お望みなら死体でもいいですが
クツを脱ぐと香蓮さんが家の中へと入って来る。
その迷いのない動作はまるで自分の家だといわんばかりだ。
「ちょっ…何で香蓮さんがっ!?」
思い余って開口一番、文句が口から出てしまう。
早速お姉ちゃんも嫌そうな顔をする。
「しょうがないでしょ付いてきちゃったんだから」
「だからってそんな…一言ぐらい連絡してよ!」
「悪かったって。…あとゴメンついでにもう一人いるんだけど…」
「知ってる。ていうか見えてる」
「は、はじめましてぇ…」
そろ~っと出て来たのはセミロングの女の子。お姉ちゃんと同じ制服で多分同じ学年。
その人に私は見覚えがあった。
「磯山さん…でしたっけ?」
「あれ知ってるの?」
「知ってるっていうか同中でしょ。お姉ちゃんと同学年の」
確か磯山未来って名前だっけ。
しかし妙だな。
中学時代はイケてるグループというかヤンチャ系のグループに属してたはず。少なくともお姉ちゃんとはほとんど接点なんか無かったはずなんだけど。
「さすが楓、その通り接点なんかほとんどないわ。何だったら高校でも無かったんだから」
「じゃあどうして急に?」
「わかんない。私のことが好きなんじゃない?」
「なっ!?」
「ち、違う! 全然違うわよ!! 私はあくまで監視だって言ってるでしょ!誤解を生むようなこと言わないでよっ!」
「………」
「な…なによ妹さん」
「別に何でもないです」
当然、何でもなくないこの烈火のごときキレよう。
怪しい怪しすぎる。
「はあ…もう慣れてるから良いですけどね。で、磯山さんもご飯食べてくんですか?」
「いや、私は如月さ…じゃなかったお姉さんが香蓮さんに余計なこと言わないか見に来ただけなんだけど…」
「あーそういう建て前いいですよ。面倒なんで」
「アナタの妹雑過ぎないっ!? ビックリ何だけど!!?」
「はははっ…まあウチの妹は可愛いけど結構毒舌だから」
笑いながら姉が客を居間へと誘う。
文句も垂れずに付いてくるあたり食べるき満々といったところだろう
はあ…今から二人分追加で作るのか。時間も掛かるし面倒くさいなあ。
「面倒くさいじゃないわよ。どうして私の分がないわけっ!?」
「は? うるさ」
キッチンへ行くと金髪の悪魔がすでに座ってお怒りモード。
私は無言でぶっ叩いた。
「いったあ!? 何てことするのよっ!!?」
「当り前です。自分の言動を省みて下さい」
「は、完璧でしょ? 見た目も含めて」
「その代わり中身が無いですよね。出会った時から」
「あるから! 中身あるからっ!!」
「中身が無い人間はロボットと変わりませんよ? お望みなら死体でもいいですが」
「何か口悪くないっ!? いつにもましてっ!!?」
「ふふっ…」
私は冷蔵庫を開けると食材を取り出してリズムよく裁断する。
時間が掛かると思ったけどこうして揶揄いながらやることにした。
時間つぶしにもなるしそれに…少しだけ楽しかったから。
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