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ロイヤルズと代理人の青年?!  作者: siro


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一人の青年と令嬢

部屋についてまずする事といえば、荷物整理だ。

カールは、ウキウキと鼻歌を歌いながら荷解きを行う。一つ目のトランクには王宮に出仕するための服と夜会に出る時の服、そして昼間のお茶会等に出る為の服が入っている。礼服専用のトランクだ。メモしている紙を読みながら、クローゼットに仕舞う、もちろんメモは扉に貼付けておく、礼服は行く場所は時間によって服装の基準がある、守れなければ笑い者になってしまうし品位を疑われてしまう。


もう一つのちょっと縦長トランクには、護身用の短剣と長剣。その間にクッション代わりに入れていたローブや布袋、そして服や靴。これは明らかに貴族用ではなく市民用の物だ。

それらは鍵のかかるタンスの引き出しに仕舞う、もちろんこれらは王都の探索や辺境伯のお使い等色々使う為の服だ。


 そしてもう一つのトランクを開けると、そこには女性物のドレスが入っている。カールは驚きもせずに、着ている服を脱ぎ始めた。ジャケットとブラウスを脱ぐと、その下には薄茶色の筋肉の形に裁断され、作られたインナーだ。これは領内で騎士の動きをサポートする為に作られたモノだが、カールのは特別仕様だ。 脇で締めている紐をほどき、脱ぎ捨てれば、その体は真っ平らな少年のではなく、丸みを帯びた少女の体。


トランクから一人で着れるドレスを取り出し、身につけていく。中にはまだ礼服のドレスが一着入っているが、あれは自力では着れない仕様だ。

身につけた後は、もう一つのトランクを開ける、そこには化粧道具や装飾品、筆記用具などが入っている。装飾品は鍵のかかる引き出しに仕舞い、化粧道具を持って鏡台の前に座れば、一本に結んでいた髪解き、今度は編み上げて、ハーフアップにした。次に顔に化粧をし、紅い口元にホクロを描き足せば完成だ。目尻がちょっとつり上がり、口元のホクロが色っぽさのある気の強い令嬢顔の出来上がりだ。


トランクからむき出しの帽子を出して、潰れた部分を直して被れば完成。

「大丈夫かな?」

少女らしい不安げな声は、先程喋っていたカールの声よりも高く愛らしい声だ。鏡の前に立ったカールは不安そうな瞳だ。

「でもやるしか無いよね。」

青年らしい声でよしっと意気込むと、トランクを閉じて、廊下に誰もいないことを確認してから、先ほど来た入り口のコンシェルジュの元に向かった。


「こんにちは、お嬢様」

「こんにちは、宿泊の手続きをお願いできるかしら」

「ご予約名は?」

「シャルロッテ・フォン・フクス」

「・・・御座いました。ではここに署名を、名前のみで大丈夫です。」


「ありがとう」

にっこり微笑んで、カールは"シャルロッテ"のみ書き、二つの鍵を受け取った。もちろんチップを置くのも忘れない。

「良いシーズンを」

コンシェルジュもニッコリ微笑むだけだ。

フクスは貴族が使うお忍び用の姓だ。様々な理由で使われる、無用な詮索をするなという意味もあるそうだ。辺境伯から教わり、そう名乗れと教わった。


さて、これでカールは、二つの姿で動き回れる様になった。一つは令嬢としてのシャルロッテ、もう一つは代理人としてのカール。二つの姿がある事を知るのはアムストラ辺境伯の他にごく一部の人間しか知られていない。

 カールは、先ほど入った部屋とは別の隣の部屋の扉を、先ほど貰った鍵で開けて中に入る。中は同じような作りだ。そして隣の先ほどの自分の部屋へと続く扉もある。それをもう一つの鍵で開けた。2重扉になっているが、先ほど開けておいたのでもう一つの扉はドアノブを廻すだけ。先ほどの部屋へと簡単に繋がった。

「一応、女性のドレスはこっちだよね」

そう一人で呟きながら、ドレスの入ったトランクごとシャルロッテの部屋に移動させた。ドレスもクローゼットにかければ、今日の女性の姿は終了だ。

さっさとドレスを脱ぎ、化粧を落とし、編み込んだ髪の毛もほどいて一本に。そしてまたカールの姿に戻った。

粗方荷物整理もしたし、大切な書類はしっかり金庫にも締まった、あとはヴォーヌングアパートメントの探検だ。


 カールが泊まっているヴォーヌングアパートメントは、王都の中心部でかつ王宮からも広場や劇場などからも比較的に近く便利性の高いヴェーヌス通り添いに建っている。3階建てで、カールが泊まっているのは3階の部屋だ。2階から上が居住エリアのこちらの建物は、官僚や貴族な人達が泊まっている。部屋数は16部屋。

逆に、高級な部屋は、中庭を挟んだ向こう側。中庭側に入り口があり、3階分丸々一組分の部屋だ、もちろん使用人をつれて来れる貴族用の部屋だ。3組分あるが、そこは全て埋まっているようだった。

一階は、先ほどのエントランスとポーターやコンシェルジュ等が待機している受付、使用人や騎士達が待機している部屋、そして食堂二つに、大サロンと小サロン2つだ。予約をすれば小サロンは個人使用が出来るそうだ。

 中庭はヴォーヌングアパートメントの利用者のみ解放されている。


カールはちょこちょこと歩き回った、建物はコの字型になっている、蓋をするように高級な部屋が三つある感じだ、角ごとには仕切りや扉があり行き来できない。使用人が移動できるだけだろう、内部をだいたい把握し、ふむと考え込んだ。

「正しく王都って感じだな〜」

貴族用でもああるため、内装は豪華だ。壁には装飾が施されているし、絵画も置かれている。カーテンなんて豪華な金の刺繍までしてある。食堂では生の楽団の演奏つきだ。ちょっと疲れたのでついでに少し早めの夕飯を食堂でする事にした。


食事をとりながら、カールはこれからの事を考えていた。宮廷に出仕するのは三日後だ。明日は駅馬車の騎士に会いに行くついでに王都見物にするつもりだ。後は手紙の確認と装飾品も買えたら買っておきたい。

あと、町の様子を辺境伯に伝えなくてはならないし。そうだ、無事に着いた事を手紙で送らなければっと思い出した。


部屋に戻れば、シャルロッテの部屋も確認する。すると入り口のドアの下に手紙が差し込まれていた。拾ってみれば招待状だ。

コンシェルジュを通さず、直接この部屋に置くという事は、内部の使用人を使ったのだろうと思いながら封を開ければ、綺麗な文様の様な文字が目に入った。

宛名は叡智の娘トッフィディヴァイサイへとあった。こんな書き方をするのをカールは一人だけ知っている。

名前はヘヒステ・フォン・フクスと書かれていた。毎回その名で送られて来る、高貴な貴婦人からのお手紙だ。


封を開ければ、無事に着いた事の喜びと、会うのを楽しみにしているという内容だった。しかも招待状も後から送られて来ると書いてある。カールはため息をつきながらも、ほっとした気持ちだ。


カールは、辺境伯と高貴な貴婦人への返信の為に、その後の時間は使った。書き終われば、これはコンシェルジュに渡して、送ってもらうだけだ。


どさりとベットに飛び込み、カールはため息をついた。

「なんだか夢みたいだ。」

自分が王都に居る。それだけでも辺境の地に住んでいたカールにとっては凄い事だ。これから数ヶ月間もここで暮らすなんて夢みたいだ。

「ふふふふ。凄い!」

ゴロゴロ転がりながらカールは浮かれていた。もちろん王様との謁見は胃が痛くなる内容のため、それはそっと思考の隅に追いやっている。こんな思いは今年だけだからうんと楽しもうっとカールは思っていた。


それが、今後も続く何て夢にも思わずに。


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