マジ気持ち悪いからやめてよね
修学旅行から十日ほど経った。
レポートやら感想文やら提出を迫られたせいで大して時間が経って無いような気がする。
忙しさは時間を忘れさせてくれる。時間が無いっていうのは嫌な人が多いと思うけど私は違う。
単純に暇じゃなくなるしそれに集中すればいい。
私は目標が明確な方が頑張れる性格らしい。
提出物は面倒くさいって思うことも多々あるけど暇に慣れるほど怖いものもないし私にとっては丁度良かったのだ。
「あーー…やばい…やばいよ…」
まあもちろん、そう思えるのは時間に余裕があるからだが。
私とは対照的に妹は机に突っ伏していた。
あーだかうーだかうめき声が聞こえて来てみればこれである。一人で悩むのは勝手だけどマジ気持ち悪いからやめてよね。
「ひどい! どうしてお姉ちゃんがそんなこというのっ!?」
「お姉ちゃんがって…だって私関係ないもの」
「関係無いって…可愛い妹がこんなに悩んでるのに!」
「悩んでないでしょ。ただ集中力が続かないだけでしょ?」
「うっ…」
「やれば良いのにやらないから結果的に自分を追い込むのよ。テストなんてやればやるほど良い点とれるんだから」
そう。
私が修学旅行の提出物に明け暮れている間、楓はずっとテスト勉強に打ち込んでいたらしい。
帰ってくればすぐ机に向かいご飯を食べたら机に向かう。それプラス毎日うーうー唸ってるからおかしいなとは思ったけどテストが近いのね、納得。
しかもこの時期のテストって来年受験がある楓にとって重要なテストである。もちろん評定にも大きく反映されることだろう。
それは楓も分かってる。
この子は案外プレッシャーに弱いのかもしれない。
「でもさあ楓…。やんないと成績も上がんないよ?」
「そんなの分かってる! でも何か集中出来ないんだもん…」
机に突っ伏しながら抗議の声を上げる楓。ちょっと面白い。
「今詰めてやりすぎなんじゃない? ちょっとは息抜きしなさいよ」
「息抜きっていってもなあ…実際時間もないし余裕もないしね」
「じゃあ私が教えてあげよっか? そしたらサボれないし追い込んであげられるでしょ?」
「いらない。今回はダメ」
「なんでよ」
「…甘えちゃうもん」
「あ? なんだって?」
「なんでもない! もうほっといて!」
「甘えればいいじゃない」
「聞こえてる…だと……?」
驚愕の色をもって返す楓。ちょっと面白い。
「面白いじゃないからっ! 聞こえたんなら聞き返してこないでよ」
「まあそんな怒んないでよ。私だって久しぶりに可愛い妹がみたいじゃない。ほら、最近まで修学旅行でいなかったしレポートが忙しくてかまってあげられなかったしさ」
すれ違いってほどじゃないにしろ会話がなかったのは事実だ。
別にケンカしたわけじゃないけど会話がないのはやっぱ寂しい。
「かまってあげられないっていうのが癪に触るんだけど…」
「じゃあ言い方変えましょうか? かまって欲しいから勉強に付き合わせて下さい」
「…しょうがないなあ」
渋々…といった感じで机から身を起こす。
私は気づかれないように微笑む。
黙々と勉強に打ち込む楓を見てそっと頭を撫でるのだった。
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