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第5話 お前は一体どこへ行く。

 かの男は、どこへ行く。勿論、学校へだ。

 かの男は、なにをする。勿論、勉強しに。

 かの男は、どこにいる。勿論、わからん。


 入学式の翌日。まだ、授業は始まらぬ。この日は、学校のガイダンスだったり、部活動の説明、入学歓迎、まぁそこらへんである。存外普通だが、流石にここらへんはまだサボるわけにはいかない。というか、この羽田という男、ズル休みは大体二桁行かないほど。公認が一度に、勝手にしたのが五、六度ほど。ここのところはズル休みをする癖は、すっかり失せて、加えてまだ青春に期待を持っている時期である。行くつもり満々ある。というか、ズル休みするという思考がない。

 いつものように朝食を食べ、いつものようにトイレへ行き、と。日頃の朝の行動をこなしつつ、学校へ向かう。ただ、違ったのは。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 前日に、自転車についての説明は受けていた。登校し、どこに自転車を止めればいいかも、まぁそれに合わせて、交通ルールの口うるさいお話も。

 だがしかし、この男。方向音痴である。

 この男には逸話がある。中学3年の時の話だ。京都に修学旅行で向かったのだ。この時は成績的にもそんな悪い奴でもないし、人付き合いもいい。変人でこそあるのだが。しかし、クラスでは中心人物でこそなかったが、決してハブられるタイプではなかった。…2年の時はいじめにあったが。

 まぁそんな小さな話は置いておき、修学旅行に行くとなる。班を組む。リーダー役は面倒なのでやらないとして、ナビ役は重要である。まぁまぁ仕事こそあるが、結構楽しい…仕事と本人は思っていた。

 だがしかし、この男の本質は、方向音痴である。

 迷子になったのではない。はなっから、迷子になることを想定できぬ程、愚かな人の集まった班ではなかった。時間の空白(マージン)は十二分、いやもはや十五分あったとすら言っていい。だがこの男は迷子にならなかった。しかし方向は真逆である。

 一般的には迷子というだろうが、迷ってはいない。どこに進んだかは理解している。だが。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()

 地図ではこう。と考えても、現実に進んだ方向は真逆である。なんなら最後に頼ったのは公共交通機関と、そこいらの人、住人だった。

 この男の方向音痴っぷりは、半端ではなかった。

 羽田が住んでいる結ノ上(ゆいのかみ)市、ここの隣の市そこが谷間市である。

 ...一応言っておこう。結ノ上(けつのうえ)ではない。結ノ上(ゆいのかみ)である。絶対にクレイジーはいじってくれる。信じてる。

 それはさておき、この男は、結ノ上市を出て谷間市へ向かっていた。そこまではいい。だが、自転車できたことがないため、距離感をいまいち把握してはいない。橋を越えて、隣の市へ行って位の感覚はある。

 しかしそこからが問題である。

「たーぶん、もっとこっちの方か」

 かなり進む。しかしまだまだ見えてこない。

「あれ?進みすぎたかな?」

 少し戻る。だがまだまだ見えてこない。

「あー、やっぱ進みすぎてなかったのかぁ」

 最初に進んでいた方向へ向かう。それでも、まだまだ見えてこない。

「ん?もしかしてこっちじゃない?」

 ようやく気付く。それもそのはずだ。なぜならば、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「・・・」

 結ノ上市と谷間市をつなぐ橋を越え、左に曲がり、もういいだろうというほど進んだ。だが、それではただ左に行っただけで、もう少し、そのまま真っすぐ進んでいく必要があったのだ。

 それに気づいたのは、緊急時以外使用を禁止されているスマートフォンを使って、時間を確認し、そののちにグーグルマップで現在位置と目的地を調べた時だった。そしてその時点で、

 ()()()()()()()3()0()()()()()()()()()()

 まぁ、あほかと思うほど家を出た時間が早くなければ、きっと、遅刻は確定していたのだろう。

 結論から言えば到着した時間は、予定時刻の2倍ちょい。45分かかった。

 サッカーの前半終わるほどかけてようやく、吉谷高校についた。当然のごとく、精神が疲労してて、心の底から、

(もう二度と、道間違えねえ)

と、心から誓った。

 そんなこんな色々あって教室に戻る。


「おー、おはよー」

 戸張が朝から、無駄に元気な挨拶をかましてくる。正直、鬱陶しいほどに。こと、今は。

「おう...おはよう...」

「どうした、元気ないな?」

「なんかあったのか?」

 俺が入ってくるまで、戸張といろんな話をしていたであろう人物が話しかけてくる。

(確か…こいつは…)

「穴戸...だっけ?まぁ、いろいろあってだな」

 わかっててネタをかます。そもそもア行のやつ右斜め前にいねぇし。

「宍戸、な。」

「知ってる。俺は羽田 冬樹。下の名前は?」

宍戸 政宗(ししどまさむね)だよ。よろしく。」

 軽い自己紹介をした後、自身の隣に座り、穴戸の下りで笑いかけてた隣の男、親切な男に話しかけてみることにした。

「んでー、おたくは?お名前伺いなおしてもよろし?」

「え?」

「いやー昨日生徒手帳の完成品いただいたはいいんだけど...名前伺ってなかったなって」

「え、あーうん。そういやそうだったね。柴咲 竜真(しばさき りょうま)です。よろしく。」

「改めまして、羽田冬樹です。よろしく。」

「戸張進也です。よろっしゃーす。」

「え?宍戸政宗です」

「「「それはさっき聞いた」」」

「だろうね!」

 そんなほのぼの(?)自己紹介(笑)を行って、さてこれからどうしようか、と。ふと時計を見上げる。ついた時間は確か8時15分ほど、そこから10分ほどたって、8時25分になろうかとしていた。

「しりとりでもするか」

 何気なしに提案する羽田、食いつく戸張、驚く宍戸、苦笑する竜真。

 自己紹介からあっさりとしりとりになる。あっさりラノベ縛りしたりして宍戸君をいじめたりわちゃわちゃして、のんびりじかんを過ごし、また一日が始まるのだった。









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