31話 《纏魔羽衣》
新作調子良いです。
この機会にぜひ読んでみてください!
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○《纏魔羽衣》
身体の表面に自身の魔力を纏わせるスキル。外部と内部の魔力がお互いに補完し合い、総量が増幅される結果、身体能力が100倍に跳ね上がる。
ただし、内部と外部の魔力比率が1:1にならなければ発動しない。微量でもバランスが崩れれば、すぐさまスキルの効果は消え失せる。完璧な魔力のコントロールと常軌を逸した精神力が無ければ成立しない。
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この状態になると、魔力の量が多すぎて、魔力が可視化される。
常に流動する魔力はバチバチ、と電気のように身体を纏っている。
剣を横に振り、一閃。
白い空間に一本の線が入る。
上下が次第にズレ始めた。
そこに剣を縦にもう一振りすると、白い空間は砕けて消え去った。
「なんだと⁉ もう戻って来たのか! それになんだその魔力は!」
魔神は驚く。
しかし、魔神の近くには学園長の姿が見当たらない。
地面を見ると、ボロボロになった学園長が倒れていた。
「ふはは! そのジジイ面白いよな。意気揚々と挑んで来たが、所詮は人間。この身体に何も攻撃を入れれなかったな!」
「いいのか? そんなことを言って」
「いいも何も事実だろう」
「そうか、じゃあもう此処から逃げられないと思え。お前の企みはもう分かっている」
「……何を言っている?」
「今までの行動は全部時間稼ぎだったんだろう?」
「ふん、妄言だな」
「ああ、それならそれでいい。だが、お前は絶対に逃さない──《無間地獄》」
魔神と俺の周囲が黒色の障壁が覆う。
これは暗黒魔境の化物共の動きを封じるために考案したスキルだ。
《無間地獄》に捕われた者は俺がスキルを解除しない限り、逃げることは出来ない。
中はとても暗いが、俺の目はすぐ暗闇に順応するようになっている。
「こんなもの……!」
魔神は黒色の障壁を壊そうと魔法を放つが、びくともしない。
「今からお前を気絶させる。クロエの身体は返してもらうぞ」
「……ふふっ、やってみろ! 貴様では我を止められん」
魔神も暗闇で目が利くようだ。
俺に向かって斬撃を加えようと動いている。
「──遅いな」
魔神が目で追えない速さで動き、確実に背後を取った。
少しでも反応させない。
魔神の意識さえも無防備な状態で延髄を手刀で叩いた。
「──っ」
手刀で叩くと、糸が切れた人形のようにクロエの力が抜けていった。
「ふぅ、気絶したみたいだな」
気絶すればこっちのものだ。
精神魔法でクロエの意識下に入り込む。
それで魔神を退治できれば、万事解決だ。
気絶した状態なら精神魔法で意識の深層にまで潜り込みやすいだろう。
「悪いな、クロエ。お前の心の中、覗かせてもらうぞ」
申し訳ない気持ちを紛らわせようと、気絶したクロエに俺はそう言って、精神魔法をかけた。
***
「クルトさん! 見つけましたよ!」
英傑学園内を駆け回って、やっとクルトさんを見つけることが出来ました。
南の校門付近でクルトさんは立ち尽くしていました。
一体何をしているんでしょう?
「リヴェルさんが魔神に身体を乗っ取られたクロエさんと戦っています! クルトさん、助けに行ってあげられませんか?」
「なるほど、やっぱりそうだったか」
「えっ、やっぱり?」
「あぁいや、気にしないでくれ。独り言さ」
私は何か違和感を覚えました。
独り言でもやっぱり、なんて言うでしょうか?
いや、そんなことよりリヴェルさんを助けに行ってもらわないと!
「あっちでリヴェルさんが戦っています! クロエさんめちゃくちゃ強くてもしかしたらリヴェルさん負けちゃうかもしれません!」
「いや、それはありえないさ。そう、僕は確信してる」
「どうしてですか⁉ 心配にならないんですか? クルトさん!」
「ああ、申し訳ないね。僕は今、僕のために此処にいる。それがリヴェルのためになると信じてね」
「……分かりました。じゃあ私は何とかリヴェルさんの手助けが出来ないか頑張ってみます」
「申し訳ないね。そっちは任せたよ」
「はい……」
クルトさん、本当にリヴェルさんのところに行かないんだ……。
一体どうしちゃったんだろう?
んー、もともとあまり助けるって感じの性格ではなかったかもしれない……。
全ては魔法を極めるため、みたいなところはあるかも。
……いやいや! こんなことを考えてはクルトさんに失礼ですね。
クルトさんはちゃんと優しいし、周りの気遣いも出来ますから。
うーん、何のフォローだろ、これ。
私は首をブンブン、と横に振ってリヴェルさんが戦っている場所に戻るのだった。
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