この男、案外ノリノリである
担当決めを終えてからしばらくして、早速告白までの作戦を話し合うべく、再び席へと付いて話し合いを始めた。
「今後の方針を決めていこう。洋介君、告白までの流れや協力して欲しい内容というのを考えているのかね?」
話を振られた洋介はその件について、しっかりとプランを考えていたのか照れながらも饒舌に話し始めた。
「告白の仕方とかは、自分なりには考えてあるんだ。その子、あまり派手な子じゃないからシンプルに告白するつもり。どこか、人のいない所に呼び出してさ」
「うわぁ……///」
当たり前だが、さっきまでの話とはうって変わり告白の話となって、ちょっと恥ずかしい。
良いアドバイスができるかはわからないが、人畜無害な感じの洋介に呼び出されたらギャップと相まって良い感じなのではないだろうか。
「そ、そうかな///そう言ってもらえると嬉しいけど。でね、まぁそれは良いとして…僕が協力して欲しい所っていうのは別にあるんだ」
言って、自分の体を人差し指で指す。
「どういうこと?」
聞かれ、洋介は恥ずかしそうに照れながら笑う。
「僕ってさ、ほら、地味でしょ?見た目がさ。だからまず、見た目をどうにかしたいなって思って。本当は友達とかに頼むのが良いんだろうけど、僕、こういうの頼める友達ってなかなかできなくて」
確かに、学校で喋ったり一緒に帰ったりする友達は簡単にできるが、放課後に一緒になって買い物に行くとなると別物だろう。ましてや好きな人に告白するのだ。友達だからこそ、知られたくないこともある。だから、ここに来たのだろうし。だが、ここでまた一つ疑問が浮かぶ。
「見た目を変えたいって、告白するんでしょ?そんなの今更じゃないの?その好きな人と喋ったことないの?」
喋ったこともない、俗に言う一目惚れみたいな関係性なら見た目を変えて告白するのは、相手の好みがある分、悪くないと思う。しかし、知り合いだとしたら話は別だ。いきなり気合入りまくり、髪型変えまくりの、『あなた誰ですか?』状態で告白したところで失敗するのが目に見えている。
そこは、涼も同じ疑問を抱いたようで、
「場合によっては逆効果かもしれないな」
「そういえば、僕と相手のこと何も話してなかったね。あのね…」
また、もじもじし始める。もうそれいいから、洋介君早く言って。
「高嶺の花って言われちゃうかもしれないけど……僕の好きな人って、篠田真澄さんなんだよね」
「ああー……あの子かぁ………」
篠田真澄
彼女は、この学校トップクラスの美人で、誰でも知ってる有名人だ。
人あたりもよく、教師からの信頼もあつい。また、その人あたりの良さから、告白された数は山ほどいると聞く。まあ、振られた数も同等なので一部から反感を買っているらしいけど。
「如月さん…なんか詳しいね。綺麗だよね、女性から見てもそう思うでしょ?」
「まぁ綺麗よね。実際、容姿だけならこの学校でもトップクラスだと思うけど…」
「?」
含みのある言い方が気になるのか、洋介が疑問符を浮かべこちらをジッと見つめている。内心ではあまり話したくはないのだが、隠し通した所で、これからは協力していかなければならない。
一呼吸分のため息をつくと、仕方なく答えることにした。
「そこまで、喋ったこともないし、私はほとんど見ていただけだから、洋介君の前では言い辛いんだけど…彼女のこと、あまり好きじゃないのよ」
「その口振りだと、同じクラスだったのか?」
「ええ、去年の話よ。篠田さん凄く人当たりも良いし、クラスの誰とでも分け隔てなく接していて、担任からも信頼されてた。でも──」
そこまで言って言葉に詰まる。やっぱり言い辛い。しかし、私の気持ちを察したのか涼が代わりに代弁する。
「つまり、逆にそれが胡散臭いと言いたいのかね?」
「───そう。なんかね、気持ちが見えないの。表面しか見えないっていうか…始めっから疑ってかかる私も悪いんだろうけど、どうにも彼女のことが信用できない。なにか裏がありそうで……───ああ、ごめん。だからなにって話だよね」
そこまで話して内心言い過ぎたと後悔する。少なくとも今から告白しようとする相手に話す内容じゃない。
「そんなことないよ、見た目に騙されてるんじゃないかって言いたいんでしょ?でも、大丈夫だよ如月さん。僕は知ってるんだ、彼女がどれだけ優しいか、彼女がどれだけ裏表のない存在かを。上辺だけ見て言ってるわけじゃないんだ」
「うわあ……」
付き合ってもいないのに、自信満々ドヤ顔で言い切ってくる洋介にドン引き。まさかストーカーでもしてたの?
「し、してないしてない!ストーカーなんてしてないよ!ちゃんとこれには、理由があるんだから!」
さも、心外だとプリプリ怒る。
しかし理由……ねえ…
これは部活であり初仕事でもある。だから決して面白がってる訳ではない。そうではないが、理由があると言われては聞かずにはいられないのが人間の性というものだろう。協力するんだし、話してくれるよね?
「う~~やっぱり話さなきゃダメ?恥ずかしいんだけど…」
「なにを今更。それに、私が彼女のことを今以上に知ることって大切だと思わない?彼女のことを知れたら、女性目線で告白や他のことでもアドバイスがしやすいし」
「だな、話した方が君の為になる」
ずいっと体を前に詰める涼。この男、案外ノリノリである。
「うう~恥ずかしいなあ…もう…わかったよ、言うよ。言うけど、少し長くなるよ?それでも良い?」
二人共、無言で頷く。
こうして、萩原洋介主観の篠田真澄が語られることとなった。
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