29話 魔神の復活
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『底辺冒険者だけど【魔法創造】で魔法を極めてみる 〜無能スキルが進化し、俺だけがレベルと引き換えに魔法を取得出来るようになった〜』
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光の無い闇の世界。
そこで俺は悪魔を相手にし、実力を磨いてきた。
普通ならば『暗黒魔境』の住人がこちらの世界に来ることはないはずだが。
「えっ!? クロエがスパイ……⁉」
「そう驚くなお嬢さん、納得がいく部分もあるだろう。この小娘の中等部の頃からの異常性を考えればな」
「そんな……! クロエ……」
「まぁそう落ち込むな。この小娘は我の存在に気付いておらぬ。主人格とは違う、別の人格を我が乗っ取ったのだからな。それにこれは小娘自身ではなく周囲が望んだことだ。両親は【剣聖】と【剣姫】だというのにクロエには何も才能が無かったことが悲劇の始まりだろう」
「才能が無いって嘘だよ! だって、クロエは【剣聖】の才能を授かったんだよ!」
「ふっはっはっは! それは魔神である我が小娘に授けたものだ。本当の才能は【剣士】なのだよ。それを両親が受け入れられず、我を自分の娘に宿すことを選んだのだ!」
なるほど、もともとテオリヤ王国は何年も前から既にフェルリデット帝国からの攻撃を受けていたのだ。
それならつまり、クロエの両親は内通者になるわけだ。
これを学園長は知っていたのだろうか?
クロエを気にかけていたのは、そのせいだったのか?
……いや、それならスパイの捜索など頼むなんて考えにくいか。
「そんな……」
この話を聞いて俺はクロエが強さに執着する理由がやっと分かった。
クロエは、ただ誰かに認めてもらいたかったのだ。
「とりあえず、お前を見過ごす訳にはいかないな。俺の実力は既にバレてるみたいだが」
初めてクロエと会った日、クロエが自分の屋敷に帰っていたときに帝国にこの情報は伝わってしまっているだろう。
「その通り。初めからお前は詰んでいたのだ」
「詰んでいた? そんなことないさ。今まで何度もそんな状況を乗り越えてきた。だって俺は──努力家だからな」
「ならば魔神である我を越えねばなッ──」
天井に魔法を放った。
ドカーン、と爆発音がして、倉庫の天井が全て無くなった。
「ふはは!」
クロエが黒い球に包まれて、弾けた。
一瞬にして姿が変わった。
黒いドレスを身に纏い、髪にはティアラをつけている。
そしてクロエは背中から生える大きな漆黒の翼を広げ、上空に飛んだ。
「逃さないぞ。アンナはヴィンセントを連れて離れていろ!」
「う、うん!」
俺はそれを《空歩》で追う。
「逃げてないさ。狭い場所で戦うのは華が無いからなぁ。300年振りに戦うのだ。どうせなら派手にいこうじゃないか」
「派手にすればするほど、学園関係者がお前を倒しに来るぞ?」
「ふははっ! かかってくるがいいさ! お前以外はどいつも雑魚だ!」
クロエは手に持つ剣が15mほど長くなった漆黒の大剣に変わる。
それを平気な顔で振り下ろした。
剣で受け止めると、その衝撃で下の地面に亀裂が走った。
「ふ、この身体にこれは使い勝手が悪いな」
そう言って、魔神は剣を元に戻した。
「……今の無駄じゃないか?」
「ああ、どうやら我は無駄を楽しめるほどに気分が良いらしい──《爆裂光線》」
クロエの掌から光線が出されて、英傑学園の校舎に爆発が起きる。
「それ以上はさせない」
魔神に詰め寄り、掌の前に《魔力障壁》を発動させる。
至近距離で爆発するが、魔神と俺は全くの無傷だ。
服すら何も損傷が無いのは、俺と魔神、どちらも《魔力障壁》で自分を覆ったからだ。
すぐさま剣を振るうと、お互いの剣がぶつかり衝撃波が起き、先ほど損壊した学園の校舎の瓦礫が飛んでいった。
「……お前『暗黒魔境』の住人だろ?」
「その世界を知っているとはな。その通りだ。我は『暗黒魔境』を創造した悪魔だからな」
「なるほど。道理で強い訳だ」
「我も納得がいった。貴様の強さがな。来ていたようだな。此方側に。……ふふ、ウォーミングアップにはなりそうだ」
さて、魔神を相手にクロエを守りながら戦わなければいけないみたいだな。
ま、なんとかしてみせるさ。
***
「う〜! リヴェルがヴィンセントのこと気絶させるから〜!」
私は白目を剥いて、口をぽかーんと開けているヴィンセントを引きずって、安全な場所に運んでいた。
早くリヴェルの援護に向かいたい。
けど、戦いの様子を見て、どうしても私の出る幕が無いように思えてしまう。
上空では、凄まじい剣戟が繰り広げられている。
魔神に身体を乗っ取られたクロエは見たこともない強力な魔法で攻撃を繰り出し、リヴェルはそれに応じて周りを守るように戦っている……風に見える。
正直、レベルが違いすぎて……一緒に戦える状況になっても果たして私は戦えるのだろうか。
リヴェルを助けたい気持ちと怖い気持ちが入り混じって、ぐちゃぐちゃになって、考えている内に段々と恐怖が大きくなっていく。
「とにかく、まずはこのヴィンセントを何とかしないと! あ、そうだ!」
私は先ほど蹴りを当てた二人のところに向かうことにした。
あの二人ならヴィンセントを引き取ってくれるに違いない。
「って、いないし!」
倒れていた場所から二人は既に姿を消していた。
この騒ぎで生徒は大混乱だし、逃げない方がおかしいかもしれない。
テオリヤ王国でも優れた才能を持った生徒達と言われても、あんな戦いを見せられたら誰でも逃げたくなる。
「アンナさん!」
「なにしてんだァ……げっ」
ちょうどそこにフィーアとアギトが現れた。
「フィーアとアギト! どうしたの、こんなところで」
「騒ぎを聞きつけて来てみたんです。もしかするとリヴェルさんが巻き込まれているのかもしれないと思って」
「うん、実はそうなんだよ! 今空で戦っているのは、リヴェルと魔神に身体を乗っ取られたクロエなの!」
「ク、クロエさんが⁉ 魔神に乗っ取られたとは一体……!」
「で、お前が今引きずっているそいつはどうしたんだよ」
「えーっと、こっちのヴィンセントはリヴェルを襲って返り討ちにあって、気絶させられて、それを私が今安全な場所に運ぼうとしてて!」
やばい、自分で言ってて訳が分からなくなってきた。
「落ち着け、とりあえず分かったァ。魔神って奴の強さはどんなもんなんだ? あの戦いを見る感じとんでもねえ奴みてェだが」
「めちゃくちゃ強い。……リヴェルじゃないと太刀打ちできないかも」
「だろうなァ。……ったく、俺も大人しくなったもんだよ。アンナ、そいつ俺に貸せ。安全な場所まで俺が運んで行ってやる。お前は英傑学園の教師達に現状を伝えてこい。出来れば一番強ェ奴から順に伝えると良いだろうな。これは此処にいる3人で中等部から所属してるお前が一番適任だ」
そう言って、アギトは自らヴィンセントを背負いだした。
「た、たしかに……! うん、よし分かった! 行ってくるよ。ありがとうアギト!」
失礼だけど、アギトはもっと乱暴な人だと思っていた。
でも全然、私よりも冷静でしっかりとしている。
……ダメだな、私もしっかりしなきゃ!
***
アンナが凄い勢いで走って行ったのを見て、俺はひとまず安心した。
リヴェルと互角に戦えるぐらいの相手に、今の青ざめた表情のアンナを行かせる訳にはいかない。
きっと分かっているんだ。
自分じゃ相手にならないことぐらい。
ああ、俺にはよく分かるさ。
……かっこ悪ィな。
いつから俺はあまり他人を馬鹿にしなくなったのだろう。
いつから俺は他人を尊重するようになったのだろう。
……そんなの分かり切っている。
リヴェル、てめぇと出会ってからだ。
俺はお前を越えたかった。
だけど、それは無理だ。
俺はそんな器じゃないらしい。
だから俺はお前に恩を返すことにするさ。
どれだけカッコ悪くても、俺の出来る範囲でお前の助けになってやるよ。
「フィーア、お前はクルトを探せ。クルトならリヴェルの力になれるはずだ」
「あっ、そうですね。クルトさんならきっと戦えるかもしれませんね。
「ああ、分かったならとっとと行くぞ」
「アギトさん……カッコ良かったですよ。それでは」
そう言って、フィーアはクルトを探しに向かった。
「……うっせーよ」
俺は一人呟いた。
「ハァー、なんでコイツ背負ってンだか」
まさか俺がコイツを背負う日が来るとは思わなかったぜ。
別にここで置いて行くのも悪くねェな。
俺はコイツが運悪く死のうが何とも思わねェ。
「……そういう気分じゃねェし、助けてやるとするか。良かったな、俺の気分が悪くなくてな」
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