甘美で刺激的な肉体から繰り出される濃厚なキス
あれはもう夜中も夜中。
あまりの暑さに業を煮やし寝付けるまでテレビでも見よう、何だったらここで寝てしまおうと思ったのが切っ掛けだった。
ソファに寝転びテレビをつけたら学園もののアニメがやっていた。
私は特に惹かれるものなどなかったが見るものもないし見たいものもない。ならば何も考えず、また刺激もないアニメを見ればそのまま夢の中にダイブ出来るんじゃ…なんて考えたのが終わりの始まり。
…そう、それは刺激の塊だったのだ。
穏やかな日常アニメから一変、ストーカー上等、ガチムチ教師が出て来たかと思えばラグビー部員を連れ出して体育倉庫で乱交…ゴッホン…乱暴の嵐。
甘美で刺激的な肉体から繰り出される濃厚なキス。そしてキス。されどキス。もういっちょキス。
『せ、先生っ! もう…これ以上は…』
『はん! なにいってやがる。口では嫌がってるくせにココは良い反応だが?』
『ああ! い…良い!! そこ…良いです先生!!』
「うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ちょっ凛! うるさいわよ」
「はっ! …ゴメンゴメン。またトリップしてたわ」
イカンイカン…昨日のことを思い出してまた意識がぶっ飛んでしまった。いい加減気をつけなきゃ。周囲の視線が痛いし。
「…とりあえず叫んだのはそういった理由。気持ち悪いったらないわ」
何がとりあえずなのかは置いといて。
「同性愛がきついってこと?」
「ん~…同性愛っていうか吐き気してんのはそこじゃないわね」
そういえばどこぞの人類学者が言ってたっけ。同性愛は神をも恐れぬ行為だ、と。
なんでも交配によって紡いできた人類史においてあり得ぬ行為なんだと。アダムとイブを冒瀆する。―――みたいな。
でも、私はそんなこと気にしないしそれこそ人類を冒瀆する行為だと思う。だから同性愛者だからといって非難するつもりは毛頭ない。
強いていえば非難したいのは、そこに行きつくまでの過程である。
思い起こせば何だあの過程は?
倉庫に連れ込んだかと思えば、襲ってチュウして言葉攻め。
ただの犯罪者じゃないか。バカか? 無駄に作画良いし。
まったくとんでもないもの見せやがって。ヤバ…また気持ち悪くなってきた。
「吐かないでよ」
「吐かないわよ。失礼ね。とにかくもう忘れて。私ももう忘れたいから」
吐くのを必死に押さえながら再び弁当を食べる。
BPOに苦情でも言ってやろうかと考えていたその時だった。
「…良かった。否定されなくて」
「………」
これは聞き返した方が良いのでは?
そんな一抹の不安を抱えながら、私の昼休憩は終わりを迎えるのだった




