アンタの事だからどうせ赤点ギリギリとかでしょ?
授業中であるにも関わらず教室が騒がしい。
みな一様に席を離れて騒いでいる。
一見すれば学級崩壊のような感じだが実は違う。
今日はテストの返却日。
自分の点数がどれぐらい良いのか悪いのか、友達と比べてるわけだ。一喜一憂するなという方が無理がある。
ある意味これがクラス内のヒエラルキー、いわゆるカーストというものに関わって来るが故、みなそれなりに神経を尖らしている。
特に女子なんかは普段のカーストが低い人が高位の人の点数を上回った日にはどんな恨みを買うかわからない。私的にはどうでも良いけど変な所で嫉妬深い子もいるし、なかなか難しいところだろう。だから周りに誰もいない私は唯一の勝ち組。というのはウソで、まあ空気って感じだ。私的にはありがたいが。
ちなみにテストの返却ついでにクラス及び学年平均と学年一位の成績が発表され(もちろん匿名で余談だが満点)自分とクラスがどのくらいの位置に属しているのかもわかる。
ウチのクラスは四位。
可もなく不可もなくといったところだろう。
受験時の成績で各クラスが平等になるようクラス分けをしているのだろうが、三か月も経てば差が出るのが必然だ。
高校に入ってすぐにだらける奴もいれば受験以上に頑張って成績を伸ばした人もいるだろう。
ならばこの場での差などどうとでもなる。
ようは、やるかやらないかの違いでしかない。
そう思うが故に私はこの順位発表があまり意味のあることだとは思わなかった。
仮に自分のクラスが一番だったとしてだから何だというのか。
成績が上がるか?
答えは否。
むしろ高いレベルに当てられてやる気を無くしてしまう人もいるだろう。
自分の成績だけ気にしてれば良いのに…。
騒ぎたくなるのは分かるけど、そんなクラスを見て冷めきった目で見てる自分がいる。
ただのテストで他人と比べて自尊心を保とうなど愚かな行為だ…と。
人間的につまんないなあとも思うけどこれが私だ。しょうがない。むしろそういった感情を感じてみたいすらあるんだけど……なかなかね。
なんというか人と張り合おうって気が無いのかも。
それがないとすると多分私は一生こんな感じだろう。
クラス内を見回しながら私はテストの解説をする先生の声に耳を傾けた。
「凛は何点だった?」
「そういやアンタがいたわね」
昼休み。
小さな机でお弁当を広げていると香蓮がきいてきた。
ぼっちの私に点数を聞いて来る奴なんていないと思ってたんだけど。
忘れてたわ香蓮のこと。アンタなら真っ先に聞いてきそうだものね。
「昔から憧れてたの。友達とテストの点数見せあうの」
「クラスの子とやれば良かったじゃない」
「愚問ね凛、わたしに話し掛けてくる人がいると思って?」
「ドヤ顔が悲しすぎる…まあ人のこと言えないけど」
「今日は何の科目が返ってきたの?」
「英語と数学よ」
「奇遇ね一緒だわ。テスト持ってきてるから凛のも見して」
「えええー……まあいいけど」
渋々と机の中から引っ張り出す。
香蓮のを受け取りつつ自分のを渡す。
何だか見るのが怖いなあ。
「なんでよ?」
「いや…アンタの事だからどうせ赤点ギリギリとかでしょ? 追試手伝ってとか言いそうだもの」
「それこそ愚問。わたしを誰だと思って?」
「成り金髪の香蓮さんでしょんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!?????????」
「どうしたの凛?」
「これ…これ…」
ありえないだろ…
いやいやいやちょっと待て。
どうしたのじゃないちょっと待て!
何だこの点数は?
おかしいおかしいぞ…
「百点…だと…!?」




