私はコイツに会いたくない
教室の窓際で一番後ろ。
この目立たなくも風通しが良い最高の席が私の現在の定位置である。
私みたいにボッチでなくとも一度はこの席に憧れる人は多いだろう。
授業中に先生に指名されない、夏は涼しい、外の景色で気分転換が図れる。
その理由は様々で千差万別。中には何となく窓際が良いという人もいるだろう。ファミレスに入って理由もなく隅の方の席に着く人が多いように。
ただ、じゃあ私も理由もなくこの席が気に入ってるかといえばそういうわけではない。
私には確固たる理由がある。
…って別に大した理由じゃないんだけど。
昼食時、基本友達のいない私はひとりで食べるのだぬが、やはり圧倒的に目立ってしまうのだ。
入学式、GWと過ぎて今や五月下旬。
人間関係はすでに出来上がっている。
私は別にひとりでも気にしないが、その他が一緒に食べているから目立ってしまうのだ。
女は群れる生き物だし協調性が何より大事。
〝右向け右〟と言われて左を向けば異端児扱い。
簡単に言えば悪目立ちしてるのだ。
これが男だったら悲壮感も無いんだろうけど、女だと尚更にね。
まあ、かと言って周りに合わせて気をつかうのも疲れるし、だからこそ媚びたりは一切しないんだけど…。
なんだろ、なんかこう考えてると自分が人間的におかしいんじゃないかと思えてくるから不思議だ。なんだこれ鬱か? いやそれはないか。
ともあれ、これが私が今の席を気に入ってる理由だ。
至極単純で明快。
分かりやす過ぎて説明の意味を疑うほど。
いや…でもね……
最近ちょっと毛色が変わってきたんだよね…目立ちたくないって言ってんのに。
四限目が終わり昼食の時間がやってくる。
私はチャイムと同時に鞄を手に教室を出ようとする。
何故か?
それこそ答えは単純だ。
「あああーーーー!!! また逃げようとしてる!! いい加減逃げんな!! 如月凛!!!」
ロングの金髪に宝石のような蒼い瞳。
まさに絵に描いたようなハーフの美少女。
「うあー……最っ悪」
私はコイツに会いたくないのだ。