わたくしは可愛いでしょ?
「凛! わたしと組みなさいって言ってるじゃない!」
バカ…もとい香蓮が騒ぐ。
できるわけが無いって分かってるのに往生際が悪い。香蓮と組むであろう隣の子も申し訳なさそうにしている。私この子と組みたいわ。
「なんでよっ!?」
「冗談よ冗談。いちいち突っかかって来ないでよ鬱陶しいわね。つーかなんで香蓮がいんのよ?」
我ながら至極真っ当な疑問である。頭に血が上ってるのに良く会話できるなあと自分でも感心する。
香蓮は自信満々に、
「私がなんでここにいるかって? そんなに聞きたいの?」
「いや別にいいけど」
興味ないしね。
「気にして! お願い気にして!!」
「ぷーーーwww これだから腐れ金髪はww」
「うるさいわよチビッ子!」
「誰がチビッ子かっ!」
「お前だろ…」
うるさいなあと未来。不良の法則とでもいうのか。元ヤンのクセにこの三人の中だと割とまともに見えるから不思議である。
「不思議じゃない。まともなのよ」
「どうでも良いわよそんなこと。それより香蓮。あと柚子。邪魔するっていうなら容赦しないけど本気で私とやりあうき?」
体育祭といえどこれは勝負だ。
負ければクラスに迷惑かけるし手を抜いて変に恨まれたくもない。そして何より私がコイツらに負けるのが死ぬほど嫌なのだ。
「な…なんでよ!」
香蓮が少し怯む。柚子に関しては踏み込んじゃいけないラインだったのかと涙目になっている。相変わらず弱いなあ。
「私が負けたくないのはプライドの問題よ。ただ単にアンタ達に負けたくないだけ」
「…本当か?」
「ホントだって。もう…だから泣かないでよ」
そっと柚子の目尻をふく。
ハンカチがないから服の端っこで優しく拭ってやった。こうして大人しいと可愛いんだけどなあ…。
「触るな義乳。前の競技の恨み忘れちゃいねーですよ」
かなり強めに拒否られる。目が本気で恨んでいる。
前言撤回。可愛くないわコイツ。
「ねえ凛、わたしは? わたくしは可愛いでしょ?」
「顔だけね」
「キャー――――――っっ!!!!!」
嫌味なんだけど…そういう前に競技開始のアナウンスが入った。
開始はもちろん一年から。私たちからだ。
「如月」
「ん、なに?」
「集中しなさいよ。さっきまで大分おちゃらけてたみたいだけど。バカやってると大事なところでケガするわよ」
「ハハハッ…なーに心配してくれてんの?」
「…バカ。そういう所を注意してんの」
「ゴメンゴメン、分かってるって。でも大丈夫よ。ふざけるつもりもないし適当にやるつもりもないから」
全員が一斉に位置につく。
隣のレーンでも柚子や香蓮がスタート位置に入った。
さっきまでとは打って変わりふざけるつもりはないようだ。
「…呆れられたくないもんね」
「え?」
間の抜けたような声と同時に号砲が鳴る。スタートは少し出遅れたがトップに十分追いつける距離だ。
「飛ばすわよ未来っ!!」
私たちは練習通り…いやそれ以上のスピードでトップを追従する。
五メートル…三メートル…一メートル。
距離は少しずつ縮まっていく。
「くはああーー! またしても如月にいぃーーー!!!」
後方からは柚子の声。
「っつしゃあー!! まだまだ負けないんだから!」
私と未来はぶっちぎりの一位を決めたのだった。
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