古の石造り、少女像の空想
例えば、滅びた遺跡の階段の上。
緑の葉が落ちた灰色の石の上。
崩れた天井から入り込んだ、無垢な鳥が跳ねる世界で。
古び、触れれば崩れるように脆い石像があった。
しっとりと真っ白な石肌は蔦に守られ、
はめ込まれたエメラルドが太陽に照らされ、
恐れを知らない鳥が楽しげに歌うのを
微笑を浮かべ聴いていた。
それはかつて人を守るためにそこにあったのだろう。
しかし今はただ佇む岩々の一つとなる。
それはかつて人に崇められた存在だったのだろう。
しかし、今はただ鳥と慈しみあう。
過ぎ去った年月は、指先にくすみ陽光に消え、
全て美しく生まれ変わり、草木と化した石像に宿る。
宝石の瞳は澄み渡る湖の如く、ただ流れる雲を追う。
風が流れ月が昇るたびに、少しずつずり落ちる過去。
次第に色を変えていく、騒めく人の賑やかな時間。
崩れていく石碑。
次第に緑が増えてゆくその神殿で、
存在も、その意義すらも知られない古の石像は、
割れた陶器を月が持ち去るたびに、静かに過去を慰めよう。
色の抜けた器。
日が照り雨が降るたびに、少しずつすり減る寿命。
次第に色が抜けていく、鳥の声のように清らかな時間。
過去に期待を寄せながら、再び人がやってきて、
壊れかけた自分を再び大切に崇めるその日を、
森のように目を閉じて、寂しげに待っていよう。