No.2 訳ありな過去と恐怖の女
「コ、コーヒーどうぞ」
メルティを睨むロキ。
「ご、ごめんなさい!」
「いい加減受け入れろ」
「出来る訳ねぇだろ!
こいつのせいで借金が増えて、子守りまでしなきゃいけねぇんだぞ!」
「ごめんなさい!」
「納得しろとは言わないが、今まで通り仕事をこなすしかない。
メルティ、君には雑用を任せるから」
「は、はい!
何をしたらいいですか?」
「まずはこの事務所の掃除かな。
モップはそこのロッカーにあるから」
「分かりました!」
ロッカーからモップを取り出し、水が入ったバケツを運び掃除を始めるメルティ。
「にしても何でこいつの子守りしなきゃなんねぇんだ?
バ…マリアならそこらに売り飛ばすはずだろ?」
「確かにな。
メルティ、君は何処の星から来た?」
「フローラル星です」
「あの何にもないつまんねぇ星か」
「のんびりするにはいい星だぞ。
しかし、フローラル星人にしては耳が普通だな。
特徴としては耳が細長かったはずだが?」
「あ、私は孤児なんです。
両親が家の前で籠に寝ていた私を見つけて育ててくれました。
だから本当の両親が何星人かはわかりません」
「なるほどな。
でも、DNAで検査出来るだろ?」
「一度したんですがわからなくって…」
「そんな事あんのか?」
「まあ、検査するサンプルがない場合だな。
希少種の星人か遥か昔に絶滅しているか。
外見的にも地球人と変わらないのも気になるな」
「やっぱり不気味ですよね…。
両親は気にしませんでしたが、周りの人達は正体が分からないのは不気味がっていました」
「確かにどんな奴かわかんねぇとな」
「そうですよね…もしかしたら人を食べるかも知れないし毒を撒き散らすかも知れない。
そんな周囲の目に耐えられず、両親が亡くなったのを切っ掛けに地球に来ました」
「ま、ここでは気にする必要ねぇがな」
「え?」
「地球には色んな星の種族が来ている。
その分、どこの星から来た種族かなんて大した問題じゃないんだよ」
「それに俺はちゃんと会話出来る奴なら関係ねぇよ。
頭がいっちまってる奴の方が信用できねぇし。
だからここなら気にせずお前らしくしてろ」
「は、はい!」
満面の笑みを浮かべながらメルティは掃除を続ける。
「ロキくん優しいね」
「う、うるせぇ!」
「そう言えば、私を捕まえてた人をどうやって撃ったんですか?
お二人とも地球人ですよね?」
「あ? まあ、その内な」
その時、事務所のドアが吹き飛び綺麗な女性と気の小さそうな男性が入ってきた。
「(襲撃!? 掃除したのに…)」
「げっ!?」
窓から逃げようとするロキの首に鞭を巻き付け、引き寄せ壁に押さえ付ける女性。
「エルマ警部、乱暴はダメですってぇ~」
「黙りなさいヒョロ男!」
「ヒョルドですよぉ~」
「(警察の人なんだ…恐いよぉ)」
「なんの用だよ!」
「あんたまた街で暴れたみたいね。
目撃情報であんたって分かってるから」
「暴れてなんか…あ」
「やっぱり心当たりがあるのね」
「お、俺だけじゃなくてフェイスもいただろ!」
「俺は屋根を移動してただけだ。
お前は街中の物を吹き飛ばしてたがな」
「てめっ!? ずりぃぞ!」
「黙りなさい!」
ロキの股間を掴み力を入れるエルマ。
「いででで! 潰れる潰れる!?」
「今回は見逃してあげるけど、次はないから。
行くわよ!」
「すみません、失礼しました」
頭を下げ出ていくエルマを追いかけるヒョルド。
「だ、大丈夫ですか?」
「くそ女め!」
「今の人って…」
「ここら辺じゃ泣く子も黙る女刑事。
地球人でありながらどんな星人相手でも互角以上に渡り合う怪物だよ」
「あの女を逮捕しろよ!」
「あれは弟への愛情表現だぞ」
「弟って…ロキさんのお姉さん!?」
「そうだよ。
だから彼女のする事は気にしなくていいから。
あ、掃除よろしくね」
「は、はい」
「いつか殺す! やばい…意識が飛ぶ」
「しっかりしてくださいロキさん!?」
気を失うロキに駆け寄るメルティと外を眺めながらコーヒーを飲むフェイス。