それは残念! 私がいます!!
長かった盗撮騒ぎもようやく終わり一段落。
クラスに戻ると未来に根掘り葉掘り聞かれたけど全部言うのは止めといた。
盗撮する気はあったものの一応は未遂に終わってるし香蓮にも謝ってたしね。
ここで私が事を大きくしない方がいい。逆切れされても困るしね。
「…でもこれはキレても良いわよね?」
誰もいないのを良い事に口に出して毒づく。そうでもしないとやってられない。
「大体なんでアタシが香蓮と一緒にお風呂入んないといけないのよ!」
そう。
香蓮が泣くからちょっと甘やかしたらこれである。お願いだから仕方が無いけど文句が無いって言ったらウソになる。
そりゃさ…私が言い出しっぺだから私が悪いよ? でも一緒にお風呂に入ってとかそんなこと言うとは思わないじゃない。
そんな事を思いつつ風呂場の戸を開ける。
もちろんタオルで前を隠す。
恥ずかしいからとかそんなじゃなくただ単純に騒がれたくないからだ。
誰にだって?
そんなの決まってる。
「きゃーーーーっ!! こんなサービスがあるなら盗撮も悪くないわね」
バカな発言はいつものこと。宝城香蓮である。
絶対コイツが騒ぐから嫌なんだ。
「ちょっと香蓮! 一応アンタのクラスに紛れてお風呂入ってるんだからあんまり騒がないでよ!」
お風呂はクラス単位で時間がふってある。一人ぐらいで文句が出るとは思わないけどチクられたくないから節度ある行動が求められる。
「大丈夫だって。もうみんなにも伝えてあるし、だいいち騒ぐなって言う方が無理な注文よ」
「どこがよ。ただたんにお風呂入るだけでしょ。騒がない何て簡単よ」
「だから無理だって言ってるじゃない。タオル一枚で隠しといて良く言うわ。ホント凛ってエロいわね」
「殺すぞ」
ハアハア言いながらわきわき手を動かす香蓮を牽制しながら私は風呂場を見渡す。
檜で囲われた浴槽や露天風呂、サウナまでが完備されている。
一人でゆっくり入れたら最高なんだろうなあ…。
「それは残念! 私がいます!!」
「本当に残念よ」
「もうそんなこと言っちゃって❤ バカバカ」
「冗談だと思ってる…だと…?」
ぽかぽか胸の辺りを叩いてくる香蓮は何処までも楽しそう。
ちらちら胸を凝視してくるのが鬱陶しいけど相手したら負けである。
とりあえず私は無視すると身体を洗うためにシャワーの前へと移動する。
香蓮も隣に座る。
私は気にせずシャンプーを髪に馴染ませる。目を瞑って髪を洗いながら言った。
「かれーん」
「な、なによ」
「触ったら殺すから」
「ちょっ…ま、まだ触ってないじゃないっ! 何てこというのよ!」
隣からガチャガチャと物を落とす音が聞こえる。
絶対触ろうとしてただろ。
「違うわよ失敬ね。揉みしだこうとしただけよ!」
「なお悪いわバカ」
突っ込みながらシャワーで泡を洗い流す。
眼を開けると何故か香蓮がご立腹だった。
「なぜお前が拗ねるっ!?」
「だ…だって凛、全然触らせてくれないじゃない」
「当り前だ!」
「間違えた。揉ませてくれないじゃない」
「バカなの!? 表現の違いとか関係ないからね!?」
コイツは本当に何を言ってるんだ…。
成績は良い癖に道徳やら羞恥心はどこに行ってしまったんだ。今日はいつにも増して酷い気がする。
「んー…でもそう考えるとはしゃぎ過ぎな気がするわね。何かあった?」
「…別に」
急にもじもじする香蓮。
つーか別にって…お前は大麻女優か。
「茶化さないでっ!」
「じゃあ茶化さないから理由を言いなさいよ」
「……だけよ」
「は? なに?」
「別に理由なんかないわ。私はただ…凛との思い出をつくりたいだけよ」
顔を紅潮させる香蓮。決して熱気のせいではないだろう。
そうか。それが理由か。
確かにまだ思い出という思いでは出来てはいなかったな。
「じゃあ明日からはなるべく二人で行動しよっか?」
ろくに考えもせずにそういってしまう自分は甘いだろうか。
こんな勝手なことをしたらきっと未来に怒られるだろう。
でも…
「一緒に行動してくれるの!? あーもう!! 大好きよ、凛っ!! 本当に嬉しいわ」
満面の笑みで抱き着いてくる香蓮。
でもこれだけ喜んでくれるんだから仕方がないよ。
私は抱き着いてくる香蓮の髪を撫でてやる。と、どさくさに紛れて香蓮が胸を触ってくる。
「えへへ…
「………」
前言撤回。
どうやらコイツに甘い言葉は不要らしい。
この後、香蓮が全力で謝ってくるまで言葉を交わさなかったのは言うまでも無いだろう。
こうして私たちの修学旅行は終わりを迎えるのだった、
読んで下さりありがとうございます。
また更新します。




