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13 転生王子の昔話

更新頻度が低くてすみません


カメリアの妃教育の後には、二人だけの時間が作られる。この時間だけは、部屋の中は本当に二人きりで、メイドや騎士の立ち入りは、ゲオルクの許可や非常時のベルが鳴らされるまでは許されない。


「今日は……昔話をしてもよろしくて?」

「今は二人きりだから、無理な口調で話さなくてもいいのに」

「もうすっかり慣れてしまいまして」

「……僕もだ」







小さい頃、好奇心のままに城内を探索したことがある。執務室や、その他、業務に関わる部屋には勿論入ることはできなかったが、書斎や物置、来賓用のサロンや控え室と……あちこちの部屋をいたずらに覗いていたんだ。そして、使われていないと思っていた部屋にたまたま掃除のメイドが入っていくのを見て、自分もその部屋に飛び込んだ。不思議な香りのする、綺麗な部屋だった。部屋の持ち主がこの後ふらりと戻ってくるかのように、そのままを維持された部屋だと感じた。そして、部屋の壁にかかっている少女の肖像に、しばらく目を奪われた。


『あぁ殿下!勝手に城を探索してはいけません!その御身にもしも何かあれば……』

『……なぁ、これは誰だ』


指を指して尋ねると、メイドは頭を下げて答えてくれた。


『この御方……。いえ、この女性は……殿下の父上であるフィラム王の実の妹君でございます』

『つまり、私の叔母なのか』


綺麗だ。肖像は大体、多少より良く描かれているものだと分かっていても、部屋の雰囲気と相まってとてつもなく綺麗な人なのだと肌で感じた。叔母だと言われても信じられなかった。体格の良い父とは全然似ていない線の細さ、兄妹だというのに父と違う髪の色に、とてつもなく惹かれた。


『先王陛下は、アメリア様を大変寵愛していました』

『アメリア……?』

『王位継承権は無く、臣籍降下されて今はヴィンラント公爵夫人ですわ』


さぁもう部屋を出ましょう、というメイドの声は一切耳には入らなかった。きっと数分だったが、とてつもなく長い時間、肖像画の前から動くことが出来なかった覚えがある。それからしばらくの間は、まるで何もかもが上の空で、何があったのかと母上に心配をされた。アメリア様のことを話したら、母上は『今はまだ会えません。が、あなたには婚約者がいることを話さなければいけませんね……』と言われ、アメリアの娘のカメリアが、自分の将来の伴侶だと決められていることを知った。







「肖像画に初恋、なんて可笑しいでしょう?」

「実の叔母の、若き姿が初恋ですか……」

「前世でカメリアに初めて会った時は、それはびっくりしました。少し違いはあれど、アメリア様にそっくりでしたもの」


中身は全然違いますが、と付け加えるとゲオルクはくすくすと笑った。前世での自分は、高潔な令嬢であれと父親に似て育ったのだ。天真爛漫な母とは真逆である。


「……亡くすのはあまりにも惜しい」

「アメリア様は……、それは国民に愛され、社交界では羨望の的で、その気になれば他国に嫁いで実権を握れる程の頭の良さもある」


なぜその部分を隠しているのかは分からないが、前世の母に対しずっと違和感を抱いていたゲオルクはぽつりと告げた。


「メリー」

「はい、何でしょう」

「アメリア様の死ぬ姿は、もう見たくない。だから、僕がどうにかしてみせるよ」

「どうにか……?あの原因不明の病を?どうやって!」


摑みかかるような勢いで、カメリアはゲオルクに詰め寄った。ゲオルクは困った様に微笑むと、「もう時間だ」と言ってカメリアを部屋から無理やり追い出した。



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