28話 特訓開始
「よっしゃあ! 久しぶりの特訓だぜぇ!」
闘技場でロイドさんが叫ぶ。
クルトとフィーアはそれを冷ややかな目で見ている。
間違いなく一番張り切っているのはロイドさんであることが一目瞭然だ。
「みんな頑張れ〜」
「キュウ〜」
闘技場にはスペースは小さいが、観客席が設けられている。
ラルはそこの椅子に座り、キュウはその膝に丸くなり、俺たちの応援をしてくれるらしい。
これから特訓が始まる訳だが、どんなハードな内容が待ち受けているのだろうか。
少し楽しみだ。
「ロイドさん、これから行う特訓の内容は皆同じになるのでしょうか?」
クルトがそう疑問に思うのも無理はない。
俺たちは【賢者】【魔銃士】そして【努力】とそれぞれタイプが違う。
例えば【賢者】は【剣士】のような近距離攻撃をメインとする才能と違い、魔法を使った遠距離攻撃を得意とする。
つまり、身体能力は鍛えにくいが、魔法は鍛えやすい才能ということになる。
このように才能は長所と短所が明確になっていることが多いため、実力を伸ばすなら短所を補うよりも長所を伸ばす方が有効だ。
「ああ。どの才能にも戦いにおいて基礎に勝るものはねぇ。地道な努力がデカい結果に結びつくもんだ」
「なるほど。そういうことでしたら異論はありません」
「うむ。じゃあ早速始めるか!」
「……ああ、始まってしまいます……あわわわ」
ぶるぶる。
隣でフィーアは顔を青くして肩を震わせている。
「……大丈夫か?」
「リヴェルさんは良いですよね……私もリヴェルさんみたいになりたかったです……」
「どうした。てかなんで俺なんだ」
「見てれば分かりますよ……私には耐えれなさそうです……」
「……まぁがんばろうぜ」
フィーアは恐怖のあまり壊れてしまったようだ。
「よし、それじゃあ最初は此処を100周だ!」
……え? それだけ?
と思ったが、いざ走ってみると結構しんどかった。
なぜならロイドさんが俺たちに重力魔法を使っていたからだ。
あとで聞くと『グラビトン』という魔法のようだった。
自身にかかる重力が5倍上昇し、身体が重かった。
だが、おかげで良いトレーニングになった。
クルトもそれに気づいていたようで自分も『グラビトン』を使用することで打ち消し、余裕の表情で100周走っていた。
これでは特訓にならないのではないかと思ったが、ロイドさんは認めていた。
魔法を使いながら身体を動かすことは難しいらしい。
フィーアは50周ぐらいまで頑張っていたが、途中でギブアップ。
ロイドさんに怒鳴られ、泣いていた。
「ふぅ、案外疲れるね」
クルトが額の汗を拭う姿がなんとも様になっていた。
貴族、それも領主の息子で才能があって、顔も良いし、性格も良い意味で貴族らしくない。
……あれ? 欠点なくね?
「だな」
体力はあまり鍛えられていなかったので、これからもこういったトレーニングを取り入れていこうと思った。
「よーし、次は魔力を放出して魔力枯渇状態になれ。実戦的な特訓はその後だ」
「ぎゃあああああ! やっぱり!」
フィーアが泣き叫んでいる。
魔力枯渇状態か。
さっきフィーアが「リヴェルさんは良いですよね」と言っていたのは、これが原因しているのかもしれない。
まぁ俺だって苦痛なのに変わりはないんだが。
「フィーアうるせえぞ! 【魔銃士】は結構魔力を使うんだからよ。これから毎日させていくからな」
「ひいぃぃぃぃっ!」
「まぁいつも通りと言えばいつも通りか」
「そうだね」
魔力枯渇状態には毎日10回はなっている。
クルトも俺を真似て1日1回は必ず魔力枯渇状態になるようにしているので、日課みたいなもんだ。
「ん? お前ら、いつもやってんのか?」
「まぁ一応……」
「僕は1日1回ですけどね。リヴェルは10回ぐらいなってますよ」
「おまっ──」
そんな正直に言っちゃうと、ロイドさんが引いてしまうだろうが!
「10回だと……!?」
クルトが告げ口したせいで、ロイドさんはドン引きしてしまいました。
クルトのせいです。
あーあ。
「──すげえな! リヴェル、お前は間違いなくアデンを超えるぜ。アデンでも1日に5回とかだったからな」
……あれ? 引いてない?
てか、父さんも俺と同じようなことをしていたのか。
「いやぁそうかそうか! もしかするとお前ならいずれ《剛ノ剣》を物にできるかもな」
「剛ノ剣……?」
「ああ。剣撃に体重全てを乗せる一撃必殺のスキルだ」
いいことを聞いた。
俺には必殺技と呼べるような強力な一撃を持っていない。
是非、そのスキルを取得したいところだ。
早速、英知で調べよう。
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○スキル《剛ノ剣》
魔力を身体に纏い、剣撃の瞬間に全身を硬直させることで強力な一撃を放つ。
○取得条件
《剛ノ剣》を自力で放つ。
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……取得条件が《剛ノ剣》を自力で放つだと?
「ロイドさん……」
「ん?」
「そのスキル、良ければ伝授してください!」
俺はロイドさんに土下座して頼み込んだ。
「ガッハッハ! 良い心がけだ! よし、教えてやる! その代わり途中で諦めんなよ?」
「はい!」
《剛ノ剣》を取得できれば、間違いなく強くなれる。
そして、これは俺の切り札となる。
《剛ノ剣》……必ず取得してみせる。
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