ラブレター
私は知っている。自分には才能が無いってことを。
運動神経も並み、記憶力も並み、身体能力も並み。
突出してる所なんて一つもない。
それでも救いがあるとすれば才能が〝無い〟ってことを自分でも理解している事だろうか。
私が勘違いして自分に自惚れていたりしたらきっと努力を怠り何もない自分が生まれていたに違いない。
私は少なくともそう思っている。
だから言われても嬉しくないのだ。
いや、正しくは書かれても―――か。
下駄箱に入っていたラブレター。
人知れず中身を見てみれば『一年の頃から好きだった』だの『完璧なキミが好き』だの書かれていた。
もちろんさ、好きって言われて悪い気はしないよ? でもさ、やっぱりそれは本当の自分じゃないと思うんだ。
ウソを付いてる訳じゃないし外面被ってる訳でもないけど、それでも〝完璧〟って言葉はどうも引っかかる。
だって私は決して万能なんかじゃない。
そういった言葉が似合う人が身近にいるから私は余計にそう思う。
まあ似合うってだけで本人の前でなんか決して言わないし、何だったら別に認めてなんかいないんだけど……。
んー…強いていえばそう〝負けたくない〟って所だろうか。
「おはよう、楓…ってまた貰ってるよ」
「あ、おはよ優」
廊下で立ち止まってると部活仲間の友達に話し掛けられる。そういえば優はお姉ちゃんのこと大好きだったね。私と違って。
「…またそうやって話しそらす。どうすんの、それ?」
「断るよ。当たり前でしょ? 好きでも無い人とは付き合えないもん」
「いやお試しでもいいから付き合ってみれば? 好きになるかも」
「好きにならなかったらどうするの? 無駄に期待させる方が残酷だと思うけど」
「はいはい言い訳おつー。ま、楓はお姉ちゃん大好きだもんね。他の人なんて好きになる余裕ないよね」
「それは優でしょ? 全然好きじゃないから…それにこの前だって遊ぼって言ったら無言でドア閉められたし。もう二度と誘わない」
「また誘うフラグでしょそれ…ラブレターくれた人もその辺を見分けられたら良かったのにね」
「はあ……取り敢えず、帰ったらお姉ちゃん殴っとこ」
「最低だこの妹…」
ひとり戦々恐々とする友人をおいて私はラブレターを鞄の中にしまう。
完璧には程遠い自分にため息を吐きつつ、私は自分のクラスへと入って行った。