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05 転生悪役令嬢のはじまり


「夢じゃ……ないわ……」


窓に映る自分を見て苦笑いが出た。この深紫の瞳、ふわふわのストロベリーブロンズ。このお姿は、幼いけれど間違いなくゲオルク様。歳はきっと、私とまだ婚約する前だわ。私は過去に戻ったの?それともこれは別の世界?私がゲオルク様だとしたらこの世界のカメリアはどこに?多くの疑問で頭がはち切れそう。高熱の頭痛と相まって、耐えきれずにベッドに沈んだ。


死後の世界で他人になるなんて話、どのおとぎ話にも無かったわ。幸いなのが、私が知識を持ったままだということ。もし私が生きていた世界と同じならば、同じ出来事が起こるはず。きっと、この世界のカメリアにも会える。


「それまでは……私はゲオルク様として過ごさなければいけないのね」


令嬢の言葉遣いもやめなければ。記憶の中のゲオルク様を、私の知るゲオルク様を演じなければ。カメリアに会えば、何かこの身体のことが分かるかもしれない。とにかく今は寝て休まなければ、この体調では侍従と話すこともままならない。ゆっくりと瞼を閉じると、ぷつりと私の意識は途切れた。





「殿下、お体は?」

「問題ない。父上は?」

「陛下は政務の最中でございます」

「そうか、では報告だけしておいてくれ」


陛下のことを父上と呼ぶのは気がひける。血縁でいえば叔父だったが、それでも身分という壁はある。カメリアとゲオルクが婚姻すれば義父上とはお呼びできるが、まさか本当に息子になるとは思わなかった。


ゲオルク様……、いえ、もうこの世界では自身がゲオルクなのだから様はもう要らないか。ゲオルクの部屋は簡素で、あまり子供らしくない。机の上に積んである本や問題集は、前世でカメリアがゲオルクと婚約してから学び始めた内容だ。壁には鍛練用の、身の丈に合わせた短めの剣が掛けられている。令嬢の時に学んだ知識は無駄にはならないが、剣術については全く分からない。ずる賢いやりとりばかりのお茶会のマナーや、ドレスや宝石の選び方、美しい作法はこの身体に必要ではない。


自分自身でも、大ごとに驚かなかったのが不思議だ。きっと、高熱でうなされていて意識が朦朧としていたせいもあるだろう。たがそれ以上に、意識がはっきりすると共に、この身体に私の魂が馴染んでいくような感覚を得た。従兄妹として血が繋がっているからなのか、理由は分からない。


何の因果か、罰か、奇跡か、神の気まぐれか。違う肉体で人生をやり直す事が出来る。この身体ならば、ゲオルク王子ならば、嫌という程この国に尽くせる。カメリアが果たせなかった悲願を、ゲオルクでならば成せるかもしれない。朝露のような期待でも、私はそれに懸けよう。



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