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19 転生令嬢は愚痴をこぼす


「お嬢様、キューネル家から手紙が来ています」

「お断りよ!」


キューネル公爵家。その名前を聞いただけでカメリアはどっと疲れを感じ、手紙そのものを拒絶した。


「どうせお茶会だわ。みんなルークの誕生パーティーの準備で忙しいこの時期に呑気にお茶会をしましょうなんて手紙を寄越してくるのがキューネルの双子なの!」


前世で寄り添ってくれる友と呼べる存在はほぼいなかったものの、カメリアにも社交界で知り合いくらいはいる。それが、キューネル公爵家の双子の兄妹だった。どちらも見目麗しく、人気はあったがその性格の難しさから変人扱いを受けており、前世のゲオルクは幼い頃から苦労をかけられていたカメリアにひどく同情をしていた。最も、アンリにかまけてからはそんなカメリアの姿など眼中になかったのだが。


カメリアのヴィンラント家と並び四大公爵家の一つであるキューネル家のレリィとリリィ。今世でも面倒を避けるためカメリアは二人となるべく距離を取っていた。しかし四大公の子息子女である以上、嫌でも腐れ縁の運命からは逃れられない。前世のカメリアにキューネルの双子の扱いを聞いておけば良かったと激しく後悔した。


「ふふ、そう仰っても付き合いは断たないじゃないですか」

「キューネル家を敵に回す怖さは、コリウスがよぉく知ってるんじゃなくって?」

「ゴホン、」


コリウスは誤魔化すように咳をすると、気を取り直してカメリアの髪を梳く。


「水のキューネル、情報を仕入れるのも役割ですよ」

「……わかってるわ」


水の国に一番近いキューネル領では、海の国ペルネティアから流れる運河との交易で栄え、商人を介して様々な情報も流れる。国中のあらゆる噂を把握してるであろうことから名付けられたのが、〝水のキューネル〟だ。社交界の流行を掴むにはキューネル家の者との親交は必須とも言える。


前世ではカメリア亡き後、キューネル家のリリィはペルネティアの宝飾品を欲したアンリの思惑によりペルネティア王家へ嫁いだ。間税を負担させられたキューネル領は貧困化が進みペルネティアが取り立てとして侵攻。領主レリィはツィーゲルに見切りをつけ、ペルネティア国へ降伏した。だがそこ侵攻こそがキューネルの双子の策であり、侵攻による死者はいなかったという。


「それにしても面倒だわ……。あの双子、延々と喋り続けるんだもの」

「誕生パーティが終わったら、次のお茶会ではお揃いのドレスを着ましょう、 と書いてありますよ」

「はぁ〜〜、どこに主人宛の手紙を開ける従者がいるのよ」

「私は代理として返事を書く役目も担っていますので。そう命令したのはお嬢様です」


いつの間にか、髪はきれいにまとめられておりコリウスの手際の良さに感心したカメリアは、ゆっくり立ち上がると衣装メイドの持つ薄いイブニングドレスに袖を通す。今日は、待ちに待ったマダム•ペチュニアによる採寸の日だ。


「素敵なドレスを作ってもらって、ルークを驚かせてやるんだから!」

「双子様へのお返事は?」

「誕生パーティーで新作のドレスを見せてあげる、とお願い」


何かを企んでいるようなカメリアの笑顔に、コリウスは眉間をぐりぐりとつまんだ。


(見た目通りお淑やかにしていただきたいものです……)


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