No.3 罠
「はい…分かりました…それでは」
電話を終え受話器を下ろすメルティ。
「さてと」
「あー、疲れた!」
「お前は無駄な動きが多すぎだ」
事務所のドアを開け二人が帰ってきた。
「おかえりなさい!」
「甘いコーヒー頼むぞ」
「俺はブラックで」
「はい!」
コーヒーを二人に差し出すメルティ。
「メルティ、留守中に依頼はあったかな?」
「あ、さっき電話で依頼がありました」
「ちゃんと引き受けただろうな?
こっちには選んでる余裕なんてねぇからよ」
「はい!
明日の朝に荷を下ろす船の邪魔をしてほしいそうです」
「邪魔?
強奪でもなくか?」
「はい。
荷が届く時間を遅らせれば、自社の荷を代わりに売り出せるらしいです」
「なるほど、よくある企業間の競争か。
騒ぎを大きくする気もない企業が多いからな」
「依頼主は誰なんだ?」
「三河組って所です」
メルティの言葉にカップを落とすロキ。
「大丈夫ですか!?」
「今、三河組って言ったか?」
「言いましたけど?」
「面倒な事になったな」
「面倒どころじゃねぇ!
三河組はマリアの組織と敵対してるヤクザだぞ!」
「何かまずいんですか?」
「まあ、うちはマリアと専属契約してる訳じゃないから契約上は問題ないけど、マリアは三河組には容赦ないからな」
「よりにもよって三河組かよ…」
「すみません!」
「メルティは気にしなくていい。
依頼は全て受けてくれと言っておいたから」
「けど三河組の連中がどうして俺達に依頼すんだよ!」
「あそこはなに考えてるか分からないからな。
とはいえ、一度引き受けたなら断れないだろ」
「荷を下ろす船がマリアの所じゃありませんように」
そして翌朝、メルティを事務所に残して港には二人の姿があった。
「あれが依頼の船か」
「記録じゃマリアの関連企業でもないようだな」
「助かったぁ。
三河組もそんな無茶はしねぇよな」
「…だといいが」
その時、一台の車を先頭にトラックが次々と港に入ってくる。
「あれが荷を運ぶ奴等だな」
「ロキ、行くぞ!」
二人が車の前に飛び出し銃を構えた。
「悪いがしばらくじっとしといてもらえるか?」
「抵抗するなら怪我するぞ!」
すると、先頭の車のドアが開く。
「怪我? それは楽しみだ」
「なっ!?」
車から現れたゼロスに驚くロキ。
「やはりこうなるか」
「しかし、君達が三河組に雇われるとはね。
僕は護衛を依頼されているんだよ」
「そういう事か。
三河組の奴に嵌められたな」
「じゃあ、俺達とマリア側を潰し合いさせる目的で!?」
「潰し合い?
潰されるのは君達だよ」
ゼロスは笑みを浮かべながら二人に近付いていく。