第6話 縛り
そんなこんなで結局、しりとりをすることになった。
ただし、
「なんか縛りつけようぜー」
羽田の提案である、悪くない提案なのだが、
「いーよー」、と戸張。
「オーケー」、と竜真。
「ええよー」、と穴戸…じゃない宍戸。
問題は何をテーマにするかである。
「何がええ?」
羽田が聞くと、
「あんまり頭痛くならん奴」、と戸張。
「みんな共通でできる奴な」、と竜真。
「それって頭痛くなりそう」、と穴戸もとい宍戸。
みんな共通かぁ…と考えること3秒。
「アニメ・マンガ・ラノベで。」
「いーよー」、と戸張。
「オーケー」、と竜真。
「きっつ!」、と穴戸。
マジかよ。キツイんかー。じゃあしょうがない。
「3対1で続行で」
「「よし!」」
「うわマジか」
ちなみにこの時宍戸は、まともに見たアニメ、ラノベの類が、某小学生探偵(あれ中学生だっけ?)が死神呼ばわりされてる作品だったため、宍戸においては即座に縛りが撤回され、普通のしりとりになったことは言うまでもない…こともないかもしれない。
そんなこんなを入学式の翌日、登校3日目、その上中心の席の一番前、そんなところでやっていたわけで、そんなところでやっていたということは、つまり人目を引くわけで。後日、クレイジー曰く
「あいつら何やってんだ」
ってなってたらしい。たしかに。
そんな朝のクソみたいに元気な遊びの時間が終わったのは、やはりいつものチャイムと。
やはりいつも通りに、最上がやってきたからだった。
「はい、みなさんおはよう。とりあえず、全員いるね?」
長々しく出席取ります!とかやらないうちの最上ちゃん。流石だね。
「さて、とりあえずは、だけど。今日は学校の、福島への合宿のガイダンスを行うのと、今ある部活動の説明をする説明会の予定だよ。」
…情報量が多いな。
とりあえず簡単に。うちの高校、吉谷高校では一年の時に入学した後の簡単なガイダンスや親睦を深める意味を込めて合宿をする…らしい。というか、そんなもん金の無駄遣いじゃ、とか思ってしまうけど。まぁ意味はあるから、まだこの制度が存在している、のだと信じたい。
加えて、部活動説明について。うちの高校は一応文武両道をうたっている。正直、文のほうも武のほうも半端者...っていうイメージしかないが。まぁきっと、一部の奴らは相当に怪物じみてるんだと思う。知らんけど。
「という言うわけだから、廊下に並ぶまで適当に時間つぶしといてねー」
この丸投げっぷりである。こうなるとやることはもう決まってくる。発言者は当然冬樹。
「しりとりや(ry」
また始まる謎のしりとり大会。今回の縛りは?
「無しで行こう」
速攻宍戸が一言。相当苦渋を強いられたのだろう。学びやがった。
「しゃーねーなー」
あっさり認める戸張。頷き同意する竜真。
「3人の賛成か。しょうがない。」
そんなこんなで始まるしりとり。本当にはたから見たら何なんだとなること間違いなし。まぁ、時間つぶしは何とかなったからオーケーってことで。
と、適度に時がたち。結構リズミカル且つハイテンポに進んでいった頃。
「うし。んじゃ並ぶか」
最上ちゃんがさらっと終了の合図をかける。
「負けとかなかったな」
「まぁ時間がな」
「今回は何とかなった」
「さすがに何とかならなかったらやばいやろ」
と戸冬穴竜の順に口々に言いながら、廊下に並んでいく。
そんなこんな友人(?)を獲得し、廊下に並びながら冬樹は考える。
(まぁまずは、これで良し。だけど、後ろの席のやつらとか仲良くなりてえもんだな)
どうせ最終的には仲良くなるにも拘わらず、考えだす。
(まず、くそつまんねえ害ダンスを聞くふりして真面目っぽくふるまうだろ?)
発想がクズなうえ、害呼ばわりである。
(ってことは、部活動説明会がチャンスってとこか)
何のチャンスだ。真面目とは遠いぞ。
考え出すとこうなる。目的の達成のために今までのこととか平気で犠牲にし始めるあたりこいつあほなのか優秀なのかわからない。後者だと嬉しい。どうせ前者だが。
そんなわけで、害ダンスは始まっていく。