裸の描写だって?
「何が恥ずかしいのよ、昔はよく一緒に入ってたじゃない」
呆れ気味に言ってくる姉。
確かにアナタの言ってることは至極まっとうだけど、私的には正しくは無い。
だってだって……
「なによ…?」
理由なんて至極単純。
恥ずかしいからに決まってるじゃないか!
二人でお風呂入るだなんて何年ぶり!?
そもそも昔もそんなに一緒に入ってないよね!?
ていうーか何でお姉ちゃんは全然恥ずかしそうじゃないの? おかしいでしょ!
「おかしいのはアンタよアンタ。もう、いい加減にしなさい。お店の人に迷惑でしょ?」
「しょうがないって…簡単に言うけどねえ!」
ああーもう! 完全に油断した!
駄々をこねてもしょうがないけど何で考えつかなかったんだろ!?
まさか…っていうか当たり前だけど一緒に入るんだよね今から!?
しかも裸同士で!?
ふあ~…下の処理大丈夫かな?
「脱ぐなバカ。ほら中に入るわよ」
「あ…ちょ、待ってよお姉ちゃん!」
姉は後ろを振り向くこと無くさっさと中へと入っていく。
どうやら腹をくくるしかないみたいだ。
発券所で券を買い番台の人に渡すと早速脱衣所の中へと入っていく。
「混んでるかもって思ったけど案外すいてるわね。カゴ二つ使っちゃおうかしら」
焦ってる私とは対照的に鼻歌交じりで淡々と着替えようとする姉。
わーイラッとくる。
さんざん面倒くさがってたくせに楽しそうですね。
ジムの時もそうだったけど、どうやらこの姉は家から出るのが億劫なだけで物事を楽しむ心は人一倍強いらしい。
「遅いわよ楓。早く脱ぎなさいって」
「わかってるってお姉ちゃ…!!!」
我が目を疑うという言葉があるが…なるほど、こういう時に使う言葉なのだろう。
私の目に入ってきたのは真っ白な裸体。
雪の結晶のように透き通るような白い柔肌だった。
「………なに?」
…なに
―――だと?
まったく馬鹿な質問だ。
逆に私が聞くばんだ。
なんなんだそのプロポーションは?
モデルか!?
シミ一つ無い肌はもちろんハリウッド女優のようにくびれた腹筋。
スラッとした長い足に程よく引き締まった腕周り。お前基本怠け者だろふざけるな!
そして何より…!
黒乳首じゃない…だと…!?
いやらしいったらな……やば鼻血でそう…
「なによジロジロ見て」
「……はっ!?」
イカンイカン…完全にトリップしていた。
にしても凄い破壊力だ。おっぱいデカいし。もう悔しいって思いもバカバカしい。
本当にごちそうさまでした。私はこれでドロンしますね?
「ドロンってアンタいくつよ? バカ言ってないで早く脱ぎな!」
「バカ言ってるのはお姉ちゃんだから! そんな身体見せつけといてここで私が脱げると思う!?」
「はああ!? だれも見ちゃいないわよ!」
「お姉ちゃんが見てるでしょ!!? 私のことは良いから早く行って! お願いだから早く行って!! 私は身体を見られたくないの!!!」
陸上部だから致し方ないけど、こんな身体を見せられては日焼け痕すら恥ずかしい。タオル巻いて浴槽に行こ。身体見られてガッカリされたくないもんね。
……いやいや。そうじゃないか。
「と、に、か、く! 脱衣所から出てって! 今すぐ! 今すぐ!!」
「はいはい…じゃあ身体洗ってるから早く来なさいよ」
渋々といった感じでタオルを片手に脱衣場から欲場へと移動する。
私はしっかりと見送ってからさっさと着替える。
もちろんタオルで裸体を隠すことも忘れない。
え? 裸の描写だって?
そんなものお姉ちゃんだけで十分でしょ?
ロリコンは逮捕って昔から決まってるんだから。
私はお姉ちゃんの後を追うように浴場へと向かう。
日焼け痕にタオルがこすれて少しだけ痛かった。




