高級ブティックでお買い物
カールは起きて早々、シャルロッテの姿で朝食に向かった。
朝食は基本、内容は一緒だ。優雅に食べながら、周りの観察を忘れない。今日の朝は、貴族の男性と女性のペアが一組、男性が二人いるだけだった。
女性の姿だと新聞紙が貰えなかった、変わりに流行のお店や服が載っている薄い冊子を貰えた。そこには男性用のもあるので、今日の買い物の資料としてありがたく貰う事にした。
食事が終わり、部屋に戻ろうとした時にコンシェルジュに呼び止められた。
「シャルロッテ様、お手紙が届いております。」
「まぁ、誰からかしら?」
そう言って受け取り、封蝋を見れば3本の足を持つ鷹のシンボルが入っていた、これは王家の紋章だ。
「あら」
シャルロッテは嬉しそうな笑顔を見せて、コンシェルジュにチップを渡し部屋へと戻った。手紙を開ければ、王妃様からのお茶会の招待状だ。
「2週間後にお茶会!どうしよう!!王家のお茶会に着ていける服なんて持って来てないわ、今日買わないと・・・何を着ていこうかしら?」
シャルロッテは嬉しそうにクルクル廻った。手紙の中には招待状以外にもお手紙も入っている事に気づいた。
「まぁ、ドレスまで用意して下さるの?」
なんとドレスは向こうで用意するから、新しく買う必要は無い旨が書かれていた。
とりあえず、ほっとしながら招待状は無くさない様に金庫の中に、そして手帳に予定を書き込んだ。
そしてカールの姿に戻り、お金と必要な買い物リストを書き込んだ紙を持って部屋を出た。
コンシェルジュに挨拶をすれば、丁度アムストラ領の騎士服を身にまとった二人が迎えに来てくれた所だった。
「おはようございます。今日は正装なんですね」
「おはよう」
「おはよう、貴族エリアに行くときは小奇麗にしないとな」
っとルッツがウィンクして言った。
「あまり汚いとおいだされてしまいますからね。では、カール行きましょうか。」
「はい、よろしくお願いします」
騎士用の礼服を身にまとった二人を連れて歩くと、偉くなった気分だっとカールは思いながら外に出た。
今日は王都の貴族エリアへと辻馬車で向かう。辻馬車も下町で使った黒のボックス型の馬車ではなく、バギー型の少しお洒落な装飾がついている馬車だった。
フェルディナントが御者の横に座り、ルッツとカールが後ろに座った。
「屋根の縁がレースだなんて、お洒落ですね。」
カールがびっくりして言うと、ルッツが答えた。
「これは、主に貴族が使う辻馬車だからな。お洒落なんだよ。」
なるほどっと思いながら、今では貴族エリアとした町を分ける、古い城壁の門を潜れば、貴族達が住まう高級なエリアだ、貴族用の装飾品、特に王宮に行く為のものはこのエリアで買わないといけないらしい。
入り口にはもちろん門番がおり、時間で鉄の装飾が施された門が閉じられるそうだ。
貴族エリアの建物は、化粧石の白で統一されている。柔らかい石灰岩のため、装飾も豪華だ。きょろきょろ見渡していれば、ショーウィンドウに貴族の礼服と装飾品が並んでいる店の前で馬車が止まった。
「着いたな。馬車はココで待っていてくれ。」
そう言って、フェルディナントが先に馬車を降りた、それに続く様にカールとルッツが降りた。
高級品を扱う店の為、扉の前には私兵が守っていた。その人達の手に寄って扉は開けられ中に入れば、大きなシャンデリアが下がっている。
「わぁ、凄い!」
カールが驚いて見上げて立ち止まっていると、奥から綺麗な仕立てた服を着込んだ店員が出て来た。
「いらっしゃいませ。」
「すまない、こいつに王宮に行く為の装飾品を選んでくれないか」
店内の様子に惚けているカールに苦笑しながら、フェルディナントは近づいて来た店員に言った。
「王宮ですね。どのような用途の物をお探しでしょうか」
店員の言葉に、カールはやっと聞かれている事に気づいて振り返り、慌てて胸ポケットからメモを取り出した。
「えと、代理人として行く為に、絹の手袋に、ベルト、タイ止め、あと、巾着袋です。それと、令嬢のための扇子と日傘を一つ」
「こちらで少々お待ちくださいませ。」
そう言って店員に示されたのカーテンで仕切られた個室のソファだ、そこにカールは座った。ルッツとフェルディナントは後ろに立った。
「初めての王都のお買い物の感想はどうだ?」
フェルディナントに聞かれて、カールはぎこちなく頷いた。
「なんで個室?!」
「そりゃー貴族や官僚専用だからな、高い商品しか扱ってない。店内に並べて盗まれたらひとたまりも無いだろ?」
「なるほど!」
カールは頷きながらも、あまりよく分かっていなかった。それよりも椅子も目の前の机も豪華なのだ。
「とりあえず、王都のお店はお洒落で凄いね!!てか、何を選べば良いのか分からないよ。王宮に着ていく服のお洒落ってナニすれば良いのかな?でも、僕は代理人だし、そんなに派手にしちゃだめだよね。」
「そうだな。変な貴族に目をつけられたら大変だろうしな。あと、もっと堂々としてろ」
そう言ったのはルッツだ。はっとして、カールは慌てて姿勢良く、背を伸ばした。
「お待たせ致しました。」
そう言って戻って来た店員はもう一人増えていた、大きなトレーに頼んだ商品が載せられていた。それらを目の前の机の上に商品を並べて行った。
「んーお前、リボンタイも買った方が良いんじゃないか?」
フェルディナントに言われ、カールは首を傾げた。
「今持ってるの、ちゃんと白いし、生地も悪くないよ」
「いや、今年の王都の流行がレースとか刺繍が施されたリボンタイなんだ、逆に付けてないと目立つ」
その言葉に、店員も同じ様に頷いた。
「流石騎士様、今年はレースや刺繍が流行ですので、派手な方はリボンタイも太めのを買われる人が多いです。お客様は代理人という事ですので」
そう言うと、いつの間にか抜けていた店員の一人がリボンタイをトレーに乗せて戻って来ていた。
「此方なんていかがでしょうか、刺繍を施したものですので、そんなに派手ではありませんし、そんなに値も張りません」
見れば、確かに縁に唐草模様の刺繍が綺麗に施されていた。
「確かに、これなら良いかも。」
「でしたら、タイ止めはこちらがよろしいかと」
そう言って、並べていたタイ止めの中の一つ、羊のシンボルとしてあしらっている金と白乳色のものだった。
「ん〜まー、お前は騎士ではないし、代理人だから良いかもな」
覗き込みながらルッツとフェルディナントが頷いた。羊のシンボルの意味は無垢であったり、従順とかいう意味がある。あくまでも、代理人として来ているカールに取っては良いだろ。
「そうだね。」
あとは、カールが持っている服と会わせたものを選んで終了した。ハンカチと日傘は今年の流行の柄が入った物にした。
支払いのサインをして、お買い物は終了だ。荷物は止まっている場所まで店が運んでくれる為、手ぶらでお店を出た。
「凄い!!王都は店が宿泊してる場所にまで運んでくれるんだ!!」
「いや、ココは貴族専用のだからな。下町なら普通にもって帰るぞ」
ルッツの突っ込みに、そっかーっと肩を落としながらも、また馬車に乗った。
「さて、ざっとこっちの貴族エリアも説明するか」
そう言って王城までの道のりと、公園や貴族の館を見て回った。貴族エリアでは、道には歩いている人は殆ど居なかった、というよりも徒歩で歩いている人は殆どおらず、皆馬車に乗っていた。
時々歩いているとしたら、お使いの従者っぽい人や侍女のような人達。警備をしている兵士のみだ。
「ここら辺が買い物エリアだな、こっちが貴族の館が多い」
ルッツとフェルディナントの説明を受けながら、カールはどれも似たような建物ばっかりだなーっと思った。とりあえず頷いているが、実はもう既に見分けがついてない状態だ。
「・・・お前分かってないだろ」
横に座るルッツの言葉に、ぎくりと肩を揺らしてしまった。
「はぁ、まぁ〜最初来た時は見分けは着きにくいが、そのうち分かる。道の形と、ベランダの格子柄を覚えておけ、道によって柄が違う。」
そう言われて良く見れば、確かに違っていた。今来た道は百合を象った鉄格子だったのに、曲がった先の道ではアザミを象った鉄格子だった。
「んー頑張るよ」
鉄格子かーっと思いながらもカールは気をつけながら見たが、既に覚えられていなかった。
一通り廻り終えて、カールが滞在するヴォーヌングに戻って来る頃にはちょうどお昼時だ、そのまま二人もココで昼食をする事にした。
食堂に向かえば、滞在客以外の人もいて賑わっている。
3人が席に着けば、チラチラとした視線を感じた。
「もう、情報は廻ってるっぽいな。何か合ったら、俺たちが泊まってる場所にくるんだぞ」
そう耳打ちしたのはフェルディナントだ。
「そうだな、誰かしらがいる。」
そう小さく呟いたのはルッツだ。
「わかった」っとカールは頷きながらも、困ったなーッというのが本音だった。
「もっと簡単なお使いだと思ったのになー」
思わず呟けば、二人に苦笑されてしまった。
「まっ、しょうがない。諦めろ。お前なら大丈夫だろ」
「そうだな」
そう言いながら、お昼を食べ終えれば丁度店から商品が届いた事をコンシェルジュに言われた、箱を渡された。それらを二人に部屋にまで運んでもらいながら、明日の準備だ。
「王宮ってめんどいだなー」
そう呟いたのはルッツだ。それも、辺境伯から渡された必要な装いの準備や、王様への報告するためのだいたいの流れのメモを見てだ。
「ははは、そうだよねー。でも、それが終わったら僕の仕事はほぼ終わり!あとは連絡係だからね!」
力強く言えば、そうだなっとルッツも頷いたが、フェルディナントは苦笑するだけだった。
二人は明日には王都を出発してしまう。カールはメモしたアムストラ辺境伯に宛てた近状報告の手紙と、買い物の領収書を添えて二人に渡した。一応、自分の買い物は経費で落とされるのだ。
「じゃ、「良いシーズンを」」
そう言って二人と別れると、なんだかちょっとだけ寂しくなった。
初めて知り合いもいない王都に居るんだっとカールは実感した。
「大丈夫だよ。なんとかなるなる」
そう自分に言い聞かせて部屋へと戻った。




