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第一話 呼び出された子供達



 淡い虹色のゆらめく空、床は真っ白なわたの様なもので、辺りには金の植物が所々生えている。

 そんな広々とした空間の奥には、これまたわたの様なものでできた巨大な椅子に座る、うさぎのお面をつけた神。

 

 その前には十数人の白に金の刺繍がされた服の、十代と思われる子供達が横に整列していた。

 子供達の大きさに比べて神はかなり大きい、20倍くらいあるだろう。神は普通の人間の大きさにもなれるが、威厳を保ちたいので子供達の前ではいつもこのサイズである。

 威厳を保ちたい割には可愛いうさぎのお面をつけているのはご愛嬌だ。



 子供達は突然の呼び出しにざわついている。引きこもっていた父から一体何を言われるのか皆気になるのだろう。

 引きこもる前に呼び出された時には、 「 各自修行しておくこと 」とだけ言われ、そのまま放置されていたので言われた通り思い思いの修行を行ってきた。

 ある者は地上で山にこもったり、またある者は他の神に教えを()いに行った。

 中には別の世界で魂の修行を行っていた者もいる。


「 久しいな、私の可愛い子供達よ⋯⋯ 」


 神が口を開くとその場は静かになった。


「 お久しぶりです。父上様、お元気そうで安心致しました 」


 集まった子供達の中で、最も年上の青年が代表で返事を返した。

 神は沢山の子供がおり、子供達は自分が何番目の子供かを把握していなかったが、漠然と自分より上か下かはわかるのだ。この中ではその青年が1番上である。


此度(こたび)呼び出したのは、私が管理するこの世界についての重要な任務を其方(そなた)達に与えるためである 」

「 ⋯⋯任務⋯⋯ですか? 」


再びざわつく子供達。


「 人々の心が荒んでいる⋯⋯ 」

「 はい、父上様が引きこもっておられたので、最終許可が出せず、対策しようにも出来なかったと上の兄や姉が言っていましたが。そのことですか? 」


 普段上の兄や姉から小言を言われている青年は、かなり嫌味っぽく言った。


「 こほんっ、人々の心を癒すため其方らには各地に散らばり “村長” になり “幸せポイント” をあつめてもらう! 」





 エリクはここに集まっている、神の子供達の中で2番目に幼い。見た目は、13歳くらいだが、実年齢は、300歳近い。

 限りなく白に近い白銀の緩く波打った髪は、横だけ肩に少しかかっている。瞳は濃い銀色で、誰が見ても美少年だ。


 だが周りも似たような美形ばかりなので、特別目立ってはいない。右隣にはエリクに似た可愛らしい少女、妹のオリアである。左隣にこれまたエリク良く似ているが、薄青がかった白銀の髪の少年。エリクの兄のウルトである。


 エリクは自分が何番目の子供かは知らないが、自分の前後何人かくらいの順番はわかっている。それは、覚えやすいという理由からである。

 エリクは5人で “あいうえお世代” と呼ばれる子供達の1人だからだ。上からアーク、イリス、ウルト、エリク、オリアである。それぞれの名前の頭文字をとって “あいうえお世代” である。


「 エリク兄様、“ 幸せポイント ” って⋯⋯何か知ってる? 」

「 ⋯⋯知りません。ですが嫌な予感がします 」


 オリアの質問に神妙な面持ちでエリクは答えた。オリアもそれを聞いてゴクリと唾を飲み込み、再び父のほうを見た。


「 さて、今からくじ引きするから並ぶのだ、今日はこの中で1番年少のオリアから引いてもらおう。全員が引き終わるまで開かないように 」


 そういうと、神の目の前に正四角形の箱が現れる。上部中央に人の腕が入りそうな穴が空いている。

 よくあるくじ引き用の箱である。

 オリアが恐る恐る前に出て、くじを引いてくる。中には四つ折りになった紙が入っているようだ。エリクは次に前に出てくじを引きながら、懐かしさを覚えていた。


 エリクは、別の世界でその世界の人としての人生を送るという修行をした。

 地球という星の日本という国で、3度の人生を送った。思ったより、父の引きこもり期間が長かったのだ。1回目は、中小企業のサラリーマンとして、2回目は夫婦で営む定食屋のおばちゃん、3回目はゲーム好きの男子高校生として人生を送った。


 こういうくじ引きは学校での委員決めや席替え、商店街の福引き、最近ではコンビニでいくらか以上お買い上げの時に引けるクーポン券、などで引いた思い出が蘇るのだ。

 エリクがそんな事を考えていたら、ここにいる子供達全員が引き終わったようだ。


「 それでは皆、開くのだ⋯⋯ 」


 父の許可により、子供達が紙を開く。

 エリクの紙には《 ディアロック地方中心部 君なら出来る! 》と書かれていた。


「 でぃあろっくちほう⋯⋯? 」

「 エリク!お前ディアロック地方かよ!! 」


 左隣のウルトが驚いている。心配するような声色である。エリクもつられて不安になってしまう。


「 ウルト兄さんディアロック地方に何があるんですか? 教えてください! 」

「 そういえばお前はこっちで修行してなかったなぁ。ディアロック地方は三大大陸で1番大きな大陸にあって、その大陸には4つの大国が存在してるんだ。その大国の境界線が丁度重なり合う中心部、それがディアロック地方⋯⋯ 」

「 それでそこには一体何があるんですがっ!? 」


「 何かがあるんじゃない⋯⋯何もないんだ⋯⋯ 」


「 ⋯⋯へっ? 」



 兄ウルトの言葉にきょとんとするエリク。その隣で一緒に聞いていたオリアも同じ顔をしていた。


「 ⋯⋯ディアロック地方は境界線の重なり合う場所、戦争の中心地でもあった場所だ。今は草一本生えない不毛の地⋯⋯ 」

「 つまり難易度スペシャルハード、激ヤバ鬼辛口モードという事ですね⋯⋯ 」

「 ⋯⋯そうだ⋯⋯⋯⋯ 」

「 そうなの? 」


 真剣に言葉を交わす兄2人に首を傾げるオリア。

 エリクは父に向かって手をあげて発言の許可を求める。


「 えーと、そこの愛する子よ発言を許可する 」

「 エリクです。この紙に書かれた場所で具体的に何をすればいいのですか? 」


 愛している割に名前を把握していない父にエリクは毅然とした態度で質問をする。


「 “ 村長 ”となって“ 幸せポイント ”をあつめる⋯⋯ 」

「 それは先ほども聞きましたが具体的には何をするのですか? 」


 他の子供達も知りたいのか静かに耳を傾けている。


「 其方らには私の力を少し与えて、その力を使って人々の心を癒し、幸せにしてもらう。人々が幸せを感じるとそれが “ 幸せポイント ” となり其方らの力になる。そしてその力を使ってまた人々を幸せにする。それを行う役職が “ 村長 ” だ! 」

「 どんな力を与えて頂けるのですか? 」


「 無から有を生み出す力、“ 幸せポイント変換能力 ” だ! 」


 ドンドンッパフパフッと、どこからか音がした。神こと子供達の父は、満面の笑みだ。だがうさぎのお面で子供達には見えていないない。


「 自分の考えつくものや知っているものなら、なんでもつくることが出来る。つくれるのは人々の幸せに繋がるものだけだ。但し、他人を不幸にするような幸せは除外する 」

「 別世界のものでもいいんですか? 」

「 つくりだせるものは、つくりだせた時点で良いということだ 。私が許可を出したと思ってもらって構わない。では子供達よ任せたぞ 」


 その言葉を聞いたエリクは、あれもしやイージーモードなのではと思った。


 言いたいことを言った神はポンっとその場から消えてしまう。その場に残される子供達。その子供達もちらほらと自分の紙に書かれていた土地に向かう為、この場から出て行く。

 そして残ったのは、 “ あいうえお世代 ” のみとなった。

 それぞれ自分の任された場所を教え合っている。


「 俺とイリスは別々の大陸だな。お前らは一緒の大陸だな 」


 この中では最年長の濃い銀髪のアークが年下3人を見て少し心配そうに言った。


「 まぁ、こいつらのことは俺に任せてよ 」


 ウルトは自信ありげに胸をたたく。アークは、より心配そうな顔をした。


「 なんだか私も心配になってきました 」


 金髪に薄茶色の瞳の女性、イリスが顎に手を当てて悩ましい表情をしている。


「 ウルト兄さん、僕はかなり頼りにしているので、いざとなったら助けてください 」

「 おうっ!エリクもオリアも俺を頼れ! 」

「 あたしは、いいや!なんか1人の方が上手くやれそうだし! 」



 兄にキラキラした目を向けるエリク。さらに自信に溢れているウルト。気楽に考えているオリア。

 そんな3人を見て溜め息を吐く、兄と姉であった。





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