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最終話 再会

本日、四度目の更新です。

未読の方は36話からお読みください。

 

 俺はまたあの白い空間にやってきた。

 目の前にはいつものように神様がいる。


「神様……いや、俺ももう神様なんでしたね」

「そうですね。ですが、そのままでも構いませんよ。聞きたいことがあるのでしょう?」

「お見通しってわけですね。では単刀直入にお聞きします。クルトやラルに俺と会うように導いたのはどうしてですか?」

「……リヴェルさんに神の固有能力があるように、私にも同じく未来視の固有能力があります。遠い先の未来まで視ることが出来る力です。そして、私は視たのです。あの魔神によって世界が崩壊させられた未来を」

「あの魔神が……?」

「ええ。それはリヴェルさんが神ではなくなって間もない頃です。しかし、違う未来も視えたのです。リヴェルさんが魔神を斬る、そんな未来が視えました。最初は誰か分かりませんでしたが、前世のリヴェルさんが努力を始めたのを見て、あの魔神を斬る少年はリヴェルさんだと確信しました。だから私はまず、リヴェルさんが努力する環境を作ることから始めました」

「それが、アンナの【竜騎士】の才能とキュウ……ってことですか?」

「はい。ですが、それだけでは足りませんでした。そこでクルトとラルに白羽の矢が立ったのです。ラルはリヴェルが冒険者として成功するサポートをしてもらうために、クルトは最後に魔神を宿してリヴェルと戦ってもらうために」

「じゃあクルトが魔神を宿したのって神様が仕組んだことだった訳ですか?」

「お膳立てはしましたが、最後に魔神の力を我がものにしようとしたのはクルトさん自身の意思です。しかし、私がそうなるように誘導したのも事実です。前日の夜に、今日の出来事を伝えてましたから」


 それでクルトは神の声の本当の理由が何なのか、察しが付いたって訳か。


「でも、それが世界を守るためって理由なら仕方ないですね」

「ふふっ、実は本音は少しだけ違いますよ。最初に私がリヴェルさんを手助けした理由を覚えていますか?」

「手助けした理由……?」


 記憶を辿り、思い返してみる。


『──私は単純に貴方を好いているのですよ』


 俺は神様がそう言っていたのを思い出した。


「私の本音は、リヴェルさんとまたこうしてお話をしたかっただけなんです。誰よりも慈悲深い貴方と」

「神様……でも俺、またみんなのところに戻ることになると思います」

「ええ、存じてますよ。私の固有能力は未来視ですから。しかし、リヴェルさんの固有能力が完全なものになるまで、まだ少し時間がかかります。私のわがままは、そのときまで、神にとってはほんの少しの時間だけ、貴方とお話がしたかったのです」


 少し恥ずかしそうに言う神様の姿に、俺はとても人間味を感じたのだった。



 ***



「アンナ、ついに今日から開店だね! いやー、まさか元【竜騎士】のアンナがスイーツ屋持つようになるとは感慨深いねぇ〜」


 私が道具を揃えたり、材料を出したりして、作業の準備を進めている横でラルが言った。

 ニコニコとした笑顔で、心から私のことを祝ってくれていた。


「全部ラルのおかげだよ! ラルがいなかったら今頃、何しているのか想像したくもないよ……」

「その通り。この店のスイーツは私にだけ半額で提供しなさいよ」

「半額どころかタダでいいよ!」

「アンナは分かってないな〜。私も商人だからね。ちゃんと対価は支払うわ。それに、無料で貰ってたら、それだけで借りを返されてるみたいじゃない? 私はそんなことで借りを返させたくないの」

「さ、さすがラル……。なんで商売が成功しているのかなんとなく分かった気がする」

「ふふ、まあね」


 ラルは得意げに胸を張った。

 ──リヴェルが消えてから、5年が経った。

 クロエは魔神に身体を乗っ取られていたときの記憶が欠落していたみたいで、当時のことを何も覚えていないらしい。

 魔神が消えても【剣聖】の才能は健在で、憑物が落ちたように精神も安定するようになったみたいだ。

 ただ、詳しいことは知らないけど、クロエの両親は国家反逆の罪で処罰を受けたようだ。

 クルトは学園長に全てを話して、退学を申し出たが、学園長はそれを拒否。

 学年トップで居続け、クルトはみんなと一緒に英傑学園を卒業して今は『賢者』としてテオリヤ王国を守っている。

 一方、私は【竜騎士】の才能が消えて、戦える実力がほとんど無くなってしまった。

 英傑学園が元通りになるのはとても早かったが、その頃にはもう私は退学していた。

 才能がない状態でどうしようか迷ってるところをラルが助けてくれて、なりたかったパティシエになるための修行先を紹介してくれた。

 上達するのにとても苦労したけど、


『才能は与えられるものではない。才能は育てるものだ』


 子供の頃によくリヴェルが言っていた言葉を思い出して、私は努力を続けた。

 その甲斐あって、今はこうして自分のお店を開くことが出来るようになったのだ。

 カラン、カラン、とお店の扉に付けているドアベルが鳴った。


「アンナさん! お久しぶりです! それと開店おめでとうございます!」

「めでたいねー! アンナもついにお店を持つことが出来るとは!」

「おめでとう、アンナ」


 現れたのは、フィーアとシエラとクロエだった。


「三人共ありがとう〜! あ、適当な席座ってて」


 今日は開店初日だけど、仲の良いみんなを呼ぶため、貸し切りだ。

 そしてまたしばらくして、ドアベルが鳴った。


「ういーっす。我らが賢者様を連れて来てやったぜェ」

「やれやれ。君達とは、たまたま前で一緒になっただけだろう」

「ははは……なんかすみません。それと、アンナさん開店おめでとうございます!」


 現れたのはアギト、クルト、ウィルの3人だ。

 3人共、前よりも顔つきが凛々しくなって、大人びたように見える。


「これでみんな揃ったわね! あんた達、店の前の看板はちゃんとひっくり返した?」

「あ、今します!」


 ラルの発言を聞いて、ウィルがすぐさま動いた。

 そして私も丁度オーブンで焼き上げたお菓子を装飾し終わった。

 ショーウィンドウにお菓子を並べることなく、そのまま出来立てを机に並べていく。

 カラン、カラン、とドアベルが再び鳴った。


「すみません、今日は貸し切りなんですよ」


 私は机にお菓子を並べながら言った後に、入ってきた人物を見た。

 その瞬間、まるで時間が止まったように思えた。


「ただいま、みんな」

「キュウッ!」


 白い小さな竜を頭に乗せた男性──リヴェルだった。

 以前よりも雰囲気が大人びていてもすぐに分かった。

 色んな気持ちが込み上げてきた。

 だけど、それを処理するよりも早く、私の身体は動き出した。

 リヴェルに勢いよく抱きついて、もうこの手を離したくないと思った。

 みんなの前だったとしても、そんなことはどうでもよかった。


「おかえり、リヴェル」

「結構待たせちゃったな」

「ううん、全然だよ……!」


 声は震えていたし、涙が止まらなかった。


「もう絶対にアンナのそばを離れないから。何があっても」

「うん……!」

「……あのときの約束、忘れてないか?」

「もちろん……忘れるわけないよ」


 私がそう言うと、リヴェルは私の左手の薬指に指輪を着けた。


「結婚しよう」

「はい……! 喜んでっ!」


 そして私達はキスをした。

 これからはきっと楽しい日々が続くに違いない。

 そんなことを私は思っていた。



 だって、私の好きな人は──世界最強の努力家なのだから。






 『世界最強の努力家』 完

少々急ぎ足になりましたが、これにて『世界最強の努力家』完結です。

ご愛読ありがとうございました!


本編は完結しましたが、番外編として今後は書籍の初版特典だった書き下ろしssなどを定期的に更新していこうと思っています。

良ければブックマークは外さずに、番外編を楽しんで頂ければ幸いです。


また、下にある『☆☆☆☆☆』から本作品をポイント評価して頂けると嬉しいです。

★~★★★★★で皆様の率直な評価を教えて頂けると幸いです。


最後に二つほど宣伝です。


『世界最強の努力家』3巻は4月15日に発売予定です。

本編終了後のリヴェル達のその後を書いた書き下ろし番外編がついているので、よろしければ是非ご購入ください。


そして今後は新作を中心に更新していきます。


『底辺冒険者だけど魔法を極めてみることにした ~無能スキルから神スキルに進化した【魔法創造】と【アイテム作成】で無双する~』


URL:https://ncode.syosetu.com/n8399gu/


世界最強の努力家を執筆したうえで得た経験を活かした作品です。

……努力家でリヴェルがアンナと中々絡めなかった反省を活かして、新作では序盤からずっとヒロインがそばにいる予定です。

話数も28話ほどあり、これから読んでもそれなりに読み応えがあるのではないかと思います。

是非、新作も応援よろしくお願いいたします。


2021年3月8日 蒼乃白兎

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。こんなに面白かった小説、完結してもらえるのが何より嬉しいです。執筆お疲れ様でした。
[一言] 第3章が終ったなら第4章初めて欲しいです
[一言] 完結おめでとうございます 面白かったです
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