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17話 クラス分け

 そして日は流れ、英傑学園の入学式がやってきた。


「皆さん……お元気で! 自分は冒険者として皆さんに追いつけるように実力を磨きます……!」


 不合格だったウィルは泣きながら俺たちを見送った。


「はいはい。そんなに泣かなくても活動拠点をフレイパーラから王都に変えれば良いだけじゃない」


 そんなウィルをラルは元気付けていた。


 俺達は支給された制服を身にまとい、英傑学園の門を抜けた。


 クラス分けの掲示板が張り出されており、付近には上級生と見られる生徒達が1年生達を案内しているようだった。

 俺たちは掲示板に近づき、それぞれのクラスを確認する。

 クラスは全部で4つあり、クラスA、クラスB、クラスC、クラスD、と数字で分けられていた。


 今年の入学者の数は約40人。

 話によると定員に限りはなく、優れた者はみんな合格にしているらしい。

 中等部の奴らを含めると約160人になるため、1クラスの人数は約40人だ。

 掲示板を見たところ、中等部からの生徒と高等部からの生徒で分けるようなことはしておらず、ごちゃ混ぜにしたクラス編成のようだ。


 クラスA 俺、アンナ、クロエ


 クラスB アギト、フィーア


 クラスC シエラ


 クラスD クルト


 4つのクラスのメンバーを見ると、俺達は全てのクラスに所属するように編成されていた。

 俺のクラスに3人も振り分けられているのは、実力を隠すことも必要になるからだろうか。

 確かに、それをサポートしてくれる人は出来るだけ多い方が安全性は高まる。


「なるほどね、ちゃんと考えられたクラス編成じゃないか」


 クルトはそう呟いた。


「私とアギトさんは一緒のクラスですね」


「そうみてぇだな」


 みんな大体確認できたようだ。


「クラスを確認した新入生達はこちらに来てください!」


 上級生に言われた通りに俺たちは動いた。

 しかし、俺だけ止められた。


「従魔は預かり所で預ける決まりになっているんですよ。着いてきてもらえますか?」


「分かりました」


 クルト、アギト、フィーアとはここで別れて、俺は預かり所に向かった。

 みんなとは逆方向に歩いて行くと預かり所に到着した。

 校舎の外にあり、厩舎のような建物だ。


『じゃあ待っててなキュウ。終わり次第迎えに来れると思うから』


『あるじ! いってらっしゃい!』


 キュウはよく俺と一緒にいるが、こういった場面で離れることになっても寂しがることはない。

 賢い子だよ、本当に。


 預かり所でキュウを預けると、俺は再び上級生の後を着いていき、自分のクラスに向かった。

 クラスは英傑学園の3階にあり、4つのクラスが並んでいる。

 扉の上にクラスAと書かれたプレートがあるので、そこに入る。


「あ、リヴェル! おはよう」


「おはよう」


 教室には既にアンナとクロエがいて、隣同士の席に座っている。

 アンナとクロエが俺に声をかけると、周りの生徒からの視線が集まる。

 入学早々に目立ってるような気がするんだが、大丈夫か……?


「あ、ああ。おはよう。座る席とかって決まっているのか?」


「ううん、決まってないよ。適当に座ればいいんじゃないかな」


「そうか」


 既に目立ってしまったので、ここで変にアンナ達と距離を置いても逆に不自然だ。

 それに目立つ、目立たないは何も関係なく、俺はただ自分の実力を隠せば良いだけのこと。

 変に気にしすぎる必要もないか。


「よぉーう。お前高等部から入学してきた奴だよな?」


 一人の生徒が俺の前の席に座り、背もたれに腕を乗せて後ろを向いてきた。

 緑色の髪と愛想の良い笑顔で印象的だ。


「よく分かったな」


「そりゃ分かるさ。中等部の奴等の顔なんてみんな知ってるからな。誰だって簡単に見分けがつく」


 まぁそうだよな。


「俺はエドワードだ。同じクラス同士仲良くやろうぜ」


 手を差し出してきたので、それに応えて握手をする。


「よろしくな、リヴェルだ」


「……ところで、中等部組でもないお前がどうしてアンナ達と親しげなんだよ」


 エドワードは周りに聞こえないような小さな声で言った。


「俺も小さな声で話したほうがいいか?」


 聞くと、エドワードは首を縦に2回振った。


「アンナとは幼馴染なんだ」


「なるほど、そういうことか。……でもクロエとはどうして親しげなんだよ」


「ま、ちょっとな」


「ちぃっ、そんな簡単には教えてくれないか。なにせアンナは学年No.1でクロエはNo.4の実力者だもんな」


「……そうなのか?」


 二人ともめちゃくちゃ強かった……というよりアンナは学年で一番強いらしい。

 頑張ったんだな、アンナ。

 幼馴染として誇らしい。


「なんだ、知らなかったのかよ。だったら多分、今日の入学式は面白いものが観れると思うぜ」


「面白いもの?」


「はーい、皆さん既に集まっているみたいですね。これから入学式を行いますので、会場に移動しますよ」


 教室に教員がやってきて、俺たちは移動することになった。

 エドワードの言う面白いものって一体なんだ?

 教員の後に続いて、入学式の会場に向かう途中で俺は英傑学園内でも見覚えのある道を辿っていることに気付いた。

 そして、エドワードは言った。



「まぁビックリするよな。まさか()()()で入学式が行われるなんてさ」



 そう、案内された場所は以前にクロエと模擬戦をした闘技場だった。

 新入生達は観客席に座り、入学式が始まるのを待つ。

 司会が式の進行をするみたいだ。

 式の始めは学園長の挨拶のようで、闘技場の中央に学園長がやってきた。


 学園長は英傑学園の方針や志などを語り終えると、次は副学園長のイザベラが現れた。


 そして何の問題もなく入学式は進行していく。


「そろそろかな」


 式の途中でアンナは席を立ち上がって、どこかに行ってしまった。


「アンナが行ったってことはそろそろ観れるみたいだぜ」


「例の面白いものか?」


「ああ」


 どうやらアンナと何か関係のあることらしい。

 一体何が始まるっていうんだ?


「これより交流戦を行います。代表者のアンナさん、クルトさん、入場してください」


 アンナとクルトだって?

 交流戦ってことはつまり二人が戦うのか?


「交流戦は毎年恒例の行事らしいんだ。なんでも中等部組が高等部組を下に見ることが多いらしくてな。その対策の一つが交流戦ってわけさ」


「代表者は何を基準に選んでるんだ?」


「そりゃもちろん実力だろ。高等部組のほうは入学試験の成績だな。今年はあのクルトって奴が首席だったみたいだ」


 ……さすがクルトだな。


「見ろよ、二人とも入場してきたぜ」


 観客席から闘技場に視線を送ると、アンナとクルトが向かい合わせに立っていた。


「どっちが勝つと思う?」


「アンナだな。アイツは1年の途中から急に強くなりやがった。もしかしたらお前も知ってるんじゃないか? 英傑学園中等部の生徒が単独でマンティコアを倒したって話。あれ、アンナだぜ」


「そ、そうだったのか」


 たしかあの記事は名前が公表されていなかったはず。

 だから俺は今初めて知ったようなリアクションをとった。


「それまでは俺が学年で一番強かったのになぁ。生死の境を切り抜けたときの経験値ってのはとんでもないものなんだろう」


「今は何番目に強いんだ?」


「2番目だな」


「エドワード、お前そんなに強かったのか」


「へへっ、まあな。でも友達いねーからよ、俺の才能を当てられたら友達になってやるよ」


 エドワードはとてもフレンドリーな奴なのに友達がいないとは少し信じられなかった。


「魔法使い系統の才能じゃないか?」


「ほぉ、どうしてそう思ったんだ?」


「単純だよ。剣士系統の次に多いのは魔法使い系統だからな」


「つまんねー理由だなぁ。ま、いいけどよ。部分的に当てられたから友達の友達ぐらいにはなってやるよ」


「それ意味違うだろ」


「ははっ、細かいことは気にするなよ〜。ちなみに俺の才能は【魔道師】な」


【魔道師】は魔法使いの才能の中でもトップクラスに優れたものだ。

 よく【賢者】と比較される才能でもある。


 そんなエドワードがクルトの戦いぶりを見て何を思うのか。


 アンナとクルト、どちらが強いのか。


 確かに、色々と興味深いものが観られそうだな。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告のやり方が分からなかったのでこちらにmm 「クラスは全部で4つあり、クラスA、クラスB、クラスC、クラスD、と数字で分けられていた。」 って書いてありますが、数字で別れてな…
[一言] クラスは全部で4つあり、クラスA、クラスB、クラスC、クラスD、と数字で分けられていた 数字ならクラス1、クラス2…
[良い点] 面白かったですー!
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