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33話 魔神クルト

新作、週間総合1位になりました!

この機会に是非読んでみてください!


『底辺冒険者だけど魔法を極めてみることにした ~無能スキルから神スキルに進化した【魔法創造】と【アイテム作成】で無双する~』


URL:ncode.syosetu.com/n8399gu

「なんだあれは……」


 魔神の後を追ってきてみると、アンナとフィーアが立ち尽くしていた。


「リヴェルさん、クルトさんが……」

「クルトが……? もしかして、あれはクルトなのか……?」


 あれが魔神ではなくクルトだとすれば、クルトは──魔神に身体を乗っ取られてたのか?

 徐々に暗黒の柱が消えていくと、その中心にクルトが立っていた。


「ふうん……」


 クルトは両手の腹の前に持ってきていて、目線を下に送った。

 クロエのときのように姿が変わっている様子はない。

 しかし、クルトの魔力は化物みたいに大きい。

 《纏魔羽衣》を使っている状態の俺よりも既に大きな魔力を持っているのだ。


「クルト、お前……」

「リヴェル……もしかして僕が魔神に身体を乗っ取られた、なんて思っているのかい?」

「なに……?」


 喋り方は普通で、いかにもクルトが言いそうなことだった。


「僕は、魔神と契約して、アイツの力を自分のものにしたんだ」

「お前、なんてことを……」

「瀕死の状態にしたのが功を奏したのかもしれないね。魔神が僕を奪おうとする力は大して強くなかった。ただ、魔神の意思を受け継ぐ形になってしまった」

「魔神の意思だと?」

「自分の本能が呼びかけてくるんだ。『破壊の限りを尽くせ』ってね。だから今も僕は耐えがたい欲求と戦っているわけさ」

「そんなことはさせないぞ、クルト」

「それなら好都合だね。今の僕の望みはリヴェルと戦うだけだからね」


 ……そういえば、そんなことを前にクルトが言っていたな。


「それはお前が言う世界最強の魔法使いである証明のためか?」

「もちろん」

「それで魔神なんかを取り入れるなんてな。どうかしてるぞ」

「かもしれないね。でも、僕の中ではリヴェルを超えることが何よりも優先されるんだ」


 ああ、確かに。

 お前はもともとそういう奴だったかもしれない。

 それがなんだかクルトらしくて今も憎めない自分がいる。

 でも、間違ったことをしているなら正してやらねばならない。

 俺はお前の友達だからな。


「分かった。お前に実力の違いってやつを見せてやるよ」

「それは大変楽しみだ。でも僕は確信しているよ。君を超えた、ってね」

「そうか。じゃあそれを俺は超えるまでだ」


 今までだってそうやって俺は強くなってきたのだから。


「──《纏魔羽衣》」


 クルトは魔法使いであり、接近戦は俺が有利なはずだ。

 魔力の総量だけで勝負は決まらない。

 クルトとの距離を一瞬にして詰めるが、それをクルトは目で追っていた。


「ふふ、すごい魔力だね。今の僕に匹敵するレベルだ。──でも、足りないね」


 斬りかかるもクルトには届かない。

 魔力障壁が尋常じゃないレベルの強度だ。

 接近戦に持ち込もうとしても攻撃が届かないなら話にならない。

 だから、ここは何が何でも攻撃を当ててやる。


「──《無窮刹那》」


 俺が放つことの出来る最強の一撃。

 言うなればこれは《纏魔羽衣》状態で使える《剛ノ剣》だ。



 ────────────────────


 ○《無窮刹那》

 《纏魔羽衣》を使用中に自身の魔力を均一にして放つ攻撃。


 ────────────────────



 《纏魔羽衣》状態では、魔力の量がとてつもない量になり、《剛ノ剣》をそのまま使うことは出来ない。


 だから新しくスキルを創造する必要があった。

 そして出来たのが《無窮刹那》だ。


「──《虚空魔剣》」


 クルトは魔法で黒色の剣を作り出し、俺の《無窮刹那》を受け止めた。

 剣に込められた魔力は計り知れない。

 膨大で禍々しい魔力によって構成されたあの剣は、一流の鍛冶師が叩き上げたものよりも優れているだろう。

 しかし、ただ受け止められただけなのは少しショックだな。


「お前、剣術なんて使えたのかよ」

「使えなかったよ。これは魔神の能力さ」


 なんでもありだな。

 だが、他人の力で勝てるほど俺は弱くないさ。

 戦闘中の魔力の動かし方、それは幾度の戦闘を経験して洗練されていくものだ。

 剣と剣がぶつかった瞬間に、俺は脚に魔力を集中させ、一気に加速する。

 クルトとの戦いに勝機を見出せるのは、この距離。

 俺の間合いで戦ってやっと五分五分ぐらいだ。

 だから今、このタイミングで仕留める。


「もらった」


 俺の剣がクルトを捉え、背中を斬った。

 クルトの身を案じる余裕は無い。

 本気で、命がけで、お前を倒しに行く。

 紅い血飛沫が吹き出るが、背後を振り向いたクルトは邪悪に微笑む。

 普段のクルトが見せない歪んだ笑みだった。

 そして、次の瞬間。

 クルトは俺の視界から消えた。

 それに反応した俺は反転し、背後からの攻撃に備える。

 しかし、そこにもクルトはいなかった。

 どこだ? と、俺は上を向くがいない。


「リヴェル! 後ろ!」

「リヴェルさん! 後ろです!」


 アンナとフィーアの叫び声を聞いて、俺は咄嗟に動こうとするが、


「──遅いよ」


 そう聞こえた瞬間、背中に激痛が走った。


「ぐっ」


 思わず、俺はクルトと距離を取った。

 クルトに与えた傷はもう既に塞がっていた。

 しかし、一体クルトは何をしたんだ?

 分からなかった。

 クルトの魔力は一瞬にして消えて、まるで世界から消えたようだったのだ。


「何が起きたのか分からない、って顔をしているね。君が普段見せない珍しい表情だ」

「はは……お前もその表情、普段は絶対に見せないだろうぜ。いかにも悪人ってツラしてるよ」

「それも悪くないね。種明かしをしてあげよう。僕はこの場から一歩も動いていないよ」

「……なに?」

「リヴェルに認識阻害の魔法をかけたんだ。そして、僕は自身の魔力を消し、透明化の魔法も使った。それだけだよ」


 俺に魔法をかけた……?

 阻害系の魔法のほとんどは耐性があり、普通ならば俺に魔法はかけることができないはずだ。

 それをあの一瞬でかけたって言うのか?

 ……化物め。


「ふふ、楽しいね。僕は今、人生の絶頂にいる自覚があるよ。本気のリヴェルと命を懸けて戦う──この瞬間を味わうために僕は生まれてきたと、言っても過言ではないさ」

「お前そのために魔神を……?」

「かもしれないね。そうすればリヴェルと真剣勝負が出来るから」

「バカ野郎……っ!」

「ふふ、申し訳ないね。でもこれが僕だ。──さぁリヴェル、最高の遊びを始めよう」


 ……ああ、思い出した。

 浮かび上がってきたのは、クルトと初めて戦ったフレイパーラの新人大会の決勝戦。

 そこでクルトは俺に言ったんだ。


『リヴェルとなら最高の遊びができそうだよ』


 魔神を身体に取り込んだというのに、芯の部分は全く変わっていないのだ。

 まったく、自分勝手な奴だ。

 こうなればもう付き合ってやるしかあるまい。

 背中が焼けるように熱い。

 深くまで斬られてしまっており、かなり血が流れている。

 血を止めるためにも回復魔法を使用する。


「回復するんだ。いいの? 後手に回っても」


 クルトは次々に魔法を発動させ、何十もの魔法が襲いかかってきた。

 一つ一つがかなりの威力を持った魔法だ。

 くそ……これでは避ける隙がない。

 《無窮刹那》で全ての魔法を斬る──!

 俺に当たるだけの面積を斬ると、そのまま地面に魔法は直撃し、激しい爆発が起きた。

 煙が舞って視界が悪い。

 早く移動しなければ次の攻撃に対応できない。

 クルトの言う通り完全に後手に回っている。

 これではダメだ。

 俺から仕掛けなければ負ける。

 脚に力を溜めて、上に飛ぶ。

 煙を突き抜けた先には、クルトが待ち構えていた。


「そう動くのは分かっていたよ」


 クルトの目が朱い輝きを放っている。

 これは、まさか……。


「《賢者ノ時間》の未来読みは、敵が強者であればあるほど有効だね。君の動きは速いから」


 アンナとの模擬戦で見せたあのスキルだ。

 クルトはニッコリと微笑んで、


「これは避けられないよね──《混沌咆哮》」


 火、水、風、3つの属性が合わさった魔法を目の前で放ってきた。

 まずい、回避──いや、ダメだ。

 その魔法の進行方向にはアンナとフィーアがいる。

 避ければ二人に被害が及ぶ。

 クソ……! ここはなんとか耐えるしかない。

 直撃箇所に魔力を移動させ、出来るだけ衝撃を和らげようとしたが、この魔法は威力がデカすぎる。

 ヤバイ……これは身体が耐えられそうにない。

 だが、ここで受け止めなければ俺だけでなくアンナとフィーアが危ない。

 なんとか耐えなければ……。

 衝撃がなくなり、クルトの《混沌咆哮》を耐え切ったことが分かった。

 それを理解した瞬間、頭にプツンとした衝撃が走り、視界が真っ暗になった。

新作、週間総合1位になりました!

この機会に是非読んでみてください!


『底辺冒険者だけど魔法を極めてみることにした ~無能スキルから神スキルに進化した【魔法創造】と【アイテム作成】で無双する~』


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― 新着の感想 ―
[一言] 強くなる為に手段を選ばないのは解るけど周りに迷惑掛けるなよ
[一言] つまり、クルトは魔人にでもならない限り、リヴェルには勝てなかったということか…
[一言] あんだけ渇望してた争いにしては、情けない勝ち筋を曝け出してんなぁw まあ戦術として一切間違えてはいない事だけは確かだが…
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