まったく男は見る目がないな
秋の紅葉が深まりいよいよ気温も三十℃を超えることがなくなった今日この頃。
温かい空気に包まれながら刻々と時間が過ぎていく。
街の移り変わりに想いをはせながら窓辺を見やる。
授業中だというのに先生の声がまるで私に届かない。
つい最近まで忙しかったからだろうか。何ものにも集中できない日々が続いていた。
性格的には忙しい方が良いはずなんだけどダラけるのが嫌いって訳でもない。
自分でも言うのも何だけど困った性分である。
「アナタってホント変わりもんよね」
「アンタにだけは言われたくないけどね」
窓辺から声がする方に振り向く。
声だけではなく顔にまで呆れを表現してくるのは磯山未来だった。
「冗談。わたしの何処が変わりもんよ?」
「わかんない所が大分重症ね。大体話しかけてこないでって言ってたのは何処のどいつよ」
磯山未来は中学の同級生。
中学時代、少しヤンチャだった磯山未来はその事がバレるのが嫌で私に釘を指していた。昔のノリで話し掛けるな…と。
別に私だって仲いいだなんて思ってなかったし話し掛けても必要最低限の会話。いわば業務連絡みたいな会話しかしてないのにそれがまずかったらしい。
修学旅行でも一緒の班になろうとするなど警戒の徹底ぶりは目を見張るものがあった。…っていや別に褒めるこっちゃないんだけど。
「そ、そうだけど…別にいいでしょ。過ぎた話しよ」
「過ぎた話しって言うのは私が言ってあげるセリフだと思うんだけど…」
「…バレてたみたいだから」
「は?」
「こっちで出来た友達にさ…本来の性格っていうか」
「はあ…で、ハブられたからこっち来たの?」
「違うわよっ!」
「いった! 蹴り入れやがったこのバカ!」
おもいっきり机に蹴りを入れる。
それを見ていた男共がドン引きする。
この半年間で作り上げたイメージが駄々下がりなんだけど…それでいいのか磯山よ。
「いいの! もう偽るのはやめたの。こっちのが楽だしね」
「…まあ私はどっちでもいいけど」
中学時代。
ヤンチャだった彼女は同じグループの子たちからハブられ軽いイジメを受けている。
それが元でこっちでは性格を偽って品行方正で可愛らしい女生徒を演じてたんだろうけど結果的に彼女は本来の自分を選んだ。
だからなのだろうか。
男子は怯んでるけど私は今の彼女の方が綺麗に見える。魅力的に見えてしまう。
まったく男は見る目がないな。ウソが無いってだけでこんなにも素敵に見えるのに。
「うん。絶対そっちの方が良い」
「そ、そう…?」
「ええ。前よりずっと可愛い。私も見る目がなかったわ」
「な、何言ってるのよっ!? 教室で変なこと言わないでよもうっ!」
「痛い痛い」
照れながら私の腕叩いてるのは可愛いけどそれで許されると思うなよ? ていうか磯山がいつも一緒にいるメンバーがこっち見て笑ってるけど助けろよおい。
「無駄よ。あの子たちが私を送りだしたんだから」
「何だそのドヤ顔。つーか何よ送りだしたって」
「はあ? アンタさっきの授業なに聞いてたのよ」
すっごい呆れてるけどしょうがないでしょ。こんだけあったかいんだもん。授業内容なんか頭に入って来ないし端から聞く気ないのよ。
「何でドヤ顔なのよ…もうしょうがないから私が教えてあげる」
人差し指をたてながらさも教師風にレクチャーポーズ。
どうせ大したことじゃないだろうと思ってたけど…私は完全に失念していた。
この時期のイベントは何も修学旅行だけではなかった。
「もうすぐ体育祭よ、体育祭。今週中に出るもの決めなくちゃいけないから。一緒に頑張りましょ、如月」
読んで下さりありがとうございます。
また更新します。




