百パーセント演技
未来が流れるような金髪の下敷きになってビクともしない。
おーい…大丈夫か未来?
「コイツのことなんてどうでもいいわよ! また浮気してさ…ちょっといい加減にしなさいよね!!」
「出たよ疫病神…」
もはや説明するのも面倒臭い。
ゲンナリするのは当たり前。
宝城香蓮が他クラスから登場である。
「クラスごとでの見学って先生から言われてなかった?」
総勢300名近い人数での集団行動である。
当然、自由に動き回ることなど許されるはずがなく生徒の動向に目を配らないといけないので纏まって移動するのがルールとなっている。
「当然知ってるわ」
「じゃあ何でここに?」
「無視したからに決まってるでしょ? どうしてそんなバカなこと聞くのよ?」
「どうして私がバカになるの?」
ダメだコイツ…。早く何とかしないと…。
「じゃあ…早く何とかしなさいよ……」
よろよろと生まれたての小鹿のように未来が立ち上がる。
当たり前だけどとてもお怒りである。
「あらそんなところに居たの?」
「アンタがタックルかましたのよ! いい加減にしなさいよアンタ!! 早く自分のクラスに帰って!!」
「いやーん❤ 凛たすけてぇー」
「ぐぐぐぐっ…」
恐がる振りをしながら私の腕に抱き着いてくる。
百パーセント演技だと分かるだけに余計に怒りを買ったみたいで、
「アナタもこの腐れ金髪に甘過ぎ。おかしいわよ!」
「私にキレないでよ…ほら香蓮、いい加減離れて。ウチの学校で金髪ってアンタしかいないんだから一番目立つのよ。私まで怒られるじゃない」
「ううぅ~…」
強引に引きはがしに掛かるも今日の香蓮はしつこい。
いつもより諦めが悪い感じだ。
「だってだって! せっかくの修学旅行なのに凛と一緒じゃないとかありえないじゃない!」
「いやいや…普通にありえ――っ!」
そんなことを言いつつ無理矢理引きはがしていると不意にフラッシュが焚かれた。
無論、ここは観光地。
フラッシュは至る所で焚かれている。でも、これは違う。明らかに私たちに向けてのフラッシュだった。
〝やば…っ〟
〝気付かれたんじゃない?〟
〝早く隠れよ!〟
数メートル先から聞こえる話し声。
不自然にも移動方向とは真逆に走る生徒が数名。
「香蓮と未来はここにいて!」
「ちょ…ちょっとなんなのよ!」
その声がどちらの声だったかは分からない。
確認する間もない程に私は全力でその子たちを追いかけていた。
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