フィーアの貧乏生活
番外編です。
これはフィーアがリヴェル達と出会う少し前のお話。
15歳になって神殿に向かった私は【魔銃士】という才能を告げられました。
そのときの私の表情はとてもガッカリしていたことでしょう。
「【最上位剣士】の才能か。悪くねェな」
「流石アギトさん! 天才だ!」
「っぱ、アギトさんはちげえよ!」
私のあとに才能を告げられた人は友人が多くて、それに【最上位剣士】というかなり優れた才能を授かっていたのでよく憶えています。
その人たちだけでなく、周りも喜ぶ人たちが多いです。
ほとんどの人たちが笑顔だったような気がしています。
しかし、私は絶望していました。
──だって【魔銃士】が扱う魔銃って高価な武器ですから……。
安い魔銃だってあるかも! と思い、神殿を後にして武器屋に向かいます。
「金貨500枚……!? た、高すぎませんかねぇ……」
ショーケースに入った魔銃を見て、私は震えました。
金貨500枚は生活するだけで必死な我が家にとって、途方もない金額でした。
「い、一番安くて金貨150枚……」
怯えるように小声でそう呟く私を武器屋の店主は鋭い目つきで見つめていました。
マ、マークされています……! 盗むのではないかと、そう店主は睨んでいるのでしょう。
ごめんなさいー! と、私は内心謝りながら逃げるように武器屋を去りました。
「お、帰ってきたか。で、どうだったよ?」
家に帰ると、いつものように安酒を飲んでいる父親が待っていました。
冒険者ギルド『テンペスト』のギルドマスターで、ダメなお父さんです。
以前は新人冒険者の教育に励んでいましたが、厳しすぎて他の冒険者ギルドに奪われてしまいました。
そのせいでお父さんは飲んだくれに……。
先週、また新人冒険者が辞めて行き、今はメンバー0人です。
ギルド自体はでかいのにメンバーが全くいないなんて悲しすぎます……。
「才能は【魔銃士】だったよ……」
私は暗い表情でそう言いました。
「【魔銃士】かー! そりゃ残念だったな。ウチじゃあ魔銃が買えねえよ」
「うぅ……悲しすぎる……」
「まぁ大丈夫さ。きっとなんとかなる」
「ならないからこんな悲惨な状況になっているんでしょ!」
「ガッハッハ! そうかもしれねえなぁ」」
ダメだ……。
こんなお父さんにギルドを任せてばかりではいつか飢え死にしてしまいます……。
よし、考え方を変えましょう!
自分の人生は自分で切り開かなくてはいけません!
まずは、このギルドを復興することから始めましょう!
で、でも復興と言っても何から始めればいいのでしょうか……。
ダメですね……私一人じゃ何も出来ません……。
力が無ければ知恵も無い、そんなダメな私では何も成し遂げることが出来ない気がします……。
私はぶんぶん、と首を横に振って気持ちを切り替えます。
こんな弱気になってばかりではいけませんからね。
「よーし……」
何も無い私に出来ることは勇気を振り絞ることだけです。
ギルドメンバーを集めることから始めましょう。
私一人で出来ないなら色々な人に頼れる環境を作ればいいのです。
「ん? どこ行くんだ?」
「ギルドメンバーの勧誘!」
「ほぉ、元気があってなによりだ。頑張ってこいよ〜」
「言われなくても頑張るから!」
と、意気込んで勧誘しに行きましたが……。
「あ、あの〜」
「よ、よろしければ──」
「お、お話だけでも……」
勇気を振り絞ってみるものの誰も話すら聞いてくれません……。
才能を授かるこの時期は新しく冒険者になろうとする人が多い時期。
ここで勧誘が出来なければ──想像しただけでも恐ろしいですね……。
3週間ほど精一杯勧誘に励みましたが、誰一人捕まりません……。
「もうダメかも……」
そう落ち込んでいたとき、
「冒険者になる気なんてないわ。良い冒険者ギルドを探すぐらい協力するわ」
「それは助かる。ありがとなラル」
「ま、リヴェルにはお世話になっているし。これぐらいはね」
「それなら僕が言うことは何もないよ」
何やら冒険者ギルドを探していそうな会話が聞こえてきました。
見たところ、冒険者になるためにフレイパーラに訪れた様子。
これは千載一遇のチャンスです……!
そう思ったら緊張してきました……。
それでも勇気を振り絞らなくてはなりません……!
ふぅ〜、と深呼吸をして、
「よ、よければウチのギルドに入りませんか!?」
どうか断らないでぇ〜! と願いながら、私は3人に話しかけるのでした。
新作を投稿しました。
『【翻訳】が戦闘力のない外れ才能だと貴族家から蔑まれているけど、隠し書庫で古代魔法書を読み漁っていたら実は世界最強になっていました。次期当主候補でしたが、実家を追い出されたので冒険者生活を始めます』
https://ncode.syosetu.com/n9925gz/
是非、一度読んでみてください!