グループ決めの時、いっつも一人でグループ組んでるの
「如月凛! 今日こそは残ってなさいって言ったじゃない! 何処行く気よ!?」
「うるっさいなあーもう…」
顔を合わすなりギャーギャーわめき出すハーフの美少女。
私はこれ見よがしにため息を吐いた。
彼女の名前は宝城香蓮。
私は入学当初から度々彼女に絡まれている。
最初は些細な会話、つまるところ挨拶を交わす程度の仲だったのだが、何を間違ったか今ではこうして弁当を持ってきては私に毎回絡んでくる。ひとりが良いって言ってるのに。
「知らないわそんなこと。っていうかそんな嫌がんなくてもいいじゃない! 冷たいにも程があるわ」
「ひとりが良いって言ってんだから冷たいもクソも無いでしょ。つーか何でこっちのクラスにまでいちいち来んのよ。自分のクラスで喰いなさいよ」
「は、はああああ? 意味わかんない。私が何処で食べようが勝手じゃない。もちろんそれが貴女と一緒でも」
「だから何でそこで私が入んのよ。――あ、もしかして友達いないからこっち来てんの?」
「バッ!? バッカじゃない!!? なんで私に友達がいないだなんて思うの!? 信じらんない。それぐらいいるわよちゃんと」
「じゃあその人と食べなさいよ」
「え?」
「なに?」
「だからそうしてるじゃない」
「え、私!? いつから友達になったのよ!!?」
「だって挨拶や会話だってしたことあったじゃない。それって貴女も私の事を友達だと思っていたからしてくれていたんでしょ?」
「はうーー…そうきたか…」
そりゃあ挨拶されりゃ挨拶ぐらい返すでしょ普通。
別に私だって敵を作りたい訳じゃないし、あえて友達を作らない訳じゃない。ただただ面倒臭いだけなのだ。
女というのはホントに面倒臭い。それこそこの子の噂を聞きたくもないのに聞いてしまうほどに。
「知ってる? アンタ女子から嫌われてるわよ」
「それ本人に言う事なの!? 急になんなの!!?」
またもやギャーギャー騒ぎだす。
だってしょうがないじゃない。性に合わないのよ。知ってて黙ってるだなんて。
「別に言うことないじゃない! でもそっか…なんか合点がいったわ」
「なにが?」
「グループ決めの時、いっつも一人でグループ組んでるの。誰も組んでくれないから」
「気付くの遅っ!? グループでもないでしょそれ!!?」
「いやなんか私が超絶美少女だからみんな遠慮してるのかと思って…」
「超絶ヤバい思考回路ね。つーかそういう所よ、そういう所」
自分で超絶可愛いとか言っちゃうから嫌われるんだよなあ…。
女は嫉妬深いからね。しょうがないね。
付き合い苦手なら黙ってるのが吉よ?
「いやよ黙ってるだなんて。愚民共が黙りなさいよ」
「おい」
「ああーもう、うるさい! そんなことはどうでもいいからお昼ご飯一緒に食べてよ!」
「…………」
何故そんな必死になる?
―――というのは意地の悪い質問だろうか。
目尻に涙を溜め、唇を震わしている彼女の顔は真剣そのもの。
強がってはいるが、きっと心の中では寂しかったに違いない。
ならばそうか。
誰一人として彼女を無視し続ける中、唯一話してくれた私が友達だというのも頷ける。
…まあ別に悪い気はしないけどさ。
そんな言い訳を自分にしつつ、私は自分の席へと戻っていく。
「何してんの、椅子借りてこっちに来なさい」
机に弁当箱が二つ広がる。周りの視線が気になる。
一つだと持て余してた机の広さが、二つだと狭く感じて少しだけ後悔する。
「ねえねえ私のことは香蓮って呼んでいいわよ! 私は勝手に凛って呼ぶから!」
でも、楽しそうな香蓮を見て、そんな思いはすぐに吹き飛ぶ。
少しだけ騒がしくなった昼食時。
案外悪くないと感じる私がいた。
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