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ロイヤルズと代理人の青年?!  作者: siro


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2/31

代理人に決定。

 アムストラ領は、ヒルザイトオフリヒト王国の辺境の地、シュバイツ王国との国境にある領地だ。

国境沿いに沿って大きな川があり、それに沿って延々と続くのは高い石垣。石垣の内側は草原と森があった、ところどころに放牧されている羊や牛がみえる。石垣はそのまま大きな楕円形の石垣で囲まれた町と、 石垣の上に作られた跳ね橋とで繋がっており、上で行き来出来る事が伺える。

石垣で囲まれた町は途中途中にも壁が作られ、町の中央には要塞とした装飾も何も無い石造りの城が立っている。

それだけで、この地が常に戦いに身を置いている事が伺える作りだ。


 町中を歩く人達も屈強と言える程、体つきも良くあちこちで鍛冶屋の鉄を叩く音も聞こえる。女性達はたおやかさを見せるも、重たい大きな鍋を一人で何個も持っている姿は、見た目と反して力強さを表していた。


 その城の中、重厚な木目調の家具が並び、壁の片面は書物で溢れ、もう片方には領地の地図が貼られているこの部屋は、辺境伯の執務室だ。

この領地を治めるアムストラ辺境伯は、ガッツリとした体つきだが、顔はまだ若い青年顏だ、今はシャツを半分だけ羽織って左腕に添え木と共に包帯で巻かれていた。

その向かいに立つのは、ブカブカな側近の衣装に身を包んだ青年。中肉中背のポッチャリ体型だが、顔には愛嬌があり痩せれば美青年になること間違いない、その二人は机を挟んで向かい合っていた。

「それだけで倍のお給金が貰えるんですかぁ?」

渡された紙を見ながら青年は自分の雇い主を困ったように見た。

「あぁ、社交シーズン中、代理で居るだけで良い。まぁ、御使いや雑務などは頼むがそれ以外は問題を起こさなければ自由だ。魔法使用を許可する。」

あっさり言われ、青年はしばし目線を彷徨わせてから言った。

「・・・バレないですかね?」

「・・・今でもばれてないだろう。周りの者もお前を推薦してきたくらいにな。ついでに、シャルロッテも社交デビューさせとけとまで言ってきている。何より、他に対応できるものが領内にいると思うか?チャールズ」

そう言われて、チャールズは天井に目を向けながら、事務作業やマナーなど出来ない荒事専門の者たちばかりが頭をよぎった。

両方可能な者たちもいるが、城内で重要なポジションに居る為、一時でも外すことは出来ない。

「・・・そうですね」

お互い乾いた笑を出しながら、同時にため息をついた。

「てか、シャルロッテの社交デビューにはまだ早いですよ。この国で少女は16歳からですよ。」

「そうなのか?あれ、お前16、7じゃなかったか?」

「まだ15歳です!!忘れないで下さいよ。ったく、その推薦した奴らも僕とシャルロッテが15歳って忘れてますね。いっつも扱いが荒い!」

「はははは、そうだろうな。ということは、シャルロッテは来年に持ち越しだ。」

気楽にいう姿にチャールズは、ため息をついた。

「はぁ、そもそもアムストラ様が怪我なんてされるからいけないんですよ。いつもはどんな荒事でもピンピンして帰ってくるのに。」


「あ、あぁ。今回は少しヘマをしてな。ハハハハハハ」


笑い方がおかしい事にチャールズは気づいたが、どっちにしろ本当に怪我はしているので、誰かしら代理として行かなければならないのは事実だった。

この辺境伯の領内はちょうど国境付近、常に小競り合いが続く場所でもあり、国の防衛戦でもあるのだ。その為、唯一代理人が身内でなくても良いというくらい、色々免除されている。


しかも今回は辺境伯自信が、先日起きたの国境付近の小競り合いで怪我をしてしまったのだ。何より不安定な情勢の中、直接軍を指揮する辺境伯が外れるのもマズかった。

「ついでに、王宮内の動きも見聞きしといてくれ」

ウキウキとしながら言うのは、面倒な王都に行かなくて済むからだ。その様子に、チャールズはそういえば毎年この時期に近づくと嫌だ嫌だと連呼していたなーっと思い出していた。

「はいはい。」

完全に行く気がない辺境伯にチャールズは諦めたように返事をした。だが、心の中では年頃らしく、王都には興味があった。

代理という立場のため、マナーは気をつけなくてはいけないだろうが、貴族同士の付き合いなど最低限でいいだろう。辺境の地と違って、王都は物語のように華やかな世界だといいなっと別の意味でワクワクし始め、声もついつい弾んでしまう。

「しょうがないですね!」

貴族が読む王都の観光名称の雑誌やファッション雑誌をチャールズは、よく辺境伯の部屋から借りて読んでいたのだ。頭の中ではすでに、憧れの王都観光でいっぱいだ。ふとチャールズは、思いついた事を言った。

「あ、住む場所はヴォーヌング(アパートメント)がいいです。」

「俺の屋敷も一応あるぞ?小さいが。」

不思議そうに言う辺境伯にチャールズは小首をかしげながら聞いた。

「そこを利用するのとヴォーヌング(アパートメント)借りるのと、どちらが安いですか?使用人は口が硬いですか?」

そう言われて、辺境伯は連れて行く使用人の人数や日用品などをざっと計算し、管理を任せてる夫婦を思い出し即座に言った。

ヴォーヌング(アパートメント)だな」

社交シーズンは各領地から貴族が集まるため、王都に屋敷を構えていない者や、様々な理由で売ってしまった人のために、貴族専用のヴォーヌング(アパートメント)がある。

貴族用のヴォーヌング(アパートメント)あれば、入り口に警備兵やコンシェルジュや掃除婦、臨時用の侍女も居る。殆ど身一つで住みにいけるのだ。食事はヴォーヌング(アパートメント)にあるレストランで済ませばいい。

「ではそこで!」

王都の屋敷で、主でもないのに召使いを引き連れて暮らすなんていう堅苦しい暮らしをチャールが出来るとは思わなかった。ならば、雑誌で読んだ貴族用のヴォーヌング(アパートメント)の方が気楽だ。何よりチャールズ自身の問題もあった。

「確かにその方が安全か。」

アムストラは、かなり安上がりになると思った。王都の屋敷で暮らすとなると、料理人から護衛やら色々人数が居るようになる。その分路銀もかかる。だがヴォーヌング(アパートメント)となれば、チャールズ一人で事足りるのだ。領内から出る王都まで行く駅馬車に乗れば、元々領内の兵士付きのため安全だ。

「あ!ただし、入り口が二つある部屋にしてください。貴方の代理という姿と自由に歩き回れる姿の為に!そういうお部屋あるんですよね?」

アムストラは、チャールズの楽しそうな顔に苦笑した。よく王都の雑誌を読んでいるなっと思いながらも、ふた部屋続きの部屋を借りても安いなと即座に計算した。

「なるほど。よかろう、2部屋続きのものを用意する。名義はそれぞれ別にしといておこう。王都に着いたら、この国の名で、ちゃんとカールっと名乗るんだぞ。」

「はい!分かってますよ!ありがとうございます!!」

チャールズは嬉しそうに頷き、部屋に無造作に置かれたままの王都の情報雑誌を手に取った。

「これ自分の部屋に」

「良いぞ。持ってけ」

言い切る前に許可をもらい、チャールズは嬉しそうに胸に抱えた。

「やったー。失礼します」



領内から出る駅馬車に揺られる事、約7日間。道中何事も無く王都に着いた。チャールズは凝り固まったお尻を叩きながら立ち上がると馬車から降りた。


「わぁ〜!!!」


見渡せば、そこは大きな王都の広場。人々が行き来し馬車や騎手が歩き回っている。服装も領内と違いお洒落なドレスの貴婦人や紳士ばかり、町人の格好でさえ領内の人よりも綺麗でお洒落だった。全てが洗練されている。何よりも建物が領内と違う。領内の建物は石造りで剥き出しの木の柱だが、王都の建物は化粧石で、綺麗な外壁をしているだけでなく、豪華な装飾まで施されている。鉄格子一つとっても草木の柄が入っているだけでなく、軒先には華やかな花々が飾られている。


惚けて周りを見渡すチャールズに、警護で着いてきた領内の騎士の一人が頭を小突いた。

「おいおい、しっかりしろチャールズ。おっとココだと、カールだったな。」

もう一人の騎士が飽きれた様に言った。

「名前、気をつけろよ。辻馬車呼んで来るから待ってろ」

「分かってるよ。カールってちゃんと名乗るよ。」

この国は常に何処かしらの国と小競り合いが続いている、その為この国では外国の発音になるチャールズっという人名だと悪目立ちし、下手したら嫌がらせを受けてしまうのだ。

駅馬車から騎士と二人で荷物を下ろしながら、チャールズは心の中で何度も自分の名を唱えた。

 チャールズ、もといカールはよしっと頷いた。大きなトランク4つに手荷物の鞄が一つ。並べて、カールはその上に乗って、辻馬車を呼んでくれている騎士を待った。

手伝ってくれた騎士は守る様に横に立つ。

「よいしょっと。おいおい、そんな御上りさん丸出しだと、あっという間に掏られるぞ。俺たちは3日間はこの王都にいるから何かあったら駅馬車に来い、2階の宿にいる。」

「分かった」

そう返事をしながらも、カールの視線は行き来する人を目で追いまくっていた。

「あと、王都観光するなら、変にぶつかって来る奴と、ニコニコ声かけてくる奴は気をつけろよな。気がついたら全部掏られて、何も持ってないってことになりかねない。良い服で出る時は絶対に辻馬車を呼べ。」

「えーでも、お金が」

「付け払いができる。アムストラ辺境伯でつけとけよ」

心配性の騎士の言葉にカールは子供扱いされてると思った。

「大丈夫だって。僕には魔法があるんだからさ。ちゃんと護符をつけて、僕から離れない様にしてあるよ。」

胸を張って言えば、笑顔でそうかそうかっと頷き背中を叩かれた。

「ははは、過信は禁物だ。先輩の言葉はよく聞けよ。俺も初めて王都に来た時には気がついたらなーんも持ってなかったからな。全部掏られたぞ。掏る奴らもプロだからな、気をつけな」

その言葉にカールは驚いた。領内の騎士は、国内で一番強いと言われる程腕の立つ騎士ばかりなのだ、その騎士の財布を盗むなんて、王都の盗人は凄いと思い直した。

「分かった。辻馬車使うよ」

「うんうん。後はなんだ。ん〜そうだ!困ったら全部ヴォーヌング(アパートメント)のコンシェルジュに言え。あいつら、何でもできるからな。辺境伯代理頑張れよ〜。」

色々アドバイスを貰っていると、辻馬車と一緒に騎士が戻ってきた。

「おい、辻馬車捕まえたぜ」

「お疲れ!」

「ありがとうございます!じゃ、行ってきます!」

荷物を載せて、元気よくカールは乗り込んだ。

「「おう!元気でな!!」」

ココからは、一人だ。ジャケットの内側の胸ポケットにはアムストラ辺境伯の委任状と、代理人の証明書など必要な書類がしっかり入れてある。ドキドキさせながら程なくして、貴族専用のヴォーヌング(アパートメント)に到着した。

馬車ごとは入れるエントランスに感動しながらも、馬車が停車するとすぐにポータが駆け寄ってきた。

「こちらに宿泊ですか?」

「はい、アムストラ辺境伯の代理人のカールです。」

「カール様ですね。お待ちしておりました。」

ポータは一瞬思い出す様に考えたあと直に、笑顔で答えた。

「お荷物は私がお運び致します。」

そう言ってポータが馬車から荷物を下ろしている間に、カールは辻馬車の馭者に代金を支払った。ポータの案内に従ってコンシェルジュの受付につき、一通り説明を受けると、宿泊の用紙にサインをした。


アムストラ辺境伯、代理人 カール


ここから社交シーズンの間、王都で暮らす家になるのだ。

憧れの王都、花の都。



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