34話 謎の光
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「リヴェル!」
空中でクルトの魔法が直撃したリヴェルは、力なく落ちていく。
私は落下するリヴェルに駆け寄って、受け止めた。
両腕の中で意識を失っているリヴェルを抱きしめた。
「死なないで! リヴェル!」
声をかけても、リヴェルは目を開けない。
嫌だ……リヴェルに死んで欲しくない。
そう思うだけで、鼓動が早くなった。
不安で仕方なくて、心臓が今にも飛び出てきそうだ。
目が熱くなって、涙が溢れてくる。
何も出来ない自分が情けないし、こうやって泣いているだけなのも嫌だった。
「はは、さすがリヴェルだ。あの攻撃をくらっても死なないとはね」
「……クルトさん、なんでこんなことをするんですか。クルトさんはリヴェルさんのことを慕っていましたよね……友達でしたよね!」
「フィーア……」
フィーアがクルトに向かって叫んだ。
目からは大粒の涙を流していた。
「もちろん。リヴェルは僕の師匠であり、一番の友人。でも、それとこれとは話は別だ。僕の目標を達成するにはリヴェルを倒さなければいけない。それも全力のリヴェルをね。だから、これは良い機会だったんだ。まぁ、もっと遊びたかったんだけどね」
「別じゃないですよ……! クルトさんはリヴェルさんの命よりもその目標を達成すること選んだんですか……⁉ そんなの友達なんかじゃありませんっ‼」
「ふむ……それはフィーアの考えだね。僕の考えは違う。僕はね、世界最強の魔法使いになりたいんだ。そして、それはもうすぐ果たされるんだ。リヴェルを倒せば、ね」
「間違ってます! そんなのおかしいですよ……! それになんでリヴェルさんを倒せば世界最強の魔法使いってことになるんですか? 意味が分かりません!」
「それは僕がリヴェルこそ世界最強だと思っていたからさ。そしてリヴェルは魔法を使う。だから僕の中では魔法使いにカテゴライズされている訳で、そんなリヴェルを越えないと僕が世界最強だということにはならないだろう?」
「そんなくだらないものなんかの為にリヴェルさんと戦わないでください!」
「ふぅん、残念だ。理解されないのは意外に悲しいものだね。まぁいいさ、仕方ない。それよりも早く僕が世界最強の魔法使いだと証明することにしよう」
クルトは歩いてリヴェルに近付いてくる。
……怖い。
でも、黙ってリヴェルを失うほうがもっと怖い。
リヴェルを地面に寝かせて、私は立ち上がってクルトに剣を向けた。
「ほう。君、まだ戦えるんだ。この僕を相手に」
「……当たり前でしょ。あまり私のことを見くびらないでもらいたいな」
「その割には膝が震えてるけど?」
「うっ、でも、リヴェルは殺させない! 絶対に!」
「ふふ、その言葉を聞いたらリヴェルは大喜びだろうね」
「クルトさん、私も相手です」
私の隣にフィーアが並んだ。
「こうなるのも仕方ないか。まぁ安心しなよ。君たちは殺さない。あくまでも僕はリヴェルを超えることだけが目的だからね」
不思議だった。
クルトは魔神を身体に宿しているのに完全な悪人ではない。
自我があって、私達にこんなことを言う。
考えがまるで読めない。
でも、一つだけ言えるのは、リヴェルは何としてでも守らなければいけない。
***
ヴィンセントを安全な場所へ運ぼうとしたアギトが取った行動は、彼の知り合いを見つけることだった。
「おいお前、コイツの知り合いか?」
アギトは避難する生徒をよく観察して、こちらに視線を向けてきた者に声をかけていた。
「え、ああ、ヴィンセントは知ってるけど、一体どうしたんだ?」
アギトが声をかけたのは、クラスAでリヴェルやヴィンセントと同じクラスの者だった。
「あの騒動で気絶しちまったみてェだ。俺は行くところがあるからよォ、良かったらコイツの面倒みてやってくれねェか?」
「分かったよ。同じクラスメイトでヴィンセントには中等部の頃から世話になってるからな」
「……おう、ありがとな」
アギトはその言葉を聞いて、耳を疑った。
しかし何も言うことはなくヴィンセントを渡すと、アギトは駆け出した。
自分の最低限すべきことはやったアギトが向かうのはリヴェルのもとだった。
激しい戦いが行われているのか、耳を澄まさなくても戦いの音は聞こえてきた。
「あっちか」
大急ぎでアギトは音のする方へ向かった。
そして、アギトが現場に到着したときに見たものは、自分の仲間と対峙するクルトだった。
アギトは、なぜクルトが? そう思うと同時に、ふつふつと怒りが沸いてきた。
「クルト、てめェなにやってんだァッ!」
「アギトさん!」
「アギトくん!」
「やぁ、アギト。見れば分かるだろう? リヴェルと戦っているんだ」
叫ぶアギトにクルトは微笑む。
「そう思うのは仕方ないだろうね。だけど、アギトになら説明しなくても良いかな。どうせアギト、聞く耳もたないだろう?」
「ああ、当たり前だろォが。こんなところを見て、怒らねェ奴ァいねーよ」
「ははっ、君らしいね。さて、僕の敵はフィーア、アギト、そしてアンナか。3人まとめて相手してあげるよ」
「上等だァ!」
アギトは激昂して、クルトに向かって駆け出した。
「フェル!」
アンナはすぐさま火竜に乗り、アギトが突撃していくのに合わせて動いた。
だが、しゅんっ、とクルトはその場から姿を消して、二人は周囲を見渡す。
「上です!」
と、フィーアは叫んで魔弾を放った。
しかし、クルトに当たることはく、魔弾は展開されている魔力障壁に阻まれてしまった。
その直後、再びクルトは消え、今度はアギトとアンナの前に現れる。
「こんな風に上にいけば、君たちは追ってこられないよね。でも安心してくれ。僕はそんな一方的な戦いを望んでいないからね」
「このクソ野郎ォ! 《炎剣・炎月車》」
「《灼熱炎舞》」
アギトとアンナの渾身の一撃もフィーアと同じように魔力障壁に阻まれてしまう。
「ほら、いくよ」
クルトが指を鳴らすと、二人はボンッと、吹き飛ばされてしまった。
「ぐあッ!」
「くっ……!」
「まさか魔法を使うまでも無いとはね。これが魔神の力とは恐れ入ったよ」
「てめェ……魔神なんかの力で強くなって、それで満足なのかァ⁉」
「ああ、満足さ。自分が最強になるために手段を選ばなかっただけさ。それに、リヴェルも同じように手段を選ばずに努力してきただろう? 同じさ」
「てめェのそれは他人の力を貰っただけじゃねェか! リヴェルは自分の力だけで強くなってんだ! 全然同じじゃねえよ!」
「ふふ、一理あるね。ま、それでも僕は構わないさ。現にこうして圧倒的な力を手に入れたのだからね。さて、そろそろ君たちも分かっただろう? 僕を止めることは出来ないって。だから、眠っていてもらうよ」
クルトがそう宣言したそのとき、
「キュウウウウウゥゥゥゥゥゥウ‼」
大きな白い竜が上空から猛スピードで飛んできた。
「あれは……!」
「キュウちゃん⁉」
白い竜は3人の前に降り立った。
『あるじは僕が守る!』
「キュウ⁉ その姿、どうしたの?」
『あるじのピンチだから僕も本気を出すことにした! クルト、許さないぞ!』
「そうだよ、キュウ! クルトの好きには絶対にさせない! 一緒にリヴェルを守ろう!」
「私も頑張ります!」
「ったく、しゃーねえ。もうちょっと頑張ってみるか!」
キュウの登場でみんなの折れかけていた心が復活すると、キュウとアンナの身体は眩い輝きを放ち出した。
「えっ⁉ な、なにこれ!」
「アンナさんとキュウちゃんが光ってます……これはクルトさんの仕業ですか⁉」
「いいや、僕は何もやっていないよ。……ふふ、まぁ楽しそうだから見学していてあげるよ。何が起こるのか、僕に見せてくれよ」
アンナはハッと、気付いた。
これは昔、マンティコアと戦ったときと同じなのだ。
キュウと初めて会って、一緒にリヴェルを助けようとしたとき、こんな風に光っていたのをアンナは思い返していた。
「後ろを見てごらん」
クルトがそう言うと、みんなは後ろを振り向いた。
すると、リヴェルの身体までもが眩い輝きを放っていた。
「一体、何が起きているの……?」
どうしてリヴェルまでもが光輝いているのか、アンナは不思議だった。
マンティコアのときは自分とキュウだけが光っていて、リヴェルが光ることなんてなかった。
光はどんどんと大きくなっていく。
『すごい懐かしい!』
「懐かしい? 前も言っていたけど、一体どういうことなの?」
『きっと、すぐに分かるよ!』
キュウはそう言うと、ますます光は大きくなる。
「きゃっ!」
そしてとうとう、その光に私たちは呑み込まれてしまった。
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