28話 クロエの異変
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『底辺冒険者だけど【魔法創造】で魔法を極めてみる 〜無能スキルが進化し、俺だけがレベルと引き換えに魔法を取得出来るようになった〜』
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──私は、ただ両親に認めてもらいたかった。
父は【剣聖】。
母は【剣姫】。
これ以上ない両親のもとに私、クロエは生まれた。
幼い頃から私は剣術の英才教育を受けていた。
才能を授かる前から才能はあった。
だけど、両親の名に恥じない程の才能は無かった。
あるのは、人より少し剣術が上手いだけの才能だ。
だから同年代で私よりも優れた剣士は沢山いた。
父は言う。
「この程度の剣捌きも出来ない子に育てた覚えはない。お前は誰の子供だ? 【剣聖】と【剣姫】の子供だぞ?」
私はそう言われているとき、自分のことを他人のように感じていた。
背中から父に怒られている自分を見ているような感覚だ。
それを経験するようになってから、私は少し気が楽になった。
だって、自分が怒られているように感じないから。
辛い稽古に耐えても父と母は褒めない。
剣術の先生も褒めることはない。
私を褒めてあげられるのは私だけで、会話相手もまた自分自身だった。
13歳になり、私は【剣士】の才能を授かった。
でも気づけば、私は【剣聖】の才能を授かっていた。
その記憶は無いが、両親に褒められたので私は満足した。
***
「ここだ」
「え、ここってただの倉庫じゃない?」
「ああ、そうだ」
やってきたのはアンナの言うように英傑学園にいくつか設置されている倉庫だ。
用具などが置かれており、この中に入る生徒は滅多にいない。
だからこそ、ヴィンセントはこの倉庫にある仕掛けを施すことが出来たのだ。
用具をずらして、倉庫の床を見ると、白いチョークで魔法陣が描かれていた。
「これって、もしかして転移魔法の?」
「察しがいいな」
「一度リヴェルがこういう魔法陣を描いてたから」
「見えたのか?」
魔力で描いていたはずなので普通は見えないのだが。
「うん、目を凝らしたらうっすらと見えたよ」
「そいつはすげえな」
「そ、そうかな? えへへ」
と、言ってるそばで魔法陣が青白く光り出した。
「へへ、これでリヴェルとアンナは──って、はぁ⁉」
魔法陣の上にヴィンセントが現れた。
クロエは魔法陣の上で頭を抱えて震えている。
「よう、ヴィンセント」
「クロエを拐って、さっきの二人もヴィンセント君の仕業だね。許せない!」
「な、なんで、リヴェルとアンナ君がここに……! 馬鹿な! この計画は完璧のはず!」
「ま、完璧ではなかったってことだ。相手が俺でなければ十分だったかもしれないけどな」
「黙れッ! 俺は知っているんだぞ! お前が大した実力も無いってことをさ! それにアンナ君だって竜がいなければ何も出来ない! この俺を捕まえることはお前らには無理ってわけ! 分かるか?」
「凄い怒鳴り散らかすな。まだ自分が有利だと思っているのか? 教えろよ。何でこんなことをしたのか」
「ふ、ふふ。俺が有利だと……? そんなの当たり前だろ! 俺を誰だと思っているんだ!? 伯爵家の子息にして【魔法剣士】の才能を持つ天才なんだぞ!」
「……こんな人にクラス長を推薦されて、しかも副クラス長にしちゃうなんてね」
「何とでも言うがいい! どうせお前も俺の前に跪くことになるんだからな。俺はいつだってそうやってきた。ふはは、クロエを捕まえた理由を聞きたかったら俺を倒してみろよぉ! リヴェル!」
「それがお望みなら、すぐに叶えてやろう」
幸い、ここは誰の目からもバレない。
実力を隠さなくても平気だ。
ヴィンセントは俺の実力を知ってしまうことになるが、忘却魔法で記憶を消してしまえばいい。
「はっはっは、斬り裂いてや──⁉」
剣を抜こうとするヴィンセントの首筋に俺は剣先を当てる。
「これでどうだ?」
「くそっ! ──なっ⁉」
ヴィンセントは体勢を変えて仕切り直そうとするが、俺はそれすらも許さない。
ヴィンセントよりも速く背後に回る。
「リヴェル、実力を見せても平気なの?」
「ここなら平気だ。この倉庫に認識阻害の結界も張っておいたから、倉庫内部にいる者にしか何が起きてるのかわからないよ」
「あー《無詠唱》だね」
「そういうことだ」
「……なんなんだよお前! こんな、こんなの……っ! おかしいじゃないか! お前は身体能力が低くて、他の英傑学園生よりも弱い雑魚なんじゃないのかよ!」
「これからもそう思ってくれるなら楽で良いんだがな」
「そ、そうに決まってる! 何か仕込んでるんだろ! お前が【魔法剣士】で天才な俺よりも優れているはずがない!」
ヴィンセントはかなり興奮していて、まともに会話出来る様子ではない。
クロエの様子も変だし、遊んでる暇は無いな。
「──う、動けない⁉」
ヴィンセントから冷や汗が大量に流れ出す。
まだ悪あがきをしようとするヴィンセントを魔法で拘束したが、効果覿面のようだ。
「単刀直入にクロエを捕まえた理由とそれ以外に何をしたか言え」
「ひ、ひいっ⁉ お、俺はクロエに何もやっていない! つ、捕まえた理由もお前達を脅すためだ!」
この様子で何もやっていない?
先ほどから少し様子はおかしかったが、このクロエの様子はハッキリ言って異常だ。
だが、ヴィンセントは嘘を言っていないようだ。
《真偽判定》の結果がそう出ている。
「なぜクロエを狙った?」
「こ、こいつが精神異常者だと知っていたからだ! だから実力発表の日におかしくなるんじゃないか、と予想していたんだ!」
精神異常者……。
先ほどアンナが言っていたことを思い出す。
1年生の頃は明るくて、2年生の頃は自分の殻に閉じこもっていた、か──。
「クロエ、大丈夫か?」
座り込むクロエに近づき、声をかけた。
「……ない……しは……さい」
小さな声で何かぶつぶつと呟いているが、よく聞き取れない。
「クロエ! しっかりして!」
アンナも駆け寄って、声をかけたが、クロエは何も反応を示さず、ぶつぶつと何かを呟くだけだ。
「クロエには本当に何もしていない! か、神に誓って本当だ! 信じてくれ! それと本当に悪かった! 君がここまでの実力者だと知っていたらこんなことはしなかった!」
……こいつ、根っからのクズだな。
「お前は黙っていろ」
「はぅ」
睡眠魔法でヴィンセントを眠らせた。
こいつが口を開けば開くだけ不快になる。
それに、今はクロエを何とかしなければいけない。
「あ、アア……! アアアアアアアア!」
「どうした! 大丈夫か! クロエ!」
クロエは頭を抱えて絶叫しだした。
「これは……」
クロエの魔力がどんどん上昇していく。
おかしい。
これだけの魔力をクロエは持っていないはずだ。
「ねぇクロエ! しっかりして!」
アンナが心配そうにクロエの肩を揺さぶる。
「……」
しばらくして、クロエは静かになったが、魔力は既にもとのクロエよりも何倍も多い。
目は虚で、視線はどこか遠くを別人……まさか!
「アンナ! 離れろ!」
「えっ、うん!」
クロエは不気味な笑みを浮かべ、腰に携えた剣の柄を握った。
そして、迷いもなく周囲を一閃。
倉庫に置かれた用具が真っ二つにされた。
「クロエ!? 何してるの⁉」
「アンナ、無駄だ。──お前は誰だ?」
魔力の量だけならまだクロエだと考えることは出来た。
だが、今のクロエは魔力の性質が違う。
性質が変わることなんてありえない。
そんなものを変えるというなら、人間としての器を変える、つまり肉体を変えることぐらいでしか成し得ないのだ。
「私はクロエ──と言っても信じてもらえんだろうな」
喋り方の雰囲気がまるで違う。
「クロエ!」
「ふはは、私はクロエなどいう無能な小娘ではない……神だ」
「か、神?」
「その神様が何でクロエに乗り移っているのか、説明願いたいな」
「神と言っても、魔神だがね。封印から目覚めた我は、この小娘の身体で力が戻るまで眠っていたのだよ」
「……どういうことだ?」
「我が説明する義理など無いが、まぁいい。特別だ。種明かしをしてやろう。リヴェル、貴様が探そうとしていたフェルリデット帝国のスパイ、それは我なのだ」
場に緊張が走る。
俺は奴の一挙一動を見逃さないように集中力を最大限に発揮する。
流石に魔神と名乗るだけはある。
コイツは俺が2年間の半分を過ごしてきた──『暗黒魔境』という悪魔が住む世界の住人だ。
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