはこれが初めてだな。
上手くできるかな──っと。
お、出来た。
俺の周りに大量の魔力が漂い出した。
なんか面白いなこれ。
「ん!? なんだこの魔力の量は!?」
ロイドさんが声を上げた。
「へぇ〜。既に僕と魔力の量はあまり変わらないみたいだね。流石は僕の師匠なだけはある」
クルトもそう言って、大量の魔力を放出しだした。
「ハッハッハ! どうやらとんでもない新人が2人も入ってきたようだな! フィーア、お前も負けてられねえぞ!」
「負けでいいです! 負けでいいからもう止めようよ〜!」
「こらてめぇ! いい加減にしろ!」
「は、はい! や、やります! やりますから!」
フィーアも泣きながら魔力を放出し出した。
そして俺は魔力枯渇状態になった。
「くっ──」
この苦痛は何度経験しても辛い。
だが、大声を出すのはみっともないから我慢するように意識すると出来た。
「があッ──ぎ、ぐ、ぬ」
クルトも魔力枯渇状態になったようで我慢しているようだった。
……最近になって我慢しようと思った俺は学習が遅いのかもしれない。
「ぎゃあああああああ!!!! いいいったあああああいいいいいい!!!」
フィーアは泣き叫んでいた。
◇
「枯渇状態からの回復が随分と早いな……」
ロイドさんが驚いていた。
「スキルのおかげですね」
《魔力超回復》はやはり便利だ。
みんながまだ苦しんでいるなか、俺だけがまともに動けるようになった。
「そりゃ好都合だ。回復が早ければ早いほど《剛ノ剣》に挑戦出来る回数が増える」
「はい!」
ここから俺は本格的に《剛ノ剣》取得に励む。
クルトとフィーアは実戦形式での特訓をしてもらうみたいだ。
魔法と魔銃の撃ち合い。
今までの特訓とは違い、派手なものになるだろう。
そして俺は闘技場の片隅で地味に特訓するのだ。
まずはロイドさんからの説明だ。
「《剛ノ剣》は全身に魔力を均一に纏う。そして剣撃の瞬間に全身を硬直させることで強力な一撃を繰り出すスキルだ。イメージできるか?」
そう言われ、俺は頭の中でイメージしてみる。
全身に魔力を均一に纏う……。
これは《魔力循環》を応用させれば出来るかな?
《魔力操作》も取得しているわけだし、割と出来そうな気がする。
次に剣撃の瞬間に全身を硬直させる……か。
どういうことだ?
……この部分があまりイメージしにくい。
「剣撃の瞬間に全身を硬直させるってどうやればいいんですかね?」
「慣れだ。その感覚を掴むために何度も特訓するんだ」
「……なるほど」
言っていることはもっともだが、やはりどうしてもどういう理屈で全身を硬直させるのか気になる。
英知で調べるか。
……。
マジか……。
見つからねぇ……。
まぁだったらそれでいいさ。
ロイドさんの言う通り何度も挑戦して身につけてやる。
「習うより慣れろだ。とにかくやってみるぞ」
「はい!」
まずは《剛ノ剣》の構えを教えてもらった。
腰を落とし、前傾姿勢になる。
剣は振り抜きをできるだけ長くするために、腕を曲げ、腰の横に持っていく。
「よし、良い構えだ。あとは《剛ノ剣》をイメージして、自分でやってみろ」
「……はい」
集中力を高めつつも、今自分がどういう風に動いているかを客観的に考える。
自分を客観視することで、何が良くて何が悪いのか、それが見えてくるはずだ。
魔力を溜め、全身に行き渡らせる。
《魔力循環》があるため、それは容易に出来た。
……が、しかし。
魔力を均一にするってめちゃくちゃ難しいぞ、これ。
剣の握り方一つで魔力はすぐに変化する。
どうすりゃいい?
……そうだ。
魔力の濃度を薄くすればいいんだ。
《鬼人化》を取得したときみたいにすれば……。
「リヴェル、そりゃダメだ」
ロイドさんが言った。
「確かに魔力の濃度を薄くしてやれば、全身に魔力を均一に行き渡らせるのは格段に楽になるだろう。そんなことまで出来るとは恐れ入ったが《剛ノ剣》は一撃必殺。妥協は許されない」
「……はい!」
過程を重視しすぎて本質を見失っていた。
《剛ノ剣》は一撃必殺のスキルだ。
それを念頭において、全てを出し切る!
「ハアアァァッ!」
剣を振り抜いた。
空を斬る音がした。
「──ダメだ。何一つ出来ちゃいない」
ロイドさんが険しい顔でそう言った。
「もう一回やります!」
「おう。頑張れ。諦めずに何度も挑戦しろ」
「はい!」
俺は何度も《剛ノ剣》に挑戦した。
失敗の原因を考え、改善しようとするが中々うまくいかない。
《鬼人化》のときはもっと成功するイメージがついたのに……。
今回は全然イメージできなかった。
「あー!」
闘技場にラルの声が響いた。
俺たちは特訓を一度中止し、ラルの方を向く。
「フレイパーラ新人大会の参加申請今日の夕刻までじゃない!」
あ。
空を見上げると、西の空が少し赤くなりつつあった。
「急いで行かなきゃな」
「え、え!? み、みなさん参加されるんですか!?」
フィーアが慌てていた。
「ああ、参加して結果を出せば『テンペスト』の評判も上がる」
「で、でも参加される方々は新人冒険者とは思えない猛者ばかりで……」
「それに関しては大丈夫じゃないかな? フィーアと何度も模擬戦をやっていたけど、十分強いと思うよ」
クルトがそう言うのなら、フィーアはなかなかの実力者なのではないだろうか。
俺は全く見ていないけど。
「もうみんな参加するんだからとっとと行くわよ!」
参加しないラルが一番危機感を持っていた。
それもそうか。
フレイパーラ新人大会を俺かクルトで優勝し、ギルド『テンペスト』の再興を図っているのだからな。
参加できなきゃ何も始まらない。
俺たちは特訓を中断して、急いで大会本部に向かうのだった。
【皆様へのお願い】
「面白そう」
「続きが気になる」
「更新応援しています」
「書籍化おめでとう!」
少しでもそう思って頂けたら、
下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてくれると励みになります!
(……評価してもらえると、モチベがめちゃくちゃ上がるので最高の応援になります)