金髪さんは男でも食ってて下さい
家に着くとすぐさま夕食の準備に取り掛かった。
楓も手伝うと言ってくれたのでその言葉に甘えることにしたら、香蓮も手伝うと言ったので丁重に断ることにした。すっごく怒ってたけど取り敢えず無視。一応お客さんだしね。テレビでも見てゆっくりしてて。
そういえば楓と一緒に料理するのって案外久しぶりかも。
それでも一緒にやって邪魔にならないのは姉妹だからだろうか。
意識しなくとも阿吽の呼吸で連携が取れるというか。
「よしっ完璧! 香蓮できたわよ、こっち来なさい」
作り始めて一時間弱。
テーブルに出来上がった料理が並ぶ。
今日のメニューはグラタンにパスタとサラダ。
食べすぎかなあとも思うけど今日は汗をかいたしこれぐらいが丁度いい。
香蓮が感嘆の声をあげる。
「本当に料理得意なのね…これ全部凛が?」
「なわけないって。グラタンは楓よ」
「そう。妹さんも得意なのね。腹立たしいわ」
いきなり突っかかる香蓮。
すかさず楓が反応する。
「何ですか腹立たしいって! あと妹さんって呼び方やめて下さい。この成り金髪!!」
「アナタが改めるべきでは!?」
「うるさいです。あと別に食べなくて良いですよ。金髪さんは男でも食ってて下さい」
「はあ!? ホント何言ってるのこの妹は! だ、だいたい男食べるくらいなら…り、凛をいただくわ!」
「この…ド変態! アナタこそ何言ってんの!? それにお姉ちゃんは私の…」
「はいはいもう…ケンカしないケンカしない」
なんでこの二人こんな仲悪いんだろ…今日会ったばかりだよね? 犬猿の仲すぎるでしょ。
「最っ低…」
「ホント凛はバカね」
「罵倒する時だけ結託するの止めてくれる?」
二人して死ねばいいのにみたいな目でみないでくれますか?
「もういいや食べよ。疲れた…」
「そうね…」
「うん…」
二人も同じ気持ちなのか何故だかしょんぼりしながら席に着く。
やっと静かな夕食だ。
終始無言で黙々と食べているとふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「そういえば香蓮ってなんで私の家知ってたの?」
「ふっふーん、何でだと思う?」
ウザいぐらいに得意気な香蓮さん。
何その顔? 頬にチーズが付いてますよ。
「拭けばすむ話しでしょ!? それより当ててみて! 凄すぎてびっくりするから!」
「えー…実はストーカーしてたとか?」
「ブッブーはずれよ。しかもそれ犯罪じゃない。私はそんなことしないわ」
「じゃあどうやって?」
「学校で貴女の個人情報を盗んだの! ね、すごくない!?」
「ドン引きだバカ!」
「痛い痛い! 髪を引っ張らないで!!」
なにしでかしてんだコイツ…。よっぽどそっちのが犯罪だろ。
しかもそれを凄いとか言って自慢しちゃうとか…もう末期だな。
「なんで直接聞かなかったんですか?」
楓がもっともな疑問を口にする。
まあ聞きたくなるのも分かる。盗むなんてリスク犯す必要性ないもんね。
「そんなの簡単、サプライズよサプライズ」
「サプライズ?」
「ええそうよ。だって普通に考えてみて? 玄関開けて私が立ってたら幸運を感じるでしょ? それを凛に体験してほしかったの」
「うわあ…ヤバいよお姉ちゃん。病院病院」
さっきまで仲悪かったのに楓が本気で憐れんでいる。楓は優しいね。お姉ちゃんはもう諦めてるよ。
「そんなこと言って凛もホントは嬉しかったんでしょ? ホント素直じゃないのね。学校で嫌われるわよ?」
「嫌われてるのはお前だ!」
「やっぱり嫌われてるんですね」
「やっぱりってなに!? 今日の印象でいえばアナタだって大概…」
「楓はこう見えても外では上手くやってるのよ。結構…いや大分ずる賢いんだから」
「それ褒めてなくない?」
「へー…見た目通りなのね」
「金髪さんに言われたくありません!」
「いや…二人とも人間的に問題あるから」
「「お姉ちゃんにだけは言われたくない!!」」
「ええ……」
そこだけは気が合うねと、二人。
何故だか力強い握手までしている。
え、阿吽の呼吸ですか? 何故?
色々な疑問符が浮かび上がったがあえて口にはしなかった。
理由などない。
それこそ阿吽の呼吸以上に空気を呼んだ結果だった。