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私の妹(姉)が可愛すぎる!  作者: カオルコ
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オペレーションレッド

約束の時間よりも少しだけ早く着いた。


時間つぶしも限界だった。


待ち合わせ場所に一時間以上早く着いたから駅前を歩いてみたけど一人で見るには限界があった。目的が無いっていうのが一番の理由だろうけどそれでも心ここにあらずといった感じで集中できなかった。


しかしそれも仕方がない。


この世に生れ落ちて十六年。

この方一度もデートなぞというものをしたことが無いのだ。


違う事を考えようとしても無駄。


頭の中がグルグルとデートと言う単語が動き続ける。地球の引力に引かれる月のように巨大な力が作用しているのは気のせいではないだろう。


それだけデートという単語は私自身の心を引きつけた。


だから約束の時間まで家でゆっくりしたかったんだけど…やはり妹は鋭い。きっと服装や態度の違いから違和感を感じ取ったのだろう。


速攻で突っ込まれた時は流石に肝を冷やした。

適当にあしらったから怒ってたけど今からデートなんて言える訳がない。


姉妹といえど恥ずかしい。いや姉妹だからこそ恥ずかしい。


互いに恋愛歴は皆無だから語るには免疫が低すぎる。

にしても一発で見破った妹よ。この服装そんなに変かな…


私は店のショーケースに映った自分をまじまじと見返す。駅前ということも忘れて自分の服装を今一度確認したかった。


今日の服装はインディゴブルーのスキニージーンズとVネックのリブタンクトップ。


肌を露出するのはどうかなとも思ったけどそんなことを気にしている自分が恥ずかしくなっていつも通りで来てしまった。


しかし、うーん…

この服装でデートってどうなんだろ…靴は普通のスニーカーだし。


少なくとも可愛らしいとか女の子っぽいとかそういう雰囲気からは逸脱してるのは分かる。少なくともデートで着てくる服ではないだろう。


…あれ? 

…ってことは


「…アウトじゃん」


くはあああああぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!!!!


なんて恰好で来てしまったんだ私はっ!? もっと考えろよ私!! いくらなんでもポンコツ過ぎる!!


ああー…最悪だ。

完全にやってしまった。


はあ…こういう時に限ってやらかすんだよなあ私って。

今さらだけど経験値の無さが恨めしい。誰かに相談すれば良かった? いやでも相談できるような友達なんていないし…


「慣れないことはするなってことかな……?」


人の波が行き交う中、私は答えの出ない問いに自問自答を繰り返す。


約束の時間まであと二十分を切っていた。


       ――――――――――――――――――――――――――――――――――


茂みに隠れて様子を伺うこと三十分。

私たちの会話はもっぱら姉の服装についてだった。


「今日の凛可愛すぎないっ!?」


「……ああ。気合入ってるな」


二人の見解が一致する。いやその言い方には語弊があるか。だって私の見解も一緒だから。こんなに気合の入った姉を見たのは始めてだった。


誤解無きよう言っておくと姉はズボラであってもバカじゃない。


家にいる時はいざ知らず外に出る時ぐらいはある程度の身だしなみは整えてくる。外面を良くしてるとかではなく、あくまで常識の範囲内として。良い年した女の子が小汚い格好では両親のイメージも崩しかねない。だから最低でも寝ぐせとか服の皴には気をつかっていた。


でも…今日は明らかに違っていた。

服装はもちろん髪の艶だったり爪の手入れ、そして普段は絶対しない化粧までもほどこしている。パッと見でも細部に至るところが全然違う。


…多分だけど、早めに家を出たのは美容院に行ったりしたんだな。


「乗り気じゃないって言ってたのに…気合入りまくりじゃないっ! どういうことっ!?」


案の定香蓮さんが嫉妬の炎で怒り狂っている。


無論のことそれは私も思っていた。


いつもの姉じゃない―――と。


いつもの姉ならこんなに気合も入れない。この前の海だってラフを絵に描いたような恰好だった。それこそお姉ちゃんって感じの格好だ。


…いや待てよ。


今回はただ遊びに行くわけじゃない。

まだ付き合ってはいないとはいえ二人っきりのデートだ。


女の子同士で遊びに行くのとは訳が違う。なればこそ外面を気にするかもしれない。


じゃあ…もしかして……


「アイツ…もしや本気か……?」


愕然とした面持ちで涼先輩。


そう。そうなのだ。


だって断るなら気合も入れない。行く気もない。

私の知ってるお姉ちゃんなら普段通りに顔出してポイだろう。


ということはだ。


まさか…本気で…


「あっ! あの人じゃない? ほら凛に話し掛けてる!」


「ああ…間違いない依頼主だ」


ぼうっと考えてると相手が来たらしい。


どんな人かと見てみれば案外普通の人だった。


良い言い方だと優しそう悪い言い方をすれば地味な人といったところだろうか。


「それは見た目の話しだろ? 中身は本物のサラブレッドだぞ」


「親がお医者さんでしたっけ?」


「そうだ。しかも運動も出来れば頭も良い。まさに非の打ち所がないといったところだ」


「でも頭が良いって言っても私以下でしょ? ()()()()()()()現状を鑑みれば凛を落とすファクターには成り得ないわね」


「お前は黙ってろ」


「なんでよっ!?」


「………」


ギャーギャーギャーギャー。


ホントうるさいなこの人たちは。

尾行してるってこと忘れてるんじゃないかまったく…。


楽しむのは勝手ですけどもう少し静かにじゃれ合って貰えますか? 何だったら付き合ってみたらどうですか?


「冗談はよせ。誰が楽しんどるんだまったく」


「そうよそうよ! 全然楽しんでないしそれって完全にバッドエンド。もしそうなったら結末を放り投げた作者の怠慢だわ。二度と口にしないで」


「………」


フラグですか?


なんて言おうとしたけど口を噤む。この二人に構ってるほど暇じゃない。


お姉ちゃん達が移動を開始したからだ。


「行きましょう二人共。準備は良いですか?」


「ええ」


「おう」


「じゃあ行きます。オペレーションレッド発令です!」


「アナタが一番楽しんでるじゃない」


呆れる香蓮さんを無視しつつ私たちは尾行を開始した。


読んでいただきありがとうございます。


世間はゴールデンウィークですね。最高ですね。

私には関係ないですが笑


また更新します。

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