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35話 神様と対面

 暖かくて心地がいい。

 なんで俺はこんなにも眠っているんだろう。

 あ、そうだ。

 クルトと戦って……死んだのか?

 記憶が曖昧だ。

 どうなったのか、ハッキリと覚えていない。


「リヴェル、起きて」


 肩を揺さぶられた。

 この声は……アンナ?

 目を覚ますと、アンナが抱きしめてきた。


「よかった……目を覚ました……」

「なんで泣いてるんだ?」

「だって……だって、もうリヴェルが目を覚まさないんじゃないかと思って……」

「……ごめんな、心配かけちまって」

「ううん、リヴェルが無事で本当に良かった」

「まぁ無事かどうかは分からないんだけどな」


 見るからにここは英傑学園ではないようだ。

 真っ白い空間で……ん? ちょっと待てよ。

 この空間、見覚えがあるぞ……?


「目を覚ましましたね、リヴェルさん」

「あ、神様……」


 そうだ、ここは神様のいる空間だ。

 今まで対話するときはこの空間だったのだ。

 いつもは一人なのに、どうして今回はアンナも……?


『あるじ、無事で良かった〜!』

「キュウまでいるのか!?」


 キュウはパタパタと飛んできて、俺の頭に乗った。


「ふふふ、仲がよろしくて何よりです」


 神様はそう言って微笑んだ。


「神様、どうして俺だけじゃなくてアンナやキュウもいるんですか? 今までこんなこと一度も無かったはずです」

「それは私が呼んだからですよ、アンナさんとキュウさんはリヴェルさんの力の一部を持っているのですから」


 俺の力の一部……?


「えっ、私がリヴェルの力の一部を?」

『キュウも?』

「はい、そうです。特にキュウさんは存在そのものがリヴェルさんから生まれていますよ」

『ええ⁉ キュウのパパってあるじなの⁉』

「間違いではありませんね」

「ええー⁉ そうだったの⁉」


 キュウだけでなく、アンナも大変驚いていた。

 俺も内心、めちゃくちゃ驚いているが、状況を理解するので精一杯だ。

 神様は楽しそうに喋っているが、こっちは何が何だかさっぱりだ。


「えっと……一から説明してもらってもいいですか? まったく理解が追いつかなくて……」

「ええ、そうでしょうね。もちろん、最初から順を追って全てを話しましょう。そうですね、まずはリヴェルさんがこの世界の神だった頃の話からしましょう」


 ……は?


「え、リヴェルって神様だったの?」

『あるじ、すごい!』

「し、知らん知らん。そんなの身に覚えはない」

「覚えていないのも無理はありません。リヴェルさんは神の力を全て使い切り、人間になったのですから」


 人間になった……?

 神様から人間になることが可能なのか?


「皆さんが当たり前のように授かっている才能、あれはリヴェルさんが生み出したものなのですよ」

「俺が⁉」

「えええっ⁉」

「その時代の人は天敵である魔物に何も出来ずに、ただ数を減らしていくばかりでした。人間好きだった神様のリヴェルさんは、人間が魔物に対抗するための力を与えられないかと考えました。そこで考え出したのが才能です。しかし、神様が過干渉することは許されておりません。それでもリヴェルさんは自分よりも人間の繁栄を選び、神の力を全て使い切り、人間に才能を授けました」


 信じがたい話だが、神様の言うことなのだから間違ってはいないのだろう。


「リヴェルって人間が大好きだったんだね」

『流石あるじ!』

「知らない自分を褒められてもなぁ……」


 複雑な気分だ。


「今も昔もあんまり変わらないですよ」

「神様のリヴェルも優しかったんだ。えへへ」


 アンナは嬉しそうに言った。

 うーん……俺ではない俺、ましてや神様だったなんて言われても現実感は全くと言っていいほどにない。

 この状況自体が夢だと言われた方が信じられる。

 仮に夢だとしても否定するだけ無駄なので、続けて話を聞くが……。


「才能を授けられた人間はご存知の通り、繁栄していき、皆さんの今があります。そして、神の力を失ったリヴェルさんは、神様では無くなり、人間に転生しました」

「それでリヴェルが生まれたってことだね」

「いいえ、違います」

「えっ、違うの⁉」


 アンナは驚きで目を見張った。


「はい。これがあったのは大昔の事ですから。リヴェルさんはそれから何度も人間としての人生を歩みました。一生を終えるたびに記憶は無くなり、その都度新しい人生を送っていきます。神だった名残であるユニークスキル《英知》を所持した状態で」


 《英知》が神だったときの名残だって……?

 それは驚いた。

 確かに色々なことを知れるため、規格外のスキルではあった。

 しかし、まさかそんな背景があるとは思いもしなかった。


「《英知》って昔からリヴェルが持ってるスキルだよね? あれが神だったときの名残だったんだ」


 アンナは興味深そうに話を聞く一方でキュウは俺の頭の上で眠っていた。

 寝息が聞こえてくる。


「……それで《英知》を所持した状態の俺が何度も転生したってことですよね? それがどうしてアンナとキュウに繋がるんですか?」

「どのリヴェルさんも《英知》と同じように変わらず受け継いでいるものがあります」

「……もしかして、それが【努力】ってことですか?」

「その通りです。【努力】を授けたのにも理由がありましてね。神様だったときにリヴェルさんは言ったんです。『人間の一番優れた力は努力できることだ。人間ほど努力家な生物はいない』と。だから私はリヴェルさんに【努力】の才能を授けました。でも、リヴェルさん全然努力しないんです」

「「……え?」」


 俺とアンナの声が重なった。

 なんで俺は努力していないんだろう。

 一つだけ思い浮かぶのは、する理由が無かったから、ってことだけど。


「どうしてリヴェルは努力しなかったんですか?」

「生まれた頃から《英知》をユニークスキルとして所持しているので、努力しなくても大抵のことは出来てしまうのです」


 凄い納得した。

 確かに俺は幼い頃は《英知》のおかげで神童と呼ばれていたぐらいだった。

 まぁでも《英知》の力を見せびらかすのは良くないと思ってからは【努力】を手に入れるまでほとんど使わなかったな。


「なるほど……神の名残のせいで努力しなかった訳ですか」

「はい。その姿を見て私は、やはり努力とは人間だけのものかと思いました。元々神様だったリヴェルさんには【努力】が向いていないのだと。しかし、ある人物との出会うことによってリヴェルさんは努力を始めました」

「い、一体誰⁉ すっごく気になる!」


 アンナは先の内容が気になって仕方ない様子だった。


「アンナさん、あなたです」

「…………ええっ⁉ 私⁉」


 アンナと聞いて俺は不思議に思ったことがある。


「ちょっと待ってください。《英知》で【努力】について調べたとき、努力は報われないって書かれていました。だから少なくとも俺が努力を始めたのはアンナと出会う前の人生からですよ」


 俺は【努力】の才能を授かった日、《英知》で自身の才能を調べたときのことを思い出した。

 そして、そのときに【努力】の説明に、他の才能と違って成長補正が入らず、努力が報われない、と書かれていたのだ。


「はい、その通りです。リヴェルさんが努力を始めたのは一つ前からの人生です」


 俺が努力を始めたのは一つ前の人生から……?

 ……まさか。


「もしかして、アンナも転生者……?」

「流石リヴェルさん、鋭いですね。そうです。一つ前の人生でリヴェルさんはアンナさんと出会いました。それからリヴェルさんはアンナさんを守るために努力を始めました」

「へ、へぇ〜、そ、そうなんですね……」


 アンナの顔を見ると真っ赤になっていた。

 って、まぁ他人事じゃないか。

 これは俺も少し恥ずかしい……。


「ですが、リヴェルさんはアンナさんを守り切ることは出来ませんでした。強くなるためにアンナさんのもとから離れている最中に、魔物に襲われてアンナさんは命を落としました」


 ……ああ、それで俺は努力は報われないって書いたんだな。

 成長補正が入らないという理由をつけて、自分の責任だと思い込んだんだ。


「このときのアンナさんは【竜騎士】なんて才能ではなく【パティシエ】という才能を授かっていましたから抵抗する力なんて何もなかったのです」

「アンナが【パティシエ】って……」

「あ、私が欲しかった才能だ……」


 段々と不思議だった謎が繋がっていく感覚だ。


「それを知ったリヴェルさんは自ら命を絶ちました。これが前回までの人生です。そして私は考えました。リヴェルさんが努力するにはアンナさんが必要であり、死なせてはならないと。だから私はリヴェルさんの力を少し頂き、アンナさんに【竜騎士】の才能を授け、竜騎士のアンナさんを守れるようにキュウを生み出しました」

「……キュ?」


 名前を呼ばれたキュウは目を覚ました。


「キュウってアンナのこと守ったことあったか?」

「あるよ! 私がマンティコアに襲われたときとか!」

「あー、あのときか……」


 それ以外特に思い浮かばないが……まぁキュウがいてくれると明るい雰囲気になるよな。


「そして、ここからが本題です。リヴェルさん、この世界の神様に戻りませんか?」

「……神様に戻る? そんなことが可能なんですか?」

「はい。今のリヴェルさんは神に匹敵するほどの力を持っています。そこにアンナさんの力とキュウの力を頂ければ、間違いなく神様になれるほどの力が復活します。そうすれば魔神の力を宿したクルトさんにも勝つことが出来るでしょう」

「クルト……」


 そうだ、俺はクルトに勝たなければいけないんだった。

 確かにクルトはもう今の俺で勝てるほど甘くはない。

 しかし、ここで疑問が残る。


「アンナとキュウの力をもらったら、そのあとはどうなるんですか?」

「アンナさんは力を失い、キュウさんは存在が消えてしまうでしょう」

『キュウ消えるの⁉』


 キュウはビクッと身体を震わせた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無理やり物語を終わらせようとする感じの雑さが伺える…
[気になる点] 三章になってから雑になった気がします。 [一言] この作品は好きで書籍も買ってるので最後まで丁寧にやりきって欲しいです
[一言] 話はもう終盤なんですか?
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