ぐやじい‶い‶ぃ‶ぃ‶!!
昼食を終えると二人はショッピングへ出かけたりオシャレな雑貨を見たりとデートを満喫していた。
どこからどう見てもカップルな二人。
カフェで飲み物を買って今は帰りの駅へと向かっている。
きっと今日一日の楽しいデートに余韻に浸りながら。
「ああああああ! 悔しい!!」
「…うるさいぞ」
後ろからただ見ているだけの私たちは完全に不審者だったけどそんな事を気にしているのは今更誰も居ない。
先輩は落ち着き払っているし香蓮さんにいたっては元からお姉ちゃん以外視界に入っていない。
ある意味凄いなと思いつつもそれは私も同じだった。
二人仲睦まじくデートする姿を見て心が全然落ち着かなかった。
だってだって! …お姉ちゃんのことだからデートもただのフリだと思うじゃないか。それがなんだよ楽しそうにしちゃってさ。
っていうか今までのお姉ちゃんだったらデートする前に断るのに。
「はあぁ…」
「溜息吐かないでくれるかしら? 運気が逃げるわ」
「芸人ばりに『ぐやじい‶い‶ぃ‶ぃ‶!!』とか言ってる人に言われたくないです。落ち着いて下さい」
「そんな歯食いしばって言ってないでしょ!? それに落ち着くのはアナタよ。どう見ても調子悪そうじゃない。いや…面白くないって言った方が適切かしら?」
「…ホントに良い性格してますね」
「お褒めの言葉どうも。でもホントに良いの? この流れだと確実に付き合いかねないわよ」
「そういう香蓮さんは良いんですか? お姉ちゃんに彼氏が出来ても」
「前にも言ったでしょ? 泣きもするし傷付きもするって。でも…今だけよ。きっと凛を振り向かせてやるんだから」
「…………」
熱い眼差しに決意を見る。
薄い涙を浮かべてもなおカッコよく私の目に映る。
先送りにしていた答えを急かされるようなこの感覚。
でも…でも…
「おい! 様子が変だぞ。見てみろ」
急に木陰に身を寄せる先輩に引っ張られながら確認すると駅前で二人が向き合ってるのが見えた。
男の人が何か言葉を発している。
一つひとつ選ぶように。
考えながら言葉を紡いでいる。
告白だろう。
そうピンと来たのは私だけじゃなかった。
先輩も香蓮さんも息を呑んで二人を見守っている。
お姉ちゃんは何も言わず静かに聞いていた。
〝……ん?〟
何だろうこの感覚は…
違和感とでも言うのだろうか?
私はここに居るのにここに居ない感覚。
地に足付かないふわふわしたような足先。
現実感の無いこの情景。
〝ああ――そっか、わたし…〟
ようやく分かった。
私の気持ちが。
デートしてるのが嫌だとか楽しそうにしてるのが気にくわないとかそんな事じゃないんだ。
だって…だって私は…
男の唇が止まる。
お姉ちゃんがお返しにと言葉を返す。
そうなる前に…私は…
「ダメエエエエエエエぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「か…楓ッ!!?」
止まれない止まれない止まれない。
地に足が付いていないはずの足先は今日一番のダッシュをみせていた。
すいません。大分遅くなりました。
つづきは零時には書き終えて必ずアップします。
次で終わりです。
よろしくお願いいたします。




