お弁当
私は思うのだ。
妹というのは卑怯であると。
何から何まで姉の私より褒められて大事にされて可愛がられる。
出来が良いなら尚更だ。
お母さんが言う『お姉ちゃんも手伝ってあげて』なんて、もう聞き飽きた。
だから私は自分から動くことにしている。
勉強しなさいと言われるとやる気をなくすように、手伝えと言われるとやる気をなくすからだ。
妹が卑怯という考えは今後も無くなる事はないだろう。
そして、それは今日もそうで―――
私は妹の為にお弁当なんぞをつくっている訳だが…
「ちょっとお姉ちゃん! お弁当間に合うの? 着替えたら私、部活に行くよ」
「わかってるって! あと五分待ってて」
「もう! お姉ちゃんは普段からダラけ過ぎなんだよ。何でもっと早く準備しないの」
「……すいません」
「いつもの事だからもう別にいいけど…いつもの事だからこそお姉ちゃんには直してほしいよ。そこんとこ」
……などと言いながら妹は着替えに自室へと消えて行く。
クソ! クソ!
お前が買い弁いやだって言うからこうして私が作ってやってるんじゃないか!
クソ! 悔しい! 何が悔しいって正論なのが一番悔しい!!
馬鹿にしやがって…仕返しにラードでも入れてやろうか?
「…ホントに入れないでよ」
聞こえてきた方を振り向けば、そこにはジャージに着替えた我が妹の姿が。
「あら楓じゃない。あなた心が読めるの?」
「思いっきり漏れてるから心の声が。まあいいやお弁当頂戴」
「ついでに傘も持って行きなさい。嫌な予感するから」
「予感? …まあいいけど」
楓はカバンの中に傘とお弁当を入れていく。
カバンを両手に持つと玄関の方へと向かって行く。
「楓、帰りが遅くなるんなら連絡して」
「うざ。子供じゃないんだから…」
「ならお弁当ぐらい自分で作りなさいよ。子供じゃないならね」
「ホント意地悪いな。お姉ちゃんは」
運動靴を履きながらそんな嫌味を言ってくる。
お姉ちゃん的には嫌味を言う前にお礼を言って欲しいのだけれどね。
ま、どうせ感謝なんかしてないんでしょうけど。
「ん? そんなことないけど」
「は?」
「いつも感謝してるよ。私の時にだけ頑張ってくれるお姉ちゃんにさ。じゃ行ってきます!」
「………」
返事を返す前に妹が玄関を勢い良く掛けていく。
…ほらねやっぱり卑怯だ。
お礼一つでさっきまでの憤りなぞ消えてしまう。
悔しいよホント。
「明日はもう少し早起きするかあ…」
憎たらしいのに溺愛してる自分がさ。
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