じゃあな( `―´)ノ
部室まで続く階段を、いつの間にか目を瞑っても歩けるようになるぐらいに慣れてきたのは、入部から二か月後のことだった。
現在、六月中旬。
今日も相変わらずの暑さだ。
東から上った太陽様は今日も今日とて張り切ってなさる。
人間で例えると太陽様みたいに明るい人って大抵空気読めない所謂〝KY野郎〟だったりするから変な期待はしない。
滴る汗が腕を伝って指に絡み、私は鞄の持ち手を変える。
今日はこれといった活動はない。ただ、週に一回は顔を出せと言われてるから行くだけだ。
しかし―――
「どうせ課題やるだけだから良いけど…怠いのは変わらないわね」
思わず本音が口から出る。
面倒臭がりの私がなぜ総務部という名の〝ボランティア部〟に所属しているかは後々語るとして何故とくに活動もないのに部室に行かなくてはならないのか。
私にとってはそれこそ本当に面倒臭いし行く意味がわからない。
唯一の部員にして部長である男に聞いても『顧問に聞いておく』の一点張り。そして次の日には『聞くのを忘れた』とかほざきやがる。
ホント、アルツハイマーなんじゃないかと疑いたくなる程の忘れっぷり。
だからこの前LINEしたら、
『今度こそ聞いてくれたんだよね?』
『いや忘れてた。今度聞いておく。じゃあな( `―´)ノ』
―――は?
マジで、は?
そしてなんだこれは?→( `―´)ノ
舐めてんのか?
さすがの私も頭にきた。
完っ全に舐め切ってるとしか思えないし本気でやってたとしたらキャラ崩壊し過ぎだし、顔文字つかうような男じゃないだろ。
私は額の汗を制服で拭いながら部室の前へとやって来ると乱雑にドアを開け放った。
「あんたホントいい加減にしなさっ…ギャーーー!!!! 何やってんのよ、この変態!!! バカじゃないの!!?」
「相変わらずうるさい奴だな。少しぐらい静かに出来ないのか?」
「あんたが原因でしょうが! 何なのよその格好は!?」
いつもならパソコンなり本を読んでいたりする部長様であるが今日に至っては様子が違った。
———というか裸だった。
下は辛うじてボクサーパンツを履いているが、もう上は裸も裸。布切れ一枚、身に着けていなかったりする。…うーん……案外良い身体付きしてるなあ……
いやいやいや……私が変態か?
「ああーもう完全に怒りが吹っ飛んだ。早く服着なさいよ、変態」
「ノックをしないキミが悪いんだろうが…あと俺は変態じゃない」
「わかったから! もう、早く着替えてよ!」
唯一の部員にして部長。
この無愛想な男が土屋涼だった。




