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ロイヤルズと代理人の青年?!  作者: siro


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27/31

少年はオブリガートを奏でる

床に崩れ落ちていくカールを見つめながら短剣を引き抜いた。だが、その短剣には何も付着していなかった。

「?!」

ハッとした瞬間に、ジークハルトは腹部に衝撃を感じ息が止まった時には、頭を強く打ち付けすでに床に押し倒されていた。

「っ?!!」

続けざまに、腹にどんと衝撃を受け、天井と一緒に見えたのは。

『クソ痛ぇ!!』

 そう口悪く罵りながら見下ろしているカールだった。カールはジークハルトに馬乗りになり、力の限り短剣を握る手首を叩きつけて取りこぼさせると、あっという間に奪い取った。


「あああ!!?俺の手が!!よくもやってくれたな!!くそ!腹を突き刺したのに!!」

痛みと手の痺れにジークハルトは叫んだ。見れば手首が真っ青になっている。これではチェンバロが弾けない。


カールは痛みで朦朧する中、やけに血流の音が耳の中でこだましているのを感じた。叫んでいる声が聞こえる、ただ目を隠された。


カール・・・は、意識を覚醒させるように強く短剣を握り、ジークハルトに向かって叫だ。

『うるせぇ!!は、曲がりなりにもアムストラ領出身なんだよ!音楽家みたいな繊細な手じゃないんで、悪いな!代理人なんて危ない仕事している以上いろいろ仕込んでるんだよ!!」

 肩に剣先を向けて脅すように言うカールは今まで見てきた姿と違い威圧感が強かった。ジークハルトは舌打ちしながら、綺麗な顔をしてこんなにガラが悪かったのかっと毒づいた。下から抜け出そうともがくも抜け出せない。

「さぁ、ジークハルト、誰に僕を渡そうとしてたのか吐いてもらおうか!」

首筋に刃物を感じ、動きを止めた時に、ジークハルトは違和感に気づいた。じっとカールの体を見始るもその違和感がわからない。

「はっ!誰が喋るか!」

毒づくジークハルトに、カールは苛立たしげに言った。

『君と違っては人を刺すことは得意なんだよ』

その言葉に、ジークハルトは先ほどの廊下を思い出した。カールの横で倒れていた侍女、彼女も肩を怪我していた。中性的な優しそうな顔とは裏腹に彼は人を刺せるのだとジークハルトは気づいた。


「・・・そうだろうね」

彼はアムストラム辺境泊に使える人間だ。武術を嗜んでるのは当たり前だ。


「さぁ言え」


だが、腹に乗る感じに違和感の正体に気づいたジークハルトは薄く笑って言った。

「でも、君。女だろ?」

『・・・あぁ?』

「ついてないだろ?」

『・・・はカールだ。男だよ』

 低く怒りがこもった声で言ったカールは、グッと力を入れて、ジークハルトの肩に食い込ませた。カールの目は力強く光っていた。


「ぐっ・・・」


『もう一度聞く、誰に頼まれた』


「・・・シャルロッテ」

そうジークハルトは囁くと同時に、カールの胸ぐらを掴んで引き倒した。

「ちっ」

 短剣は抜けて、血が溢れる中、ジークハルトとカールはもみ合いを続けた。胸ぐらを強く惹かれてボタンが弾け飛ぶ。ジークハルトは、カールを馬乗りで押さえつけて、ジャケットをちぎり、シャツを破いて見えたのは、鎖骨までおおう黒いインナーだ。

人の筋肉に沿うように縫われ補強された硬いインナーに、ジークハルトは驚いた。


「なんだ、これは」

両腕を押さえつけ、ジークハルトはカールの首筋を嗅いだ。


「やっぱり、男臭くない。女の子の匂いだ」

『どけ!!変態!!』


「嫌だね、下はどうなってるの?」


「それは、秘密だな」

ジークハルトはハッとして後ろを振り返った時には、吹き飛ばされていた。

「大丈夫か、カール」

『ルッツ』

「盛大にやられたな。インナーが凹んでる。あざになってるぞ、きっと」

そう言って、腹を指さした。見れば、確かに先ほど刺された場所が凹んでいる。

『そうだね・・・』

「立てるか?」

『たぶん』

それだけ言うと、ルッツは肩に巻いていたロープで気絶したジークハルトを巻いて、担いだ。

カールは大きく深呼吸してから、震える手を握りしめて立ち上がった。多少足元がふらついたが、大丈夫だ。


「行けるか?」

『いくよ』


「お前・・・チャールズ。・・・負担が大きすぎる。わかってるのか、今の状態が」

あえて、本来の発音でルッツはカールを呼んだ。

『わかってるよ』

「・・・シャルロッテはまだ、お前が必要だ」

その意味にカール自身、いやチャールズ自身わかっていた。だが、チャールズ自身、シャルロッテの腹に攻撃を受けたさい、腹が立って仕方がなかったのだ、一発殴らなければ気が済まないと。それに、シャルロッテはその衝撃でカールからシャルロッテに戻ってしまった、恐怖で怯えてしまっている。

『・・・わかってる。でも今は俺の出番だ。そうだろ?』

少年らしい低い声がカールの口から発せられた。ひらりと見せた手は震えていた。


「・・・そうだな」

ルッツはため息をつきながら、肩を優しく叩いてから一緒に歩きだした。カールは震える体を抱きしめた。大丈夫、大丈夫だよシャルロッテっと心の中で語りかけながら。


王様達がいた部屋は、荒れていたが、全員無事だった。ロイヤルズのメンバーが率先して防衛をしたらしく。大きな被害は出ていなかった、むしろその場にいたご婦人方が頬を染めて褒め称えていたほどだ。犯人は取り押さえられて猿轡を咬まされている。他にも数人倒れている人がいた。


「カール!!大丈夫か?!」

カールの姿を見たハイリンヒ達は驚いて駆け寄って来た。

「なんとかね」

「ボロボロじゃないか」

ハイリンヒが心配げに手を掴んだ。

「君たちも無事でよかったよ」

「君の、制止する声が聞こえてね。そのおかげで気づいたんだ。助かったよ」

レーオンハルトが乱れた髪の毛を整えながら言った。

「まーそのあと扉が施錠されて閉まったのは痛かったがな。」

ジェームズも頬に軽く怪我をした程度だった。

「しかも魔法も込みでね、僕が解除したけど」

フィリップがウィンクしながら言った。

「そうか」

「顔にも怪我なんてしてるよ!せっかくの綺麗な顔が!」

ペーターが半泣きでいって来た。

「騎士だからね。このくらい平気だよ」

「それにしても・・・ジークハルトは」

ルッツに縛られたジークハルトの姿に皆苦しそうな顔をした。ハイリンヒは寂しげに呟いた。

「ジークハルトにとって・・・僕たちは友達ではなかったのかな・・・最後まで信じていたかったのに」

「「ハイリンヒ」」

ハイリンヒはみんなから離れて、縛られているジークハルトの胸元に飾られたブローチを外した。カールと揉み合いをしたため、ブローチは汚れて歪んでいた。


「彼をもう、友と呼ぶことは出来ない」

そう硬い声で言うと、ハイリンヒは近衛達に囲まれて出ていった。


他のメンバーは別の馬車で王宮へと戻った。道中の馬車の中、カールは口を開いた。

「ジークハルトは、代理人である僕を狙ったんだ。王様たちを狙ったのとは別件かもしれない」

ハイリンヒの様子を思うと、カールは言わずに置けなかった、だがジェームズは首を振った。

「それでも、同じだろう。手を組んだ可能性がある。あの騒動の中、君を襲った時点で、もうだめだよ」

「それに、俺たちは気づいてた。」

そう言ったのはレーオンハルトだった。

「え?」

「なんとか思いとどまらせようとしたんだ。何が不満なのかも知りたかった。でも、あいつは笑顔でなんでもないって言ったんだ。」

「ダメだったな。」

「あぁ、ダメだったな・・・」

レーオンハルトとジェームズが呟いた。フィリップは難しい顔をして、窓の外を見ている。ペーターは不安そうに二人を見つめていた。


王宮へと戻ると、先についていたフェルディナントにカールは呼び止めらられた。

「カール、着替える前に、怪我の具合を見せてくれ。」

「あぁ、わかった」

「俺は、救急箱をもらいに行ってくる。ルッツ付いててくれ」

「おう」

「カール、怪我そんなに酷かったの?」

ペーターが聞けば、カールは手を振って答えた。

「大丈夫だよ。領内ではよくあることさ」

「そうなのか?」

「あぁ」




 部屋に戻り、インナーを脱ぎ去ると、やはり腹に青黒いあざができていた。いくら特殊なインナーで防いだとしても、衝撃はそのままくるのだ。


扉の叩く音がした、フェルディナントが戻ってきたのだ。

カールはサラシで胸を隠してシャツを胸元まで上げて怪我の部分だけ見えるようにしてから呼んだ。

「どうぞ、入って」

「ひどくやられたな」

そう言いながら、軟膏をぬり、ガーゼに薬草を挟んで腹に巻きつけて行った。

「しばらくはインナーは着るな。蒸れるのはよくない」

「「そしたら、隠せないよ」」

「熱が出たことにする。暫くは大人しく横になってろ、サラシはそのまま巻いておけ、お見舞いに王子達が来る可能性があるからな。」

「そっかー。」

「・・・シャルロッテ、もう大丈夫か?」

「大丈夫、ジークハルトにあそこまで嫌われてるとは思わなかっただけ」

寂しげにカールは呟いた。

「そっか」


「・・・チャールズ」


『何?』

「あまり、魂を消費しすぎるな。シャルロッテの意識を奪うな」

『バレてたか、さすがフェルディナント』

「ルッツが気付くんだ、俺だって気付く。記憶は共有してるのか?」

『まさか、腹を刺された時に切り替えた、俺のシャルロッテに怪我をさせたんだよ?一発殴らないとね。それに、あいつ襲うとしたし、そこは絶対に見せない』

「それは、賢明だな。魔力回復の薬草をやるが、魂の消費までは治らない。・・・シャルロッテが自覚するまで、そばにいてやれ」

『もちろん、俺はシャルロッテの騎士だからね』

目をつぶれば、震えているシャルロッテがいる。怖かったと自分を抱きしめながら。

『・・・シャルロッテは強がっているだけさ、一緒に手を握っててよ』

そう言って手を差し出せば、その手はまだ震えていた。

「わかった。・・・シャルロッテ、俺たちが守れただろ?安心してくれ」

そう声をかけると、ふらっとカールの体は傾き雰囲気が変わった。

「フェルディナント」

「俺もいるよ、お嬢。お前の騎士だってお嬢を守った。」

ルッツがそう言いながら、シャルロッテにガウンをかぶせた。

「俺たちは、騎士だ。シャルロッテのね」

「ルッツ」

「さぁ、おやすみ。今日はカールになりすぎだ。大きく立ち回ったんだ。しっかり休むんだよ」

「・・・」

「俺たちが、カールの代わりにシャルロッテの手を握っててやる。大丈夫」

「大丈夫だよ」

 シャルロッテはその言葉を聞いて、安心してベットへと移動して潜り込んだ。手を伸ばせば、ルッツが椅子を持って来てシャルロッテの手を握った。

「俺たちが交代で握ってる。安心して眠れ」

「うん。」


 ふわりとフェルディナントが優しく頭を撫でて、魔法をかければシャルロッテはそのまま深い眠りの中に誘われた。


「報告…」

「全部するさ。」

久しぶり・・・・にチャールズに会ったな。相変わらず言葉遣いが汚い」

「だな。・・・シャルロッテの前でだけ、騎士だからな。」

「俺はさ、ずっと一緒にいてやってほしいよ。いけないことだってわかってるけどさ」

ルッツがポツリと呟いた。それに対してフェルディナントは何も返さなかった。

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