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中年現職についての愚痴を吐く(かなり見苦しい)

五月に入り、世間は10連休だ何だと浮かれていた頃、私はこの連休を利用して転職先を決めようと思っていた。ありがたいことに勤め先でも10連休となり(前後に仕事のしわ寄せがあったが)、私の精神状態も少なからず落ち着き、転職に関しても冷静な判断が下せるようになるはずだった。


 だったのだが、私の目論見は結果的に外れた。


 連休初日に入れたゴルフの予定が悪かったのか、それとも日ごろの疲れが一気に出たためなのか、翌日の連休二日目から体調を崩し、四日目あたりには口唇ヘルペスを発症し、連休のほとんど帰省した実家の布団の上で過ごす結果となった。


 転職サイトなど見る気にもなれず、かといって気晴らしに何をするわけでもなく、ただ悶々とした気持ちを抱えたまま家族の世話になっただけだった。


 布団の上でほぼほぼ過ごした10連休はあっという間に終わり、気づけば憂鬱な出勤日になっていた。実家での養生のおかげで口唇ヘルペスは治まったものの、仕事に対する憂鬱は増すばかりだった。


 何がそんなに憂鬱なのだろう。


 一つ、肉体的苦痛。三十路を越えて足腰にガタがきている。常に鈍痛が膝を襲い、定時時刻を過ぎるころには何もする気になれず、残業時間になるころには歩行がぎこちなく足の指までもが痛くなっている。


 二つ、人間関係の悪化。グループ内での付き合いに嫌気がさしている。グループ内でのリーダー的な立ち位置にはいるが、役職などなくただの平社員。なのに自分の職務を越えた部分でグループ内のメンバーから文句とも罵倒とも思われることを言われ続けなければならない。

 組立工程内での設備の異常や、供給されてくる部品の異常に通常の業務をしながらどうやって対応したらよいというのだ。私の能力不足もあるとは思うが、組立ラインが動いている間の部品運搬やら製品運搬やら、生産計画の作成やらで休憩時間さえ削っているのに、その上稼働中の設備の異常やら、前工程からの部品の異状に、担当部署への連絡と、報告書の作成以上に何ができるというのさ。もう嫌だ。何でもかんでも俺に突っかかってこないでくれ、こっちはこっちでいっぱいいっぱいだ。という事である。さらにそのいっぱいいっぱいさが隠し切れなくなってくると、仕事が私の方が早く終わっても、同僚のフォローになんて手が回らなくなり、結果同僚からは「なんやねんあいつ」と思われているようである。わかってください、いっぱいいっぱいは、いっぱいいっぱいなんです。



 三つ、将来への展望の無さ。他部署の同年代のキャリアを見ると私の年代になると大抵昇進をしている。同じ製造現場の部署でも私より若い社員がデスクワークに遷り、仕事中にコーヒーを飲みながら談笑している姿を見ると、休み時間さえあくせく働く自分が惨めに思えてくる。自分の今までの成果が何もないということはわかる。1年目で退職しようとした人間にましな仕事を回す気になれないのもわかる。だけども何か釈然としない。私の前の担当者が鬱になり、今の配置になったのだが、私が鬱になるまで異動はないという事だろうか、というか辞めさせたいのか変に勘ぐってしまう。それに今の部署で昇進したいとも思わない。係長の姿を見るとはっきり言って悲惨である。上からの圧力に耐えながら日々原価低減をめざして試行錯誤しているなかで、明らかに間接業務だけ増えて効果が薄いような指示を、上からのお達しとして実行している様を見ると、中間管理職の悲哀をまざまざと見せつけられているようだ。


 四つ、と数えてよいものかどうか、社内恋愛の失敗。これを言うと何とも面はゆいのだが、私は二十代半ばで社内の女性に恋をして、そして破れている。お互い大人なので表面上は挨拶など交わしはするが、私の方は気が気ではない。彼女が他の男と楽し気に話している姿を見ると、あれが新しい彼氏かと嫉妬の炎に胸焦がし、そしてなぜ告白などしたのかと自責の念に冷や水をかぶせられる。この器の小ささの再確認作業を数年繰り返せば、卑屈さを重ねに重ね、男として終わっていると周囲から笑われているような気さえしてくる。精神薄弱甚だしい。


 以上がざっと思い浮かんだ憂鬱の内容である。


 内容を見ると、「何だそんなことか」「よくあることさ」「思い込みがひどい」「自業自得でしょ」「ちょっと考えれば対処のしようなんていくらでも」なんて言われそうであるが、それができないのが今の私である。現状に耐えることはできる。今までは出来てきた。しかしこれからが不安である。今の職場を10年近く過ごしたが、中の良かった後輩達は退職し、動きの悪くなってきた先輩は営業かカスタマーセンターに回され転勤していった。 私はどちらになるのか不安で仕方ない。不安なのだ。


 そして何かしたい仕事があるわけではないけれど、その場から逃げたいばかりに転職したいのだ。


 エクソダスエジプトなのだ。


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