感情があるが故に冷静な判断など下せない
私、如月凛は結果論が嫌いである。
起こってしまったことに対して『ああすれば良かったのに』とか『こうなる前に何で前もってやっておかないんだ』とか言われるのをもっとも嫌う。
誰にだって過ちはある。冷静な状態で判断できないことだってあるではないか。
人間考え方も違えば性格も違う。感情があるが故に冷静な判断など下せない。
「うわああああああああああああああああああああ!!!」
気付いた時にはすでに遅い。
静寂が包んだ教室は一方的な目線で答えを急かす。
「……すいません寝てました」
平身低頭。
真っ赤になった顔を隠しつつ私は深々と頭を下げた。
「なんで叫んだの?」
「はっ!? なんでアンタが知ってんのっ!!?」
一緒に弁当をつつく少女の開口一番がこれだった。
人形のように染み一つ無い白い肌。優雅になびく絹のように長い金髪。
言わずもがな宝城香蓮だ。
香蓮を問いただすとあっけらかんと言ってきた。
「ただの噂よ。『あの如月凛が弱みを見せた』って」
「どんな噂なのそれ…」
私はおかずを運ぶのを忘れて呆れてしまう。人も気も知らないでよくも勝手な。
にしてもろくでも無い噂が流れてるのは事実らしい。
人の噂も七十五日というがはたして…。
「大丈夫でしょ? そんな長くは噂も続かないわ」
「それこそ人事ね。アンタが知ってるってことは学校中が知ってるって事なのに」
「どうしてよ?」
「どうせ人が話してるのを盗み聞きでもしたんでしょ?」
「っ!?」
「あたかも聞いてないフリしてさ…そうね寝たフリなんか有効かもね」
「なんで知ってるの!?」
私と似たようなツッコミを入れながらゴホゴホとむせる香蓮。
手を当てて咳してくれるかしら? 本気で汚いから。
「うるさいわよ! あ、アナタわたしのストーカーでもしてるんじゃないの!? 的確過ぎるわ」
「さいですか。あー…つーかストーカーとか言うからまた思い出しちゃったじゃん」
口元を拭きながら香蓮が『なんのことよ』と目で訴える。
あれは昨日の夜。
あまりにも寝付けなくて夜中に起きたのが運のつきでテレビをつけたのが終わりの始まりだった。
おとなしく楓の部屋にお邪魔してれば良かったとか思っちゃうのは私が嫌いな結果論。
でも…いやしかし…
「昨日見ちゃったのよ…それが夢に出て来て叫んじゃったわけ…」
思い出しただけでも悍ましい。
私は深呼吸すると噛んで含めるように香蓮に言った。
「キスしてたのよ…ガチムチの男同士がさ…」
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