あ? 殺すぞ
「……なによもう!」
「いい加減起きなさいよバカ! ついたわよ」
新幹線で移動すること一時間半。
未来に叩かれるように起こされる。気付けば目的地、京都へと到着していた。
急いで荷物を両手に掲げると新幹線を下りる。
改札を抜けるとそこはもう見慣れぬ駅構内。
「っへえ…案外近代的なのね」
京都といえば何処か古い街並みを想像するのは私だけではないだろう。
街全体がゆったりしたイメージといえば分かりやすいだろうか? 少なくとも近代的とはかけ離れた街を想像していた。
それがどうだ。
中央改札口には人、人、人。
八つの広場を用いた駅ビルは国内屈指の広さでイベントスペースも多数用意されている。
古臭さなど微塵もない。
何でも京都駅は明治十年から続いているらしく時代が移り変わると共に進化を遂げて来た。以来、百四十年間その進化を止めることなく今日を迎えているようだ。
「時代のニーズって奴かしらね」
「アンタにしてはまともな意見ね。まあ時代が移り変わっていくなか交通アクセスの大本が明治のままじゃあそれこそ廃れてくんじゃない? 当然かもしれないけど」
「確かにね」
今にしてみれば昔の景観なんかが有難くも懐かしいって思えるけどずっとそのままだったらきっと陸の孤島だろう。
また観光として成り立つのも極一部にそれが残っているのが大きい。ようはバランスが大事なのだ。
「そうそう。だいたい京都なんか国内の観光客が減ってきてて外国人観光客が増えてるみたいだし、それこそ近代化を進めないと町全体が死んでいくわよ」
「……やけに詳しいわね」
「はっ!? はあぁぁ!!? アンタなにバカなこと言ってんのよ! べ、べつに楽しみで観光場所だけじゃなく京都の歴史まで調べたって訳じゃないんだからね!」
「うわぁ…メッチャ楽しみにしてるじゃんこの人…」
頬を染めながらソッポを向く未来にドン引きする。
ぼっちが嫌だってわりにはコイツ案外一人で行動するの大好きだろ。ぼっち極まれり。
「べ、別に好きじゃないわよ! だいたい今回調べたのだって最終的にはアンタと…」
「は? なに、なんだって?」
聞き返そうと未来に近寄る。
と、真横から響いてくる怒号にかき消される。
「凛ッ! 誰よそのアホ面!!」
「あ? 殺すぞ」
未来が瞬時に中学時代の片鱗を見せる。高校では隠すんじゃなかったっけ?
「いや無理でしょ。ホント何なのよコイツ。いきなり絡んでこないでくれる?」
「凛、京都についてさっそく浮気? これはちょっと許せないかも」
「聞いてねーし!」
「あーもう止めてよ…」
まだ駅から出てすらいないのに…。
さい先思いやられる展開に思わず天を仰ぐのだった。
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