27話 錬金術で二丁拳銃を造る
『テンペスト』は受付などがあるメインホールの奥に闘技場が存在する。
ギルドに闘技場があるところは珍しい。
余程大きなギルドでない限り設けていないだろう。
それだけ『テンペスト』は栄えていたということが推測できる。
ここまで悲惨な状態になるとは先代のギルドマスターも思わなかったのではないだろうか……。
さて、今俺はその闘技場にいる。
理由は少し危険な事態になっても、戦うことを想定して作られた闘技場なら何とかなるだろうといった考えだ。
「これからフィーアの武器となる銃を製作しようと思う」
俺がそう言うと、みんなは「コイツ何を言っているんだ?」という目でこちらを見ている。
『あるじ! かっこいい!』
『これかっこいい場面か?』
『わがみちをいくかんじがイイ!』
『そりゃどーも』
褒められているのか微妙なところだ。
「……また始まったわ」
ラルがため息をもらした。
そういえばラルとは塩を作ったことがあったな。
色々と心配をかけたことは間違いないと思うので、今回は安全にやろうと思う。
……出来るかな? 前向きに検討していこう。
「えーと、私のために銃を作ってくれるのはありがたいのですが……流石に銃を作るのは無理じゃないですか?」
フィーアの言うことはごもっともだ。
俺は【魔銃士】が使う銃の価値を調べてみたところ、金貨500枚もするようだ。
価値が高いということは、それだけ製造が難しい。
……かと思ったが、構造については《英知》で調べることが出来た。
製造法は秘匿されていたが、構造が分かれば出来るはず。
なぜなら俺がこれから使用するのは錬金術だからだ。
錬金術と魔法は関連する考え方が多い。
そのため魔法を学ぶついでに錬金術も学んでいた。
「きっとリヴェルには考えがあるんじゃないかな? でなきゃ銃を造るとか言い出さないだろうし」
「そんなところだな。フィーアはどんな銃が欲しいとかある?」
「どんな銃ですか……じゃ、じゃあ…………に、二丁拳銃をよろしくお願いします!」
フィーアは何故か白い頬を赤く染めながら、恥ずかしげに言った。
「分かった」
フレイパーラの鍛冶屋で購入した鉄を《アイテムボックス》から取り出した。
【魔銃士】が魔力で作成する弾丸に耐えることのできる耐久性があればいい。
「これをどうするんですか?」
フィーアが興味深そうに見つめている。
「まぁ見てて」
まずは鉄を加工し、銃口を作成する。
銃口から機関部までが銃身となり、これはスライドによって隠れている。
照星を先に作成し、凹状に照門を設けることによって狙いを定めることができる。
「……あの、凄すぎませんか?」
「ん?」
「見る見るうちに出来上がっていくのがちょっと恐ろしいぐらいで……」
「そうか?」
俺の錬金術に関する知識は深くない。
熟練の錬金術師ならこれぐらいは一瞬で完成させてしまいそうだ。
「……リヴェル、これは一体どんな魔法を使っているんだい?」
クルトが不思議そうに尋ねてきた。
「これは魔法じゃない。錬金術だな」
「錬金術だって?」
「ああ。鉄の加工は全て錬金術によって行なっている。錬金術の原理は魔法の原理とかなり似通っていて、勉強すればすぐに応用が利くと思うよ」
「……錬金術というのは普通、物質の変成だけを行うものだよ。たぶんリヴェルは古代魔法と一緒で現代の”普通”とはかけ離れた知識を身につけているよ」
「なるほどな。まぁ好都合だ」
「そうですね! なんだか特別って感じがしますし、リヴェルさんが目標にしてた世界最強に近づいている気がします!」
「だな」
フィーアの意見に俺も賛同する。
みんなが知らない情報を俺だけが知っているというのはかなりのアドバンテージだ。
世界最強か……案外なれるものなのかもしれない。
◇
そして錬金術を駆使し、フィーアが欲しがっていた二丁拳銃が完成した。
「わぁ〜! 本当に出来ちゃいましたね!」
フィーアは満面の笑みで二丁拳銃を手に取った。
これだけ喜んでくれるなら俺も造った甲斐があったというものだ。
錬金術を試す良い機会にもなったしな。
「おめえらさっきから何やってんだ?」
闘技場にロイドさんがやってきた。
そしてフィーアが手に持っている二丁拳銃に気づくと、口を大きく開けて驚いた。
「フィ、フィーア!? おめえ、この拳銃いくらしたんだ!? ウチにそんな余裕はなかったろ? な?」
「お、お父さん! 安心して! これはリヴェルさんに造ってもらったの」
「へ? ……これ、リヴェルが造ったのか?」
ゆっくりと首を動かして、俺の方を向くロイドさん。
「そうですよ」
「……ハッハッハ……ガッハッハッハ! さすがはアデンの息子だな!」
それ剣聖の父さん関係ある? と疑問に思ったけど、無粋なことは言わないようにした。
「よし、それじゃあ明日からの特訓フィーアも参加できるな!」
「──え?」
フィーアが目を丸くしてきょとんとした顔をする。
「今まで武器も買ってやれなかったからよ、特訓させてあげられなかったが、リヴェルに造ってもらったわけだしな! みっちり鍛えてやるからな!」
「……うん……嬉しいよ、お父さん……」
フィーアは涙を流しながら何度も頷いた。
「ハッハッハ! 泣くほど嬉しいか! 父さんも嬉しいぞぉ!」
フィーアの姿をどう解釈したら嬉しいになるのか。
どう考えても嫌そうにしか見えない。
……しかし、フィーアが泣くほどの特訓か。
楽しみだな。
父さんに手伝ってもらい取得した《鬼人化》のようなスキルを教えてくれると嬉しいんだが……。
さて、どうなることやら。




