やっぱり気をつかわれるのは嬉しいもんだ
「ウソでしょ…」
比喩ではなく手が震える。
「なにこれ…!?」
そして世界が崩壊する。
「いや、驚き過ぎでしょ凛」
まさかとは思うけどカンニングですか?
「なわけないでしょ、ただの百点じゃない」
「いやいやいやいや」
ことも無げに言ってくる香蓮。
アナタがしたかったのって結局自慢ですか?
「違うに決まってるでしょ!? たかだか満点で驚き過ぎよ!」
「バッカじゃないの!? 百点なんて取れないわよ普通! しかも二教科!!」
デカい声を出したおかげでクラスの注目を浴びてるが知ったこっちゃない。
だっておかしいでしょ? バカだと思ってた香蓮が自分より頭良いだなんて。
「こんなの…こんなのアンタのキャラじゃないでしょ!? どうしたのよ香蓮!!? 勉強なんかしちゃって」
「そこまで言われると流石に腹立たしいわね…」
その後、昼食を取りながら話しを聞くと、どうやらテストの範囲は海外にいた時に終了済みらしい。というか、そのまま飛び級で大学に行ける程の成績があるけど社会勉強も兼ねて高校に通ってるんだとか。
なるほど…これより難易度の高いものを終了済みなら今回の結果も頷ける。つーか学年一位もお前か。
「え、そうなの? まだ全部結果きてないからわからないわ」
「いやわかるでしょ。満点取ってんのなんかアンタぐらいよ。バカじゃないの? 死ね」
「いくらなんでも死ねは言い過ぎ! ねえ…もしかして嫉妬? だとしたら見苦しいわね凛、相手と比べて自尊心を保とうなど愚民のすることだわ」
「くう…正論だけに言い返せない……」
くやしい…くやしいよ。
私だって愚かだって思ってるけど…なんだろコイツにだけは言われたくなかったっていうか……。
いや、つーかアンタだって私と比べて自尊心保ってんじゃん。言いっこなしだわ。
「違うわ凛。わたしがやりたかった事はテストを見せあいっこして教えたり教えて貰ったりしたかっただけ」
「よういうわ。アンタ満点じゃない。しかも二教科」
「そうね。だから教えてあげるわ、なんでも聞いて!」
「う……」
すっごいニコニコしながらこっち見てくるんだけど。さっさとお弁当しまっちゃうし、マジなんなの…。悪気は無いっていうのは分かったけどさ。
あうー…でも何だろ、自分では体感することは無いと思ってただけに一応感謝はするべきなのかも。
「香蓮…私はテストの結果以上に大切なことを教えてもらったわ。だから一応お礼言っとく。ありがと」
「な、なによ急にあらたまって…べつにこれぐらいお安い御用だけど、ちなみに何よ大切なことって?」
「自分にもプライドってもんがあるんだなあ…って」
「は? なにそれ」
「アンタからの教えは乞わないって言ってんの」
「はああああ!? なんでよ!!? べつにお金なんか取らないわよ!?」
「んなこと思ってないわ! …まあホントいうと間違えたとこって只の凡ミスが多かったし、授業の解説で理解したから教えて貰うほどでもないの。まあ分かんないとこあったらこれからアンタに聞くわ。ありがと、香蓮。気つかってくれて」
「ま…まあ凛が困ってたら助けるのは親友であるわたくしの役目っていうか、当然っていうか…」
顔を赤らめながら何やらごにょごにょ言っている。
全然きこえないうえに、とても気持ちが悪い。
ただ〝親友〟という単語が聞こえてきたので私もその言葉に答えようと思う。
やっぱり気をつかわれるのは嬉しいもんだ。
今日またさ…香蓮のことで大きな発見したんだよ。聞いてくれる?
「な、なによ?」
「その性格で香蓮って頭良いんだなって。そりゃあみんなから嫌われるなって」
「………は?」
「大丈夫よ香蓮、その性格少しづつでいいから直していきましょ! ね?」
「ふん!」
「痛ッ! 何で殴るわけ!?」
「はぁ…台無しだわ」
何故だか眉間に皺を寄せる香蓮さん。
終始無言で、けれども席を離れようとはしない香蓮を見て何故だか複雑な乙女心を見ているような気がした。




