14話 英傑学園の防衛設備
更新再開を喜んでくれる人がいてとても嬉しい。
「あ、リヴェルおかえりー」
「早いのぉ。あれだけの距離をこんな短時間で移動できるとはなビックリじゃ」
「……えーっと、何をお飲みで?」
「おぬしを待っている間、前に貰っていた茶を入れておったのじゃ。安心せい、おぬしの分もちゃんとあるからのぉ」
机の上には確かに俺の分の茶が用意されていた。
この学園長、どんだけフレンドリーなんだ……。
「おっと、忘れんうちにこれも渡しておかんとな」
学園長は棚の引き出しを開けて、カードを取り出した。
「これは?」
「学園関係者の証じゃ。入学するまでの間はこれを門番に見せれば、学園内に入ることができる。頻繁に来られても困るのじゃが、急ぎの用などがあれば会えるようにしておくに越したことはないと思ってのぉ。ま、おぬしならこんなものを渡さんでも入り込めそうなもんじゃが」
「おじいちゃん、さすがのリヴェルでもそれは難しいと思う」
「そうかのぉ?」
疑うような視線が4人から突き刺さる。
……英傑学園は確かに防衛設備がしっかりしている。
結界魔法に門番、警備員の存在。
そして学園内には多くの魔力の痕跡が見られた。
門では、関係者、部外者、を識別しているのだろう。
部外者として学園内に入れば、あちこちに仕掛けられた魔法が発動する──。
クロエが難しいというのも納得の防衛設備だ。
「多分無理ですね。学園長もそれが分かっているから、これを渡してくれたんでしょう?」
「ほぉ~、言ってみるもんじゃわい。おぬし、この学園の防衛設備がどんなものか既に見破っておるな」
……しまった。
そういうことだったのか。
「こんな学生が現れるとはワシも驚きじゃ、ほっほっほ」
……この学園長には隠し事をするのは中々骨が折れそうだ。
「いやー、アンナがあれだけ褒めてたあのリヴェル君でも流石に見破れてないんじゃない?」
「ちょ、ちょっとシエラ!? 何を言い出すの!?」
アンナは頬を染めながら、大きな声を出した。
「あらあら可愛い反応しちゃって~。実はリヴェルくんアンナね──もごもごっ」
シエラの口がアンナの手で塞がれた。
これでは何を言ってるのかさっぱり分からない。
「き、気にしないで! あはは!」
「あ、ああ……」
「ぷはっ! もう分かったってば! もともと何も言うつもりないから安心しなさいっての。とりあえず、リヴェル君は見破ったって言うなら学園の防衛設備がどんなものか言ってみて」
アンナから解放されたシエラは俺に挑発するように言う。
「別に見破ったなんて一度も言ってないが……」
「でも学園長は見破ったって言ってるよ?」
「見破っておるじゃろ?」
「……まぁ、ある程度は」
「それなら言ってみて。当たってたらさっき言おうとしてたこと言ってあげるから」
「もうシエラっ!」
「じょ、冗談だってば! でもアンナもリヴェル君が本当に見破ってるか気になるでしょ?」
「んー、リヴェルはあんまり嘘つかないから本当じゃない?」
「……まったく、これが幼馴染というやつね。ね、クロエさんは気になるでしょ?」
クロエはコクコク、と首を縦に振った。
「だよねだよね!」
そしてクロエとシエラは俺に期待の眼差し向けた。
「……やれやれ。そうだな……まずは各所にある門の仕掛けだな。門の入り口に微細な魔力のラインが張り巡らされていた。術式が施されているのは門の柱だな。それで部外者と関係者を識別しているんだろう。で、部外者には学園内の至るところに仕掛けられている魔法でやられる……そんなところか」
言い終えると、クロエとシエラは驚いた表情をした。
「えー!? なんで分かるの? 普通は見えないのに!」
「見えたからとしか言えないな……」
「……リヴェル、本当に何者? 英傑学園内でもそれを知らずに見破れそうな人は少ない……」
「だから──ただの努力家だよ」
「努力で到達できるレベルを遥かに超えている気がするんだけど……」
ごもっともな言い分だ。
ユニークスキル《英知》があったからこそ、ここまで効率の良い努力が出来た。
ただの努力家と言うのは、自分でも違っていると自覚しているが……まぁこう言うしかあるまい。
「ほっほっほ、リヴェルにも何かしらの事情があるのじゃろう。あまり踏み込んだことを聞いて困らせてはいかんのぉ」
「……そうだけど」
クロエは、納得しきれないと言わんばかりの表情だ。
「私もすごく、すご~~く気になるけど、実力の秘密のことなんて弱点を他人に教えるみたいなものだしね。我慢することにするわ」
「……そうね。私もこれ以上は聞かないわ」
「ははは……助かる」
俺はごまかすように笑った。