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20話 クラス長決め

「クロエです。よろしく」


 クロエの番になると、少し眠そうにしながら、とても簡潔な自己紹介をした。


「えーっと、アンナです。才能は【竜騎士】で赤竜騎士団に所属してます。これからよろしくお願いします!」


 アンナの自己紹介は明るく元気な印象を受けた。

 交流戦で一つも緊張している様子はなかったのに、この場では少し緊張しているようだ。

 若干どこかズレてるところがあるのは昔から変わらないな。

 そして俺の番が回ってくる。


 みんなからの視線が寄せられているのを感じる。


 中等部にいなかった者は特に注目されているようだ。

 交流戦でクルトが見せた活躍も少し関係していそうなもんだが。

 さて、才能は言った方がいいのだろうか。

 今までの自己紹介をした7人はみんな才能を言っており、言わなかったのはクロエただ1人だ。

 必ずしも言わなければならないこともないのだが、なんとなく言った方がいいような流れである。


 少し困ったが、これまでの経験から俺は才能を言わないことにした。

 この才能はあまり第一印象が良くないみたいだからな。


「リヴェルです。入学前は冒険者活動をしたり、世界を旅したりしてました。よろしくお願いします」


 自己紹介を終えた俺は椅子に座る。

 波風を立てることもない無難な自己紹介だったように思える。

 高等部から英傑学園に入学する者で冒険者をやっていた人は少なくない。

 なので、俺の自己紹介はよくいる高等部から入学した人と思うはずだ。

 自己紹介はその後も順調に進んでいった。

 みんなの自己紹介が終わると、次はクラス長と副クラス長を決める必要がある。


「さて、これからクラス長を決めると思うのだけど、まず僕から推薦させてもらいたい人がいる」


 自己紹介を終え、一呼吸を置いてからヴィンセントは言った。


「交流戦の代表にも抜擢されたアンナ君をクラス長にすべきだと思う」

「え、私?」


 アンナは驚いた表情で自らの人差し指の先を自分に向けた。


「そうだとも。実力と人望を考慮すれば、君以上に適任はいないよ」

「んー、ありがたいけど私にはそういうの向いてないかな。みんなをまとめる役とか少し苦手だし」

「人をまとめることなんて誰にだって出来る。リーダーに必要なものはまとめる力じゃなく、みんなから信頼されることだと俺は思うんだ」

「それならヴィンセント君が適任じゃないかな? 中等部の頃にクラス長やってたでしょ?」

「ふむ、これでは話が進まないな。あまり気乗りしないが多数決を取るのはどうだろうか」

「別にそれでいいんじゃないか?」


 エドワードがヴィンセントの呼びかけに応えると、ヴィンセントはわずかに眉をひそめた。

 本当にわずかな動きだった。

 スパイの存在を探る役目があり、周りをよく観察している俺でなければ気付かないだろう。

 きっと本人も気付いていないはずだ。


「ありがとう。もし他にクラス長に立候補したい人がいれば遠慮なく名乗り出てくれ」


 しばらく待っても他に名乗り出る者はいない。


「よし、それじゃあ俺とアンナ君で多数決を取ろう。多かった方がクラス長だ。アンナ君もそれで文句は無いね?」

「うん。そのときは頑張ってクラス長をやらせてもらうね」

「よし、では早速だが多数決を取りたいと思う。俺とアンナ君を除いた者達には、どちらかに挙手をしてほしい。もし票数が同じだった場合はもう一度多数決をしよう」


 多数決か……。

 どちらに入れようか。

 どうやらアンナは乗り気じゃないようなので、ヴィンセントに入れるのも一つの選択だ。

 先程からクラスの様子を観察しているが、ヴィンセントの交流関係は広い。

 入学式前のクラス内でもヴィンセントの周りには10人ぐらいの人集りが出来ていたのを覚えている。

 今もこうして進行役を務めているのはヴィンセントでリーダーシップを発揮している。

 しかし、それが妙に引っかかる。

 ……知り合ったばかりのクラスメイトを早々に疑うのも気が引けるな。

 考えを戻して、どちらに投票するか考えよう。

 アンナが乗り気じゃないのは、クラス長としてみんなをまとめることが出来るのか不安だからだと、俺は思っている。

 クルトとの交流戦で少し自信を無くしたのかもしれないな。

 ……さて、それらを踏まえ、クラスAの一員としてクラス長に相応しいと思うほうに挙手をしよう。


「ではこれから多数決を取りたいと思う。まず、俺──ヴィンセントにクラス長をやってほしいと思う者、手を挙げてくれ」


 ヴィンセントは丁寧に挙手した数を数えていく。


「ふむ、16票か。では次にアンナ君にクラス長をやってほしいと思う者は手を挙げてくれ」


 ここで俺は挙手をした。

 周りを見ると、クロエ、エドワードもアンナのときに挙手をしていた。

 ヴィンセントはそれらを再び丁寧に数えた。


「22票。ちゃんとクラスの全員が多数決に参加してくれたようだね。ありがとう。ではその結果を踏まえ、クラス長はアンナ君に決定だ」

「……よし! こうなったらクラス長頑張るしかないよね。少し頼りないかもしれないけど、これからよろしくね!」


 アンナがそう言うと、クラスから拍手が送られた。


「アンナー! 頑張ってー!」

「応援してるぞー!」

「あはは、ありがとう〜!」


 アンナを歓迎する人達は結構いてくれて俺は少しホッとした。


「それじゃ、副クラス長なんだけど、さっき16票入っていたヴィンセント君に任せても大丈夫かな?」


 クラス長になったアンナは早速、ヴィンセントにそう尋ねた。


「アンナ君を推薦したのも俺だし、ここで断る訳にはいかないよね。副クラス長が俺でいいなら喜んで引き受けさせてもらうよ」

「当たり前だぜ、ヴィンセント!」

「アンナちゃんをしっかりサポートしてやれよ!」

「ははは、頑張るよ」


 歓迎の声を聞くにヴィンセントの人望も中々に厚いみたいだ。


「無事にクラス長と副クラス長が決まったみたいで良かったです。皆さんはこれから入寮手続きなどあると思うので、今日はこれで解散です。明日から講義が開始されるので、遅刻しないように」


 先生のミルフィがそう言って、今日はこれで解散になった。

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[一言] ヴィンセント怪しいですね〜
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